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8月米雇用統計、すべてが悪いわけではない
梅澤 利文
2019/09/10

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概要

8月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想を下回ったうえ、20年国勢調査に向けた臨時政府職員が雇用を2.5万人分押し上げた側面もあり、雇用者数は実感としては弱い印象です。しかし、失業率や、労働時間、賃金などを見ると今回の雇用統計には堅調な面も見られます。今後の動向を確認する必要はありますが、悲観する内容ではないと思われます。



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米国8月雇用統計:非農業部門雇用者数は軟調となるも、平均賃金は回復

米労働省が2019年9月6日に発表した米国の8月雇用統計で、非農業部門雇用者数は前月比13万人増と、市場予想(16万人増)、前月(15.9万人増)を下回りました(図表1参照)。家計調査に基づく8月の失業率は3.7%でした。

平均時給は前年同月比3.2%増で、市場予想(3.0%)を上回りました。前月は3.3%と、速報値(3.2%)から上方修正されました。

 

 

どこに注目すべきか:米雇用統計、製造業、労働参加率、平均賃金

8月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想を下回ったうえ、20年国勢調査に向けた臨時政府職員が雇用を2.5万人分押し上げた側面もあり、雇用者数は実感としては弱い印象です。しかし、失業率や、労働時間、平均賃金などを見ると今回の雇用統計には堅調な面も見られます。今後の動向を確認する必要はありますが、悲観する内容ではないと思われます。

まず、非農業部門雇用者数については臨時政府職員を除けば10万人程度という数字が実感です。また、内容を見ると昨年から製造業が伸び悩んでいます(図表1参照)。米中貿易戦争の影響が想定されます。なお、製造業で雇用が減少した州を見ると、ウィスコンシン州は約4000人、ペンシルバニア州は約8000人など選挙の激戦州にマイナスが多く見られます。政治的に注目すべき動きと思われます。

ただ、非農業部門雇用者数については低失業率、労働力人口の動向から想定される(自然な)雇用者数の伸びなどから判断して、非農業部門雇用者数が10~15万の伸びというのは無理のない数字とも見ています。

一方、他の雇用統計はまずまずであったと見ています。例えば、失業率は8月も3.7%と低水準で推移しています(図表2参照)。失業率の内容を見ると、就業者数が増え、失業者数が減少する一方で、労働参加率が63.2%に上昇したように、雇用市場に参加する人の増加が見られます。雇用需給の点で改善と見ています。もっとも、経済的理由によるパートタイムなどを失業者に含めた広義の失業率(U6)は今回が7.2%と、7月の7.0%から悪化しているなど、一部の内容に注意は必要です。

平均賃金は前年同月比、前月比共にそれぞれ、市場予想を上回りました。また、7月の前年同月比データは3.3%と上方修正されており、堅調さも見られます。平均の時間当たり賃金を数字で見ると28.11ドルで、前月の28.00ドルから上昇しています。週の労働時間は8月が34.4時間(7月は34.3時間)であることから、週当たりの賃金は8月が966.98ドルで、7月の960.40ドルから増加しています。消費の下支え要因となることも期待されます。

今回の雇用統計は非農業部門雇用者数などから、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)と、年内再度の利下げ見通しを支持する内容と見ています。しかし、他のデータを見ると、過度な利下げ期待に対しては慎重に見ています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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