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FOMC議事要旨、今はインフレ対応重視
梅澤 利文
2022/07/07

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概要

大幅利上げを決定した6月のFOMCの議事要旨は、インフレ対応が最優先政策であることが示されています。景気を多少犠牲にしてでも、インフレを抑えることを重視していることがうかがえます。もっとも、景気減速の兆しは6月のFOMC後の経済指標でより鮮明となっています。FRBが景気への配慮を示すタイミングに注目が集まる展開を想定しています。



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FOMC議事要旨:大幅利上げを実施した6月のFOMC、インフレ対応を重視

米連邦準備制度理事会(FRB)は2022年7月6日に先月14~15日に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表しました。

6月のFOMCでは通常の3倍となる0.75%の利上げが約27年ぶりに実施されました。パウエル議長らは事前には前回の5月会合と同じ0.5%の利上げを示唆していましたが、直前に公表された5月の米消費者物価指数(CPI)が前年同月比で8.6%上昇した(図表1参照)ことなどを背景に、利上げ幅の拡大に踏み切ったことが議事要旨からも確認されます。

どこに注目すべきか:議事要旨、FOMC、PCE、求人件数、スプレッド

今回の議事要旨ではFRBの政策姿勢が改めて確認された一方で、足元の経済指標との相違が気になりました。

まず、FRBの政策姿勢はインフレ抑制が最優先であることが再確認されました。議事要旨でも、FOMC参加者はインフレ抑制に向け政策金利をより長期にわたって引き上げ続ける必要性があり得るとの認識で一致しています。

議事要旨で参照されている経済指標で確認すると、インフレ抑制姿勢を維持することがうかがえます。例えば、市場予想を上回った5月の総合CPIについて、議事要旨でも素直に高水準であることを認めています。また、個人消費支出(PCE)価格指数から変動の大きい項目を除外して算出しているトリム平均の4月分が前年比3.8%上昇となったことが議事要旨で指摘されています。最近公表された5月の数字は約4%とさらに上昇しており(図表1参照)、インフレ抑制の必要性がうかがえます。

欧州中央銀行(ECB)が6月末に開催した年次フォーラムで、パウエル議長は(利上げで)経済を減速させるリスクはあるものの、物価上昇期待を伴う持続的な高インフレの方がより大きなリスクという見解を示しました。議事要旨でも期待インフレを抑えることの重要性が指摘されています。足元でもインフレ対策が最優先であることが確認されます。

ただ、足元の経済指標と市場指標は6月のFOMC開催時点に比べると悪化が見られます。例えば、議事要旨で前月比小幅低下したが高水準と言及された4月の求人件数(図表2参照)は、5月も低下しました。全雇用者に占める自発的離職者の割合である離職率も5月は2.8%と依然高水準ながら、回復の勢いは失われているようです。

もっとも、経済指標は一部小幅な減速が見られる程度ですが、株価や社債利回りなどの市場関連の指標は今後の景気悪化をより鮮明に示唆しています。例えば投機的格付け社債(ハイイールド債券)のスプレッド(利回り格差、景気動向を反映しやすい)は急速に拡大(悪化)しています(図表3参照)。6月FOMC開催前の水準に比べ、市場の景気に対する見方が急激に悪化したと見られます。

パウエル議長の最近のコメントから7月のFOMCでは0.75%の利上げが基本方針とは思われますが、市場の景気減速懸念や経済データ次第の面もあり不確実性は残りそうです。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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