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- 6月FOMC、コミュニケーションは難しい
6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)は市場予想通りタカ派的な据え置きとなりました。サプライズであったのは年内2回の利上げがドットチャートなどに示唆されたことでした。市場はこれまで年末にかけて利下げを見込んでいましたが、この点は見直しが進んでいます。しかしながら、年内2回の利上げに対して市場は十分に織り込んではおらず、今後のデータ次第の面もあるようです。
6月のFOMCは市場予想通りタカ派的据え置きとなった
米連邦準備制度理事会(FRB)は2023年6月13~14日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で大半の市場予想通り利上げを見送りました。据え置きは22年3月のゼロ金利解除以降では初めてで、11会合ぶりとなります。
同時にFOMCの経済見通しや米政策金利見通し(ドットチャート、図表1参照)が発表され、ドットチャートは23年内であと2回程度の利上げが示唆されるなどタカ派(金融引き締めを選好)的でした。
年内2回の利上げ見通しや経済指標の上方修正でFRBはタカ派を演出
6月のFOMCは市場予想通りタカ派的な政策金利の据え置きとなりました。ただし、FOMCの発表内容の中には、年内の利上げ見通しが1回でなく2回であったことや、23年のGDP(国内総生産)成長率やコア個人消費支出(PCE)価格指数などが前回のFOMCから上方修正されました。政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の23年年末水準の見通しは5.6%と0.25%の利上げ2回分引き上げられています(図表2参照)。
ドットチャートや図表2の経済見通し(FF金利)はタカ派的で年内2回の利上げが見込まれています。ただ、米金利先物市場が織り込む年内の政策金利の予想を見ると、FOMC前に比べFOMC後で、利上げ見込みは強まりましたが小幅にとどまり、2回の利上げ予想には至っていません。株式市場でも追加の2回の利上げ示唆に値を下げた局面もありましたが、金融緩和と相性が良いグロース株が堅調に推移しており、素直に年内2回利上げを受け入れていないように思われます。FRBのパウエル議長が記者会見でタカ派姿勢を打ち消す内容も含まれていたことなどが背景とみられます。
一方で、以前、市場が織り込んでいた年内利下げ開始を見込む声は、ほぼ打ち消されています。根強いインフレ懸念を前に、FRBは利上げスピードを緩めたものの、政策金利の引き締め水準を長期的に維持する意向です。市場でも年内利下げ開始予想は勢いを失っています。
対話が難しいのは、利上げが最終局面に近いことと裏腹かもしれない
インフレ対応として据え置き期間の長期化を市場に織り込ませる点ではFRBは成果を上げつつあるようですが、コミュニケーションの点で疑問が残ったとみています。利上げ最終局面で、利上げスピードから据え置き期間の長期化という政策運営の変わり目における対話の難しさといえばそれまでですが、パウエル議長の会見には不思議なメッセージも見られます。
例えば、利下げはインフレが顕著に鈍化してからのことなので、「2年ほど先」になる可能性が高いとの認識を示しましたが、図表1のドットチャートを見れば来年には利下げ開始の可能性があるようにみられます。
また、今回据え置きを決めたのは、利上げのペースを減速させてきたプロセスの延長にあると説明しています。しかし、これは利上げを見送った理由としては不十分で、今後仮に利上げをするのであれば市場は何を手掛かりにすればよいのかよくわからず、消化不良の会見であったように思われます。もっとも市場との対話が難しいのは、利上げが最終局面に近いことと裏腹かもしれません。
では、どのように整理すればよいか?今回のFOMC参加者見通しでインフレ予測を上方修正する一方で据え置きを決めたことなどを考えれば、米国は金融引き締め領域にあるとFRBは判断しているのではないかと筆者は考えています。実質FF金利は過去の引き締め終了水準に近づきつつあることに加えて、量的引き締め(FRB保有国債の規模縮小)や銀行の貸し出し姿勢厳格化という要因なども引き締め方向に働くことが想定されます。適切な引き締め度合いを考える時間が欲しいというのが本音なのではないかと思います。
パウエル議長は7月のFOMCについてデータ次第で判断が変わる「ライブ」になるだろうと指摘しました。ライブの解釈は人により異なり、利上げの可能性をライブと表現したとする見方もある一方で、文字通り会合が終わらないと結果はわからないという解釈をする市場参加者もいます。筆者は、後者の考えに近く、これからのデータ次第で結果は左右される展開を想定しています。
今回のFOMCで7月以降の利上げの可能性が強く示唆されましたが、本当に利上げするのかはデータ次第とみています。
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