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アルゼンチン債務再編合意と今後の課題
梅澤 利文
2020/08/05

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概要

アルゼンチン政府と欧米の主要債権者との間の債務再編交渉は今年4月頃に始まり、交渉期限をたびたび延期してきました。8月4日を期限とする交渉でようやく合意に達しました。アルゼンチンの100年国債価格も、依然低水準ながら、合意に伴い上昇しています。アルゼンチンの難題は山積みですが、アルゼンチン経済にとり、前向きな合意であると見られます。



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アルゼンチン:債務再編で合意、難題は残るも、経済再建に向け前進

アルゼンチン政府は2020年8月4日に、主要債権者との間で債務再編交渉に合意したと発表しました。債務再編の規模は650億ドル(約6兆8900億円)です。

合意内容の詳細は明らかではありませんが、報道などによると、債権者が保有する国債を45.2%減免した額面1ドルあたり約54.8セント相当の価値で、新たに発行する債券と交換すると伝えられています。年2回の利払いは、3月4日と9月4日から1月9日と7月9日に変更されました。アルゼンチンのデフォルト状態は解消するものと見られます。

 

 

どこに注目すべきか:債務再編、選択的デフォルト、法廷闘争、IMF

アルゼンチン政府と欧米の主要債権者との間の債務再編交渉は今年4月頃に始まり、交渉期限をたびたび延期してきました。8月4日を期限とする交渉でようやく合意に達しました。アルゼンチンの100年国債価格も、依然低水準ながら、合意に伴い上昇しています(図表1参照)。アルゼンチンの難題は山積みですが、アルゼンチン経済にとり、前向きな合意であると見られます。

最初にアルゼンチンの格付けを確認します。S&Pグローバル・レーティング(S&P)は外貨建て長期債をSD(選択的債務不履行(デフォルト))とし、フィッチ・レーティングス(フィッチ)は長期発行体デフォルト格付けをRD(SDに相当)としています。アルゼンチン政府が債務再編を提案した今年の4月頃に選択的デフォルトとしています。

米国機関投資家などの債権者との交渉はこの頃から本格化、数ヶ月に及びました。当初アルゼンチン政府は債権者にとっては受け入れ難い6割程度の減免を求めていたと報道されています。交渉の末、ようやく双方に妥当(?)な水準で合意できたことはプラスと見られます。

逆に懸念されていたケースは債権者がアルゼンチンを訴えることです。2012年には(今とは別の案件をめぐり)、債権者(投資ファンド)がアルゼンチン政府を米国の裁判所に提訴しました。この件、ニューヨーク地裁は投資家(債権者)の主張を認めたことから、泥沼の法廷闘争が繰り広げられました。このような事態になれば経済再建は覚束(おぼつか)ないことが懸念されていただけに、今回の合意は前向きと見られます。

ただ、アルゼンチン経済を見ると課題が山積みなことも明らかです。消費者物価指数(CPI)を見ると前年比42.8%と、比較対象を探すのが困難なほどの高インフレ率です(図表2参照)。新型コロナウイルスの感染も深刻です。アルゼンチンのGDP(国内総生産)成長率との相関が高い経済活動指数は足元急落しており、この水準から推定して、アルゼンチンの4-6月期GDP成長率は前年比2桁のマイナスが想定されます。

アルゼンチン国民のペソへの信用は低く、恒常的なペソ安圧力も続いています。自律的な回復は困難で国際通貨基金(IMF)等の支援は必要です。ただ、アルゼンチンのIMF嫌いは有名で、前政権(マクリ政権)の失速はIMF的な緊縮政策が原因と思われます。ただ、IMFと相性が悪かった現政権に関係改善を模索する動きもあり、警戒しつつも注目しています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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