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- 11月の米雇用統計に潜む改善傾向
11月の米雇用統計は強弱入り混じり、一見すると解釈に悩む内容です。非農業部門の就業者数は市場予想を大幅に下回り雇用の回復に疑問が残る数字であった一方で、失業率は大幅に低下し改善が示されたからです。ただ、全体をつぶさに見ると弱い内容ではなく、米連邦準備制度理事会(FRB)の引締め的な金融政策路線への影響は限定的と思われます。
11月の米雇用統計:市場予想を下回る就業者数と失業率の改善の組み合わせ
米労働省が2021年12月3日に発表した11月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月比21.0万人増と、市場予想の55.0万人増、10月の54.6万人増(速報値の53.1万人増から上方修正)を下回りました(図表1参照)。
一方、失業率は4.2%と市場予想の4.5%、前月の4.6%を下回り改善が見られました。また労働参加率は61.8%に小幅上昇しました。なお、平均時給は前月比で0.3%上昇と、市場予想、前月(共に0.4%)を下回りました。
どこに注目すべきか:米雇用統計、失業率、労働参加率、就業者数
11月の米雇用統計は強弱入り混じり、一見すると解釈に悩む内容です。非農業部門の就業者数は市場予想を大幅に下回り雇用の回復に疑問が残る数字であった一方で、失業率は大幅に低下し改善が示されたからです。ただ、全体をつぶさに見ると弱い内容ではなく、米連邦準備制度理事会(FRB)の引締め的な金融政策路線への影響は限定的と思われます。
まず、期待はずれとなった非農業部門の就業者数を部門別に振り返ります。10月に比べ悪化したのは飲食など対面サービスを含む娯楽接客産業です。接客ビジネスに対する警戒感が根強く、求人に対して採用が伸びていない可能性は考えられます。なお、11月雇用統計の計測期間から考えて、オミクロン株の影響が指標に影響を与えたことは無いと見られます。一方、米国のレストラン予約をリアルタイムデータで確認すると、足元で客足が明確に落ちたとは判断しにくいと思われます。雇用と客足の動向は今後を確認する必要がありそうです。
また、小売部門の就業者も11月は前月比マイナスとなりました。こちらも気になるところですが、先月の雇用統計では、小売りと人材派遣部門が採用を伸ばしました。年末商戦を早めたことから採用を前倒しした可能性が先月指摘されていましたが、その反動減なのか見守っています。
一方、製造業や建設業は10月ほど拡大しなかったものの11月もプラスを確保しました。同様にビジネスサポート部門や、配送などに根強い需要が見られる運輸・倉庫部門も前月比約5万人増と伸びを確保する部門も見られます。
反対に失業率は労働参加率の上昇を伴って低下する質の良い低下(雇用市場の改善)が見られました。労働参加率は生産年齢人口に対する労働力人口(働く意思がある人)の割合であることから、11月は相対的に労働力人口の改善が示されました。なお、労働参加率を年代別で見ると、プライムエイジ(25~54歳)は改善した一方で、55歳以上の労働参加率は伸び悩みました。最近米国の報道などで目にする早期退職の広がりを反映した可能性が考えられます。
就業者数が伸び悩んだものの失業率が低下した背景として、米国の雇用統計が、家計調査と事業所調査の2本立てであり調査対象が異なる点に注意が必要です。失業率は家計調査で算出されますが、家計調査の就業者数が事業所調査に比べ大幅に伸びたという相違があったからです。
最後に、雇用統計を離れて、別の労働市場指標を確認します。新規失業保険申請件数は足元で前週比で22万人増と概ねコロナ禍前の水準に回復しています(図表2参照)。また、サービス業などを含む米ISM非製造業景況指数の雇用指数は11月が56.5と、先月の51.6から大幅に改善しています。幅広く雇用関連の指標を見ると概ね雇用市場の改善傾向が維持されていると思われます。11月の就業者数は市場予想を下回りましたが、金融政策を引締め的な方向へシフトしつつあるFRBの姿勢に対する影響は限定的と思われます。
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