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- パウエル議長の議会証言、利下げ方針維持と見る
今週の注目イベントの一つであった米議会証言で、パウエル議長は米国景気回復に対する慎重な見方と、インフレ率上昇懸念が低いことが示唆しました。6月雇用統計が力強かったことから、米金融当局が利下げをためらうとの観測は否定された格好です。なお、議会証言の質疑応答では、興味深いトピックも取り上げられています。
FRBパウエル議長議会証言:堅調な雇用統計を受けても利下げ方針の維持を示唆
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は2019年7月10日、半年に一度の議会証言を下院金融委員会(上院は11日)で行いました。米中貿易戦争に伴う不確実性は晴れず、堅調であった6月の雇用統計を受けても米金融当局の見通しは変わらないと述べています。
パウエル議長の証言を受け、市場では今月の米連邦公開市場委員会(FOMC、7月30~31日)で政策金利が引き下げられるとの観測が強まりました。
どこに注目すべきか:議会証言、FOMC、GDPナウ、雇用統計、格差
今週の注目イベントの一つであった米議会証言で、パウエル議長は米国景気回復に対する慎重な見方と、インフレ率上昇懸念が低いことが示唆しました。6月雇用統計が力強かったことから、米金融当局が利下げをためらうとの観測は否定された格好です。なお、議会証言の質疑応答では、興味深いトピックも取り上げられています。
議会証言は、最初にパウエル議長が用意した原稿を読み上げ、その後議員との質疑応答という段取りです。
原稿には、(6月FOMC後の)経済動向は貿易問題による不確実性と、世界経済の強さに対する懸念が引き続き米国経済見通しの重しとなっていること、インフレ圧力は引き続き弱い点が指摘されています。利下げ方針の維持を表明することは準備されていたと見られます。
さらに、質疑応答で「6月の雇用統計で方針に変更はあるか?」という問いかけに対し、即座に否定しています。パウエル議長は一つでなく、幅広くデータを見る重要性を指摘しながら、方針変更が無いことを示唆しています。
貿易戦争が逆風となっている可能性を占う上で、米国の4-6月期成長率予想をアトランタ連銀のGDPナウで確認すると、足元前期比年率で1.4%(7月10日時点)と算出されています。7月26日公表の4-6月期GDPは市場予想では2.0%前後が予想されていますが、下方リスクも想定されます。また7月FOMCは直後の30~31日に開催される中、米国の景気動向を慎重に分析する姿勢と見られます。従来の想定どおり、7月に保険的な利下げの可能性があると見ています。
なお、質疑応答では政策金利以外にも興味深いトピックが議論されています。例えば、デジタル通貨「リブラ」について複数の議員から質問があり、パウエル議長はプライバシー保護、資金洗浄(マネーロンダリング)、金融システムの安全性などから懸念を示しました。デジタル技術に理解を示す一方で、懸念解消の必要性を強く訴えています。
また、労働問題に絡んで、米国内で経済的格差が拡大している問題も指摘されました。世界的なポピュリズムの台頭や既存体制に対する不満の経済的背景の一つが格差拡大と見られます。ストライキが収まる気配の無い香港を例にすると、経済格差を示すジニ係数は世界でも高い(格差拡大)ことが、最近ピクテの調査で示されています。米国のジニ係数も水準は高く、格差も拡大傾向です(図表2参照) 。
パウエル議長は、格差について政治的問題であり、FRBは口を挟む立場で無いとしながらも、最低賃金引き上げや教育改革の必要性を指摘、無関心ではない様子です。
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