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- ECBはマイナス金利に手をつけるのか?
ECBのラガルド総裁は議会証言でインフレへの懸念は示しつつも、エネルギー価格上昇など供給要因を背景とするインフレに対する金融政策の効果に疑問を呈するなど持論を繰り返しています。しかし市場ではECBの年内利上げを織り込む動きが見られます。ECBが3月の政策理事会で公表する経済予想におけるインフレ見通しが今後の展開を占う鍵になると見ています。
ECBラガルド総裁:欧州議会証言で、政策変更を緩やかに行うことを繰り返す
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は2022年2月14日に欧州連合(EU)議会で証言しました。ラガルド総裁はユーロ圏経済は回復は持続するも22年1-3月期は低調な成長率を予想していると述べました。また、インフレ率に関して、予想より長く高水準にとどまると見られるものの、年内に鈍化するとの予想を繰り返しました。そのうえで、いかなる政策変更も緩やかなものになるという認識を示しました。
ラガルド総裁の証言内容は、2月3日のECB政策理事会後の発表内容を繰り返したものでした。
どこに注目すべきか:議会証言、ECB、供給問題、マイナス金利
ECBのラガルド総裁が2月3日のECB政策理事会後の会見で年内利上げを否定しなかったこともあり、市場では年内利上げを織り込む動きが強まっています。結果として、ドイツとユーロ圏の他の加盟国との間の国債利回り格差(スプレッド)が拡大しています(図表1参照)。政策理事会後の会見でラガルド総裁は(利上げ観測で)ユーロ圏のスプレッドは拡大していないとの認識を示しました。市場の織り込みが進んでいます。
議会証言でもラガルド総裁は緩やかな政策変更を繰り返していますが、市場並びにECB内部にもインフレへの対応を求める声が強くなっています。その場合ECBのケースでは槍玉にあがるのはマイナス金利です。ECBがマイナス金利を導入したのは14年6月でした(図表2参照)。その後物価動向を睨みながらさらなる引き下げと据え置きを続け、金利水準がマイナス0.5%となっています。ユーロ圏のマイナス金利を導入から振り返ると、マイナス金利により貸出が増えることが期待され、その結果低インフレもしくはデフレ対策になるとの役割であったと見られます。すでに債券購入による量的金融緩和縮小の道筋を示したこともあり、マイナス金利の縮小に注目が向かうのは自然な流れと見られます。市場並びにECB内部からもマイナス金利の縮小に声が高まる中、ラガルド総裁はエネルギー価格上昇などに金融政策は効果がないと主張しつつ、年内の利上げを完全には否定しないなど、答弁はちぐはぐな印象です。
次に、市場が利上げ観測を高める別の理由としてECBのインフレ見通しが甘いとの見方もあるようです。ECBが昨年12月に発表したインフレ率予想は、予想の開始からインフレを過小評価していると見られます(図表3参照)。
もっとも、議会証言でラガルド総裁は前年同月比で5%以上となった昨年12月と1月のインフレ率について深い懸念を示しています。また、ユーロ圏のインフレはエネルギー価格が主な理由である一方、食品など他の項目も上昇していると認識しています。ラガルド総裁はこれらの動きが短期的なのかどうかなどについて3月の経済予測に反映させる考えを示しています。次回のECBによる経済予想はいつも以上に注目する必要があるようです。
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