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- それでも明るくなれないユーロ圏の経済指標
先週末にユーロ圏の4-6月期GDP成長率など各種経済指標が発表されました。4-6月期GDP成長率は市場予想を上回り、意外と堅調であることが示されました。ただ、ユーロ圏の今後の様々な要因に目を向けると、過去の成長は色あせて見えます。データ次第という言葉がよく聞かれますが、杓子定規の判断でなく、データの内容を見る必要性のことと筆者は認識しています。
ユーロ圏4-6月期GDP:懸念要因はあるものの、市場予想を上回り、4-6月期の成長示唆
欧州連合(EU)統計局が2022年7月29日に発表した4-6月期のユーロ圏の実質GDP(域内総生産)速報値は前年同期比4.0%増と、市場予想の3.4%増を上回りました(図表1参照)。1-3月期は5.4%増でした。なお、短期的な動向を反映する前期比のGDP成長率は0.7%増と堅調で、市場予想の0.2%増を上回りました。
国別ではドイツが前年同期比で1.4%増と、市場予想、前期を共に下回りました。他の国を前期比で見ると、ポルトガルがマイナス0.2%、ラトビアもマイナス1.4%となるなどと減速する国もありました。一方で、フランスは前期比0.5%増となり、イタリアも1.0%増、スペインは1.1%増でした。
どこに注目すべきか:ユーロ圏4-6月期GDP、ドイツ、インフレ、政治
ユーロ圏経済に対する市場の悲観的な見方と異なり、ユーロ圏の4-6月期実質GDP成長率は比較的堅調でした。前期比は市場予想、前期を共に上回り、足元の景気の堅調さがうかがえます。しかし、成長率の中身やユーロ圏を取り巻く環境を考えると、市場がユーロ圏、特に今後の動向に悲観的な見方なのも道理であるように思われます。
まず、ユーロ圏の4-6月期の成長率を押し上げた要因を振り返ると、サービス消費、とりわけ観光客の回復が挙げられます。20年以降、新型コロナウイルスの影響で観光客の動きは大幅に鈍りましたが、欧州では感染拡大が抑制されたこともあり、観光客は急速に戻りつつあり(図表2参照)、例えばスペインを訪れる海外からの観光客のホテル利用はコロナ前の水準に近づいています。図表2は6月までのデータですが、例年観光客がピークをつけるのは8月で、利用客のピークはこれからと見られます。
ただ、観光客はその後年末に向け低下するのが通常のパターンです。コロナで控えていた観光が例年を上回るペースで増えていくのは考えにくいと思われます。
観光のように足元はプラス要因でも年末に向け、その効果が弱まると想定されるうえ、ユーロ圏経済にはネガティブな要因が多く想定されます。
例えばドイツ経済の不振です。主力の自動車産業の不振が長期化していることに加え、ロシアに対するエネルギー依存度の高さが懸念されます。国際通貨基金(IMF)が先月公表したレポートを参考にロシアがドイツへの天然ガス供給を停止した場合の成長率低下の影響を見ると、22年が1.5%、来年が2.7%(直接、2次的影響、不確実性を考慮したケース)と推定しています。推定の前提条件で予測の範囲は異なることもあり推定結果は幅を見る必要はありますが、仮にロシアが供給を停止した場合、ドイツ並びにユーロ圏経済は深刻な影響を受ける可能性が高いと見られます。
金融政策からの支援は当面期待薄です。先週末に7月のユーロ圏インフレ率が発表され、前年比で8.9%上昇と6月の8.6%上昇を上回りました。エネルギー価格や、ユーロ圏の賃金など、今後上昇要因もあり、ユーロ圏のインフレ率のピークはまだ先と見ています。そのため、金融政策は引き締め姿勢継続が想定され、当面は下押し要因と見られます。
政治にも不安があります。イタリアを例にとると、9月25日に総選挙が予定されています。世論調査通りならば右派政権が誕生しそうです。問題は欧州の財政支援が受けられるかです。ドラギ政権は財政支援を受ける条件をクリアしてきましたが、選挙後の政権が今後も財政支援の条件を満たすのか不透明です。イタリア以外の国においても、インフレなどを背景に政治的不満は高まっている様子です。ユーロ圏景気の回復は財政依存の面もあるだけに注意は必要です。
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