- Article Title
- ECBのタカ派姿勢にやや後退の兆しながら、注意は必要
欧州中央銀行(ECB)は今回の政策理事会で0.75%と大幅な利上げを決定し、今後も利上げを続ける姿勢を示しています。しかしながら、声明文や、ECBのラガルド総裁の会見から、金融政策は今後のデータ次第で利上げペースを決定する模様で、場合によっては利上げペースを落とす可能性もあることから、市場の利上げの織り込み度合いは若干低下した模様です。
ECB政策理事会:政策金利を0.75%引き上げるも金融引き締め姿勢はやや後退の印象
欧州中央銀行(ECB)は2022年10月27日の政策理事会で、市場予想通り、政策金利を0.75%引き上げることを決定しました(図表1参照)。
今回の追加利上げで主要政策金利を1.25%から2.00%、銀行が中央銀行に預ける際の金利(中銀預金ファシリティ)を0.75%から1.50%に引き上げました。
どこに注目すべきか:ECB、数回の会合、天然ガス価格、QT
ECBは大幅利上げを実施したものの、声明文や、ECBのラガルド総裁の記者会見などを受け、ユーロ圏の主な国の国債利回りは低下しました(図表2参照)。声明文やラガルド総裁の会見内容からタカ派(金融引き締めを先行する傾向)姿勢が若干後退したと市場が受け止めたことによります。
市場がタカ派姿勢の若干の後退として注目したと思われる要因は、声明文において政策金利の先行きについて、前回用いられた「今後数回の会合」という文言の削除が挙げられます。もっとも、ラガルド総裁は利上げを継続することを強調しています。その上で、今後の政策金利の運営ではデータ次第で会合ごとの判断にすると説明しています。判断の注目点として示したのは次の3点です。インフレ見通し、(それまでの)利上げの効果、金融政策の効果が表れるまでのラグ(遅行性)の考慮、で利上げペース減速の準備にも聞こえそうです。
ユーロ圏のインフレ見通しを考えると、足元ユーロ圏のインフレ率は前年比9.9%と高水準ですが、そのうち寄与度の4割以上はエネルギー価格の上昇と見ています。しかし、欧州の代表的な天然ガス価格の指標であるオランダTTF先物の動向を見ると、ピークは夏場で、足元は下落傾向となっています(図表3参照)。欧州各国は天然ガスの貯蔵を進め、ほぼフルに近い貯蔵率となっています。このような状況がユーロ圏のインフレ率には反映されていないようですが、時間の遅れを伴ってインフレ率の下押し圧力となる可能性も考えられます。
なお、タカ派姿勢の後退を受け、ユーロ安が進行し再びパリティ(1ユーロ=1ドルの等価)割れとなっています。しかし、現段階で底割れは回避されています。米連邦準備制度理事会(FRB)から先週、利上げペース減速を匂わせる発言もあっただけに市場の受け止め方は現状、冷静なのかもしれません。
次に、利上げ以外の政策に目を向けると、ECBはバランスシート(B/S)を縮小し正常化を進める方針です。手始めにデフレ対応等で導入したTLTRO (ECBが銀行に低金利で資金を貸し出す支援策)の条件を厳しくしました。利上げと整合的となること、銀行の自発的な返済を促しB/Sを縮小することは引き締め姿勢の維持を示唆しています。
一方、債券購入など量的引き締め(QT)は今回は話し合われず、次回(12月)に課題を先送りしました。その上、市場分断化(ドイツ国債と他国との利回り格差)解消に利用されているコロナ対応の資産購入特別枠であるPEPPは別扱い(QTの対象と当面考えない?)と説明したためイタリア国債などの利回りはドイツ国債より大きく低下しました。このような配慮がタカ派姿勢の後退の兆しと受け止められたようです。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。