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クロアチアにユーロ導入の予感
梅澤 利文
2021/11/17

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概要

クロアチアが格上げされました。格上げの主な理由はクロアチアが早ければ23年に、欧州連合(EU)共通通貨であるユーロを導入する可能性が高まったからです。ユーロ導入に求められる経済や財政指標への収斂(しゅうれん)は信用力にプラスと説明しています。英国のEU離脱やコロナ禍で忘れられていたEU拡大のきっかけとなるのか、今後の動向が注目されます。



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クロアチア:格上げ、23年にユーロ導入にこぎつけられる可能性が高まったことを評価

格付け会社のフィッチ・レーティングスは2021年11月12日に、クロアチアの長期債格付け(自国通貨建て、外貨建て共に)をBBB-からBBBへ格上げしました。見通しは強含み(ポジティブ)としています。

フィッチがクロアチアを格上げした背景は、クロアチアはコロナ禍にあってもユーロへの加盟条件や、加盟に求められる構造改革に進展があったことから2023年1月にユーロ圏に加盟する可能性が高いと判断したためです。

どこに注目すべきか:ユーロ導入、マーストリヒト基準、EU拡大

クロアチアが格上げされました。格上げの主な理由はクロアチアが早ければ23年に、欧州連合(EU)共通通貨であるユーロを導入する可能性が高まったからです。ユーロ導入に求められる経済や財政指標への収斂(しゅうれん)は信用力にプラスと説明しています。英国のEU離脱やコロナ禍で忘れられていたEU拡大のきっかけとなるのか、今後の動向が注目されます。

最初に、EUや、ユーロを簡単に振り返ります。EU創設の基となるマーストリヒト条約ではEUの目的として国境のない地域の創設や、経済通貨統合、共通での外交、安全保障などが示されています。欧州の国でまとまっていこうということで、英国が離脱したことで現在のEUは27ヵ国となっています。なお、離脱した英国とは反対に、最近になってEUに加入したのはクロアチアです。

EU加盟国の中でも共通通貨としてユーロを法定通貨として導入したのがユーロ加盟もしくは導入国で現在19ヵ国です。ユーロ導入国はEUの理念である欧州共通化のフロントランナーと位置づけられます。他のEU加盟国は経済条件などからユーロ導入を準備している段階です。

ユーロ導入には経済指標から財政まで様々な条件が求められますが、EU加盟国がユーロを導入するにはマーストリヒト基準に定められた4つの条件①物価、②財政、③為替レート、④金利、の安定が求められます。例えば為替レートは基準レートに対し2年間±15%以内にすることが求められています。クロアチアの通貨クーナは対ユーロで上下2%以内で推移しており問題はなさそうです(図表1参照)。④の金利も問題はなさそうですが、①の物価はクロアチアのインフレ率が9月に3.3%を越えたときは不安の声もあったようですが(図表2参照)、幸いにも(?)ユーロ圏のインフレ率も上昇したため相対的に安定が続いています。

②の財政は杓子定規ならば懸念はあります。クロアチアの債務残高対GDP(国内総生産)比率は昨年87.3%と高水準だからです(債務懸念が高い)。しかし、債務はコロナ禍でつみあがったもので、クロアチアはコロナ前は健全な財政運営であったため、問題にならないと見られます。9月に公表されたクロアチアとEUとのユーロ導入検討の声明でも、23年からのユーロ導入に自信が示されています。なお、クロアチアは東欧でも有数の観光地でユーロ圏からの観光客も多いことからユーロ導入はこの点でもメリットがありそうです。

クロアチアとは異なり、同地域の他の国を見ると風向きが異なります。EUは英国がEUを離脱した後、バルカン半島周辺の6ヵ国(セルビア、モンテネグロ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、北マケドニア、コソボ、アルバニア)にEU加盟を促し、EU拡大を目論んでいます。しかしながら、政治体制の改革など加盟のハードルは高いと見られます。EU首脳は先月これら6ヵ国のEU加盟を「確約」しましたが期限は定めないとされており、今後の動向は平坦ではなさそうです。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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