- Article Title
- ロシア中銀の利上げは良い利上げか
ロシア中銀は2018年9月以来となる利上げを実施しました。今回、そして18年の利上げでは市場の据置予想に先んじて、ロシア中銀はインフレ率上昇の抑制に向け利上げを行っています。前回利上げをした18年の経済成長率はプラス2%台を維持していましたが、今回はプラスに転じるのはもう少し先と思われ、インフレ率の上昇で利上げを選択したと見られます。
ロシア中銀:インフレ率上昇懸念を背景に市場予想に先んじて利上げ
ロシア中央銀行は2021年3月19日、政策金利の1週間物レポ金利を4.5%と、従来の4.25%から引き上げました(図表1参照)。同中銀の利上げは18年以来です。
市場では利上げ予想は少数派で大半は据え置きを見込んでいました。ロシア中銀は声明文で、実際のインフレとインフレ期待の動きを考慮し、中立的な金融政策に回帰する方針を示し、追加利上げの可能性を示唆しました。
どこに注目すべきか:市場予想、インフレ率、ルーブル安、銀行
ロシア中銀は2018年9月以来となる利上げを実施しました。今回、そして18年の利上げでは市場の据置予想に先んじて、ロシア中銀はインフレ率上昇の抑制に向け利上げを行っています(図表2参照)。前回利上げをした18年の経済成長率はプラス2%台を維持していましたが、今回はプラスに転じるのはもう少し先と思われ、インフレ率の上昇で利上げを選択したと見られます。
最初にお断りをすると、ロシア中銀が市場予想に反して利上げをしたと述べていますが、これはロシア中銀の情報発信が悪いという意味ではありません。むしろ、最近のロシア中銀は情報提供を改善している印象です。また、ロシア中銀は事前に(今思えば)利上げを示唆するようなコメントをしており、利上げ自体に違和感はない印象です。
それでも市場が今回の利上げ予想に踏み込みにくかったのはロシアが依然マイナスの成長であるからと見られます。20年7-9月期は前年同期比マイナス3.4%であるうえ、4月2日に公表予定の10-12月期もマイナス成長予想です。プラス成長に転じるのは21年4-6月期の成長率が公表予定である8月迄待つ必要がありそうです。
資源価格回復を背景にロシアの年間成長率はプラスが予想されていることから、実感としてプラス成長は早めに察知する可能性はありますが、現時点では困難と思われます。
このような中でロシア中銀が利上げに追い込まれたのは消費者物価指数(CPI)の上昇です(図表2参照)。CPIは前年比で21年2月が5.7%と、18年同様にインフレ目標を超えています(図表2参照)。米国との関係悪化など政治的不安もありルーブルの動向は不安定です。これ以上景気回復を確かめる余裕が無かったとも見られます。
先進国ではまだ先のことながら、経済正常化から将来の利上げが意識され始めています。恐らく利上げが早いと思われるのは同じ資源国のノルウェーです。3月の金融政策会合で利上げ想定時期を21年後半に前倒ししました。ノルウェーは昨年後半から前期比ベースでプラス成長に転じています。
一方、ロシアの場合、経済状況は利上げの準備が出来ていないように見られます。例えば、先進国では金利が上がると収益が改善するとして銀行株セクターのパフォーマンスが改善することがあります。しかし格付け会社のレポートなどを見てもロシアの銀行は十分なマージンを見込みにくく、収益は悪化する可能性があるとの見通しが示されています。今回の利上げは、景気回復を伴わない悪い利上げなのではと見ています。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。