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このところ調子が良かった南アランド
梅澤 利文
2021/03/26

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概要

米連邦公開市場委員会(FOMC)開催の時期に他国も金融政策決定会合を開催する傾向があることから、今週は多くの新興国の金融政策を取り上げてきました。今回は、最後に南アを取り上げます。最近では耳にしなくなりましたが通貨安の新興国であるフラジャイル5(ぜい弱な5通貨)の一角であった南アですが最近の通貨ランドの動きは以前とは異なるように思われます。



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南ア中銀:市場予想通り据え置きだが、21年のインフレ率予想を上方修正

南アフリカ準備銀行(中央銀行)は2021年3月25日の金融政策決定会合で市場予想通り政策金利を3.50%で据え置きました。南ア中銀はGDP(国内総生産)成長率の予想については21年を3.8%、22年を2.4%としました。

また、南ア中銀はインフレ率予想を21年は前年比+4.0%から同+4.3%に上方修正した一方、22年は同+4.5%から同+4.4%に小幅ながら下方修正しました。

どこに注目すべきか:フラジャイル5、経常収支、インフレ率、利上げ

米連邦公開市場委員会(FOMC)開催の時期に他国も金融政策決定会合を開催する傾向があることから、今週は多くの新興国の金融政策を取り上げてきました。今回は、最後に南アを取り上げます。最近では耳にしなくなりましたが通貨安の新興国であるフラジャイル5(ぜい弱な5通貨)の一角であった南アですが、最近の通貨ランドの動きは以前とは異なるように思われます(図表1参照)。

最初にフラジャイル5を確認すると、経常赤字や財政状況の弱さから、米国の金融引締めで通貨が下落しやすい新興国で、具体的にはブラジルレアル、インドルピー、インドネシアルピア、トルコリラ、南アフリカランドの5通貨が該当すると見るのが一般的です。

主な新興国について対ドルの騰落率を過去1年について見ると、他のフラジャイル5からは財政懸念が根強いブラジルや、政治の中銀への介入という場外乱闘を繰り返すトルコが弱い通貨である一方、南アランドは堅調なパフォーマンスを示しました(図表1参照)。

経済指標の面で南アランドが選好された背景の1つは経常収支の改善と思われます(図表2参照)。フラジャイル5が使われていた頃、例えば13年から14年頃の南アの経常収支(赤字)対GDP比率は5%を超える時期もあり、命名通りぜい弱でした。しかし足元で同比率はプラス圏で経常黒字に転じる時期もあります。また、直接投資なども流入しており資本フローの改善が見られます。さらには対外債務などのクッションとなる外貨準備高も南アは増加傾向です。

もっとも、資源国の輸出が全般に改善しており他の新興国でも改善傾向は見られることや、内需低迷による輸入減が経常収支を改善させた面もあり、持続性に注意は必要です。

南アの金融政策も今のところランドの下支え要因と考えられます。南アのインフレ率が前年比3%前後で推移する中、政策金利は3.5%を維持しています。しかし、南ア中銀の予想にもあるように南アのインフレ率は上昇が見込まれます、資源国ながら原油に恵まれない南アは今後難しい局面を迎える可能性もあります。南ア中銀は方針として今後の利上げを示唆していますが、適切な対応がとられるか懸念はつきまといます。

また、南アの財政問題の解決は、最近の予算案を見ても解消に程遠く、南アの格付けは非投資適格水準のままです。

それでもランドがこれまで上昇してきたのは先に述べた要因などが市場で評価されたからと見ています。新興国を評価するには、単にレッテルを貼るだけではなく、柔軟で素直にデータを見続けることが必要と考えています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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