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- 英国中銀とECBからタカ派化の風
英国、ユーロ圏の各中央銀行による昨日の金融政策の発表に対し、市場はタカ派姿勢が強まったとして英国、ユーロ圏の国債利回りは上昇(価格は下落)しました。インフレに対する懸念がタカ派姿勢を強めた背景です。しかし、英国とユーロ圏の雇用市場、とりわけ賃金動向には無視できない違いもあり、両中銀の政策に違いを生じさせる可能性がありそうです。
英中央銀行、ECB:違いはあれど、共に金融政策にタカ派的なトーン
英中央銀行(イングランド銀行、BOE)は2022年2月3日に金融政策委員会の結果を発表し、市場予想通り政策金利を0.25%から0.50%へ引き上げました。21年12月の前回から2会合連続の利上げとなります。政策金利について9人の投票権メンバーのうち5人が0.25%の利上げに賛成した一方で、4人のメンバーは0.50%の利上げを主張しました。
欧州中央銀行(ECB)は2月3日に開催した理事会で、金融政策の現状維持を決定し、前回12月の理事会で決めたコロナ危機対応で導入した緊急買い取り制度(PEPP)を今年3月末で打ち切るなど、段階的に金融緩和の縮小を進めることを確認しました。ただ、ECBのラガルド総裁が会見でインフレリスクの高まりを認めたことや、年内利上げの可能性を否定しなかったことから、市場はECBがタカ派(金融引締めを選好)姿勢を強めたと受け止めました。
どこに注目すべきか:BOE、ECB、0.5%利上げ、QT、賃金動向
まずタカ派と見られた主なポイントを振り返ります。
BOEについては、①9人のうち4人の投票メンバーが0.50%の利上げを主張したこと、②債券購入政策について、BOEは21年8月に表明した計画通り、買い入れた債券の再投資を止めて残高を減らす量的引き締め(QT)に着手することを決定すると共に、社債買入プログラムの再投資も終了するとしています。
ECBについては、①会見では、これまで明確に否定してきた年内の利上げの可能性を否定しなかったこと、②昨年12月時点のECBによるインフレ率予想と比べると、短期的にはインフレ見通しに対するリスクは上振れ方向に傾いているという認識を示したこと、などがあげられます。なお、ECBは通常通り、最初に声明文を発表し、その後ラガルド総裁が会見を行いました。声明文にほぼ変更ありませんでしたが、結論の部分で「両方向へ動く」が今回は削除されていましたが、声明文が市場に与えた影響は限定的でした。
BOE、ECBが共にタカ派姿勢を強めた主な背景はインフレ率の想定外の上昇と見られます。英国の21年12月のインフレ率は前年同月比で5.4%上昇、ユーロ圏の1月のインフレ率は5.1%上昇です(図表1参照)。英国とユーロ圏のインフレ動向は似ているようにも見えます。しかしながら英国のタカ派姿勢はユーロ圏より明確であったと見られます。市場ではBOEの次の利上げを5月と会合前は見込んでいましたが、5月の前に開催される3月会合での利上げを織りこんでいます。結果として、BOEはQTも前倒しすると見られます。
一方、ECBはユーロ圏のインフレ率は一番の原因であるエネルギー価格の上昇だけでなく、食料品などにも物価上昇が拡がってきたと警戒心を示すなど確かにタカ派姿勢を強めました。ただ英国ほどの切迫感は見られませんでした。その背景の1つとしてあげられるのが雇用市場の違いです。ラガルド総裁も、ユーロ圏は英国と違い賃金上昇懸念は、現段階では、見られないと認識しているようです(図表2参照)。
もっとも、タカ派化しても不思議でないBOEと違い、ECBのタカ派化は市場としても想定外で、サプライズにつながったと見られます。ただ、ラガルド総裁は年内利上げに関心が集中したことを察したのか、会見の終わりに米国とユーロ圏の経済サイクルに違いがあることを(唐突に)説明しました。(少なくともご本人は)本当はそれほどタカ派では無いのかもしれず、確認が必要そうです。その点、ECBは3月に経済予想を公表予定で、より明確な説明が期待されます。米国の利上げ開始が想定される3月は、ECBにとっても重要な月となりそうです。
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