Article Title
英国中央銀行、マイナス金利早期導入を否定
梅澤 利文
2021/02/05

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

英国中央銀行が議事録等で英国景気について比較的強気な見方を示したことや、マイナス金利について早期に導入する見込みはないことが確認されたことなどを受け、ポンド、英国債利回りは上昇しました。ただ、今回の英中銀の発表内容で注目されたマイナス金利については、銀行などに準備を促すなど、中長期的な導入の可能性には含みを残すに留まりました。



Article Body Text

英国中央銀行:英中銀は景気の先行きに比較的強気、マイナス金利早期導入に否定的

 イングランド銀行(英国中央銀行)は2021年2月3日まで開いた金融政策委員会の議事要旨などを4日に発表しました。金融政策は市場予想通り、政策金利を過去最低の年0.1%で、国債などを購入する量的緩和策は購入枠の総額を8950億ポンド(約129兆円)で据え置きました。

英中銀の発表を受け、英国債利回りは上昇し、ポンドは上昇する展開となりました(図表1参照)。

なお、注目されていたマイナス金利の導入については、早期の導入は見送られることが確認されました。

どこに注目すべきか:英国中央銀行、ワクチン接種、マイナス金利

英中銀が議事録等で英国景気について比較的強気な見方を示したことや(図表2参照)、マイナス金利について早期に導入する見込みはないことが確認されたことなどを受け、ポンド、英国債利回りは上昇しました。ただ、今回の英中銀の発表内容で注目されたマイナス金利については、銀行などに準備を促すなど、中長期的な導入の可能性には含みを残すに留まりました。

英中銀の政策スタンスを再確認すると、政策金利と量的緩和は据え置かれ、フォワードガイダンスも維持しています。雇用市場が回復し、インフレ目標を持続的に達成する証拠が得られるまで金融緩和政策を維持する姿勢です。

一方で、英中銀の経済予想を見ると、比較的楽観的なトーンとなっています。英国では足元新型コロナウイルスの感染拡大に伴い経済活動が制限されていることから、21年1-3月期の成長率についは昨年11月時点の予想から下方修正しています。しかしながら、英中銀は今後について、英国におけるワクチン接種の拡大が景気回復を下支えすることに期待感を示しています。また、経済活動の制限についても、昨年前半の全面的な活動制限とは異なり、景気への悪影響が低い可能性も指摘しています。

また、長期的には懸念を示すも、英国の欧州連合(EU)離脱の混乱は今のところ想定の範囲内であることから22年1-3月期の経済成長率を14.2%に上方修正しました。失業率も今回は5.7%と前回の予想(6.1%)から改善させています。

次に、マイナス金利については、実現可能性の調査結果が示されました。英国中銀は導入の準備は進めるが、早期のマイナス金利の導入には否定的と見られます。

英中銀は政策金利をマイナスとした場合の金利の階層化について研究を開始すると表明しました。金利の階層化は既にマイナス金利を導入している欧州中央銀行(ECB)等が市中銀行の準備預金の一部にマイナス金利適用を免除するものです。中長期的な導入の意思が示唆されています。

一方で、英中銀は短期的にマイナス金利を導入する意図がないことを強調しました。また、副作用やショックを軽減するのに半年は必要と説明しており、英中銀が年後半の景気回復や、英国のインフレ率が今年末で2%程度を見込んでいることから、当面マイナス金利導入は考えにくいと思われます。マイナス金利はEU離脱の影響など長期的な不確定要因に備える政策手段として準備はしておくという位置づけと思われます。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


米CPI、インフレ再加速懸念は杞憂だったようだが

注目の全人代常務委員会の財政政策の論点整理

11月FOMC、パウエル議長の会見で今後を占う

米大統領選・議会選挙とグローバル市場の反応

米雇用統計、悪天候とストライキの影響がみられた

植田総裁、「時間的に余裕がある」は使いません