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- 7月米CPIと金融政策の今後の展開
7月の米CPIは、インフレのピークアウトを感じさせる内容でした。ただ、ガソリン価格や航空運賃など変動が大きい項目が下落をけん引したことや、影響力が大きい家賃は過去と比べて依然高水準など注意する点は残ります。金融当局の反応は6月FOMCのシナリオをベースに利上げ継続で市場をけん制していることから、9月のFOMCの内容に注目が集まることも想定されます。
米消費者物価指数:7月は市場予想、前月を下回りインフレ懸念に一服感
米労働省が2022年8月10日に発表した7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.5%上昇と、市場予想の8.7%上昇、前月の9.1%上昇を下回りました(図表1参照)。前月比では0.0%と前月の1.3%上昇を大幅に下回りました。
エネルギーと食品を除いたコアCPIの上昇率は前年同月比で5.9%で前月から横ばいで、市場予想の6.1%上昇を下回りました。コアCPIは前月比では0.3%上昇し、市場予想の0.5%上昇、前月の0.7%上昇を下回りました。
どこに注目すべきか:7月米CPI、ガソリン価格、航空運賃、家賃
7月の米CPIはインフレ率が依然高水準であることを示す数字ながら、上昇の勢いに落ち着きが見られました。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における利上げ幅を0.75%とする可能性を若干押し下げ、0.5%の可能性を押し上げたと見られます。もっとも、9月のFOMC前に8月のCPIや、他の重要な経済指標の公表も控えており、今後のデータ次第で最終的に次回FOMCの内容が決定される展開を見込んでいます。
まず、7月の米CPI品目のうち、低下した主な品目はガソリン(前月比マイナス7.7%)、航空運賃(マイナス7.8%)などが挙げられます(図表2参照)。これらの品目は前月のCPIを予想外に押し上げましたが、下落に転じています。なお航空運賃以外にも宿泊費、中古車価格も下落しており、コロナ関連品目に下落が見られました。この背景には、コロナで控えられていた旅行需要などが、コロナ収束により、急回復し、航空運賃など関連品目の値段を4-6月期頃は押し上げたと見ています。しかし7月のCPIを見る限り、落ち着きが戻った模様です。
米国は、通常夏にガソリン需要が増加する傾向がありますが、今年は恐らく、これまでのガソリン価格の水準が嫌気され需要が伸び悩み、ガソリン価格の頭打ちが見られました。
やや判断に迷うのが家賃です。家賃の主な構成品目は借家の賃料と持ち家に家賃を支払っていることにする帰属家賃です。家賃はCPI全体に占める割合が約32%と高く、影響力が大きい品目です。7月は賃料も帰属家賃も前月比で下落しました。家賃と連動する傾向がある住宅市場の動向が軟調であることから家賃への下押し圧力は想定されますが、7月については「早い」印象もあります。また、水準そのものは高いことから、インフレ要因となることが想定され、今後の動向には注意が必要と見ています。
なお、先週はCPI以外にも卸売物価指数(PPI、図表3参照)や、ニューヨーク連銀調査で期待インフレ率の低下が確認されました。インフレは依然高水準ながら、インフレ圧力の低下を示唆するデータが増えつつあるようにも思えます。
CPIを受けた米金融当局の反応は(数は限られますが)概して6月のFOMCで示された政策金利の水準を意識した発言となっています。つまり、インフレの水準は高く利上げ継続を示唆しています。ただ、年内残る3回のFOMCで利上げペースは減速が想定されます。こうした中、先読みする市場を金融当局がけん制する展開を当面は想定しています。
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