- Article Title
- 南アランド、輝き続けるのか
南アフリカの通貨ランドは対ドルで過去1年ほど、概ね上昇傾向でした。資源国、高金利通貨といった要因がランドを支えてきました。ただ、足元新型コロナウイルスの感染再拡大(第3波)の影響などもあり軟調となっています。ランド安要因を整理して、今後の展開を占います。
南アフリカ:新型コロナ感染第3波の拡大を受け厳格なロックダウンを実施
南アフリカのラマポーザ大統領は2021年6月27日、インドで初めて確認された新型コロナウイルスの変異株(デルタ株)による感染第3波の拡大を受け、新たなロックダウン(都市封鎖)措置を発表しました(図表1参照)。
第3波の中心は現在、最大都市ヨハネスブルグがあるハウテン州です。なお、今回発表されたロックダウン措置は感染拡大の初期以来最も厳しいレベルで、少なくとも2週間続く見通しです。例えば、屋内、屋外の集まりは葬儀以外すべて禁じられ、午後9時から午前4時までの外出、酒類の販売、ハウテン州への出入りも禁止となっています。
どこに注目すべきか:南アランド、資源国、感染拡大第3波、利上げ
南アフリカの通貨ランドは対ドルで過去1年ほど、概ね上昇傾向でした(図表2参照)。資源国、高金利通貨といった要因がランドを支えてきました。ただ、足元新型コロナウイルスの感染再拡大(第3波)の影響などもあり軟調となっています。ランド安要因を整理して、今後の展開を占います。
まず、南アランドが過去上昇傾向だった要因から振り返ると、資源国であること、相対的高金利通貨であること、南ア政府の政策の安定性があげられます。また、新型コロナ感染拡大の第1波と第2波は比較的早期に収束しました。
これらの点を踏まえ、足元のランド安要因をあげると、資源価格の上昇の頭打ちが挙げられます。例えば自動車の排気ガスの浄化などに利用される白金の価格上昇と生産量の増加が南アランドの通貨の押し上げ要因でしたが、足元で白金価格は下落に転じています(図表3参照)。他の資源価格も上昇ペースの反動で下落が目立ちます。世界経済の回復傾向を受け、資源価格が本格的な下落に転じる可能性は低いと思われますが、注意は必要です。
次に、新型コロナの感染拡大(第3波)に伴う厳格なロックダウン導入もランドの下押し要因と見られます。南アは過去2回の感染拡大局面は経済活動の制限により比較的早期に収束させています。しかし、今回気になるのは南アのワクチン接種率(少なくとも1回接種)が5%を下回り、極端に低いことです。世界保健機関(WHO)はアフリカ全体では接種率が1%程度と警告しています。同地域で全般的にワクチン接種が遅れていることが懸念されます。もっとも、WHOは南アにワクチン生産に関する技術移転の拠点を開設する方針を発表しており、今後の動向に注目しています。
ランド下落の恐らく最大の要因は6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で今後の金融引締めのトーンが強まったことです。米国金利上昇やドル高は通貨や新興国資産の下落材料となる傾向があります。大切なのは南ア中央銀行の金融政策でしょう。今のところ南アのインフレ率の落ち着きから、据置を維持していますが(図表1参照)、将来的な利上げを南ア中銀は示唆しています。資源国、高金利など、ランドの強みは維持されると思われますが、新型コロナの景気への影響を踏まえながらも、南ア中銀が想定通り対応するかに注目しています。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。