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- ECB理事会プレビュー、経済指標は利下げを支持
米S&Pグローバルの発表によると、ユーロ圏の9月の製造業PMIは45と低迷し、サービス業PMIも51.4に留まりました。また、9月のインフレ率は欧州中央銀行(ECB)の物価目標を下回りました。ユーロ圏の消費はインフレと高金利の影響で回復が遅れています。労働市場も軟化の兆しが見え始めました。9月の理事会では10月の政策についてヒントを与えませんでしたが、利下げの可能性が濃厚なようです。
ユーロ圏9月のPMI(改定値)は製造業、サービス業共に前月を下回った
米S&Pグローバルが10月1日に発表した9月のユーロ圏の製造業購買担当者景気指数(PMI、改定値)は45と、速報値の44.8から小幅上方修正されたものの、8月の45.8を下回り景気の減速感が示されました(図表1参照)。国別ではドイツの製造業PMIは9月が40.6と、前月の42.4を下回りました。PMIは50が景気拡大・縮小の目安です。
10月3日にはユーロ圏のサービス業PMI(改定値)が発表され、9月は51.4と、速報値の50.5から上方修正されたものの、前月の52.9を下回り、サービス産業の回復に頭打ち感がみられました。国別では、フランスのサービス業PMIが9月は49.6となり、8月の55を大幅に下回りました。
ユーロ圏の最終消費は高金利の影響などで長期トレンドを下回る
欧州中央銀行は10月17日に政策理事会の決定を発表する予定です。9月の理事会後の記者会見では、ECBのラガルド総裁が10月の利下げについて「データ次第、利下げの道筋は事前に決定しない」と述べヒントを与えませんでした。市場も10月の理事会で追加利下げがあるのか、ないのか判断に迷った時期もありましたが、最近の経済指標から10月利下げの可能性は強まっており、ECBの発言も利下げにシフトしています。
ユーロ圏製造業PMIは高金利による需要抑制、自動車産業の不振、輸出の伸び悩みなどを背景に悪化傾向です。国別ではドイツなどが深刻です。
サービス業も個人消費の回復が鈍いことなどから最近は節目の50を超える推移をしているものの、力強さに欠ける印象です(図表2参照)。図表2でユーロ圏の長期的な最終消費支出を見ると、コロナ禍前の傾向線(トレンド)を下回る消費が続いています。ユーロ圏の消費の回復が遅れている主な背景として、インフレによる買い控えと、高金利による貯蓄選好とみています。ユーロ圏の家計の貯蓄率が高く、コロナ禍前の水準を大幅に上回っていることなどが防衛的な消費行動の証拠とみています。
なお、短期的な観点からは9月のサービス業PMIが低下した一因にフランスのサービス業PMIの急落が挙げられますが、これはオリンピック終了の影響も含まれると思われます。
労働市場に軟化の兆しで、ECBの10月の利下げの確度は高まったようだ
ユーロ圏のインフレ懸念は後退しました。欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)が10月1日に発表した9月のユーロ圏消費者物価指数(EU基準CPI、HICP)統計(速報値)によれば、総合インフレ率は前年同月比1.8%上昇と、前月の2.2%上昇を下回りました(図表3参照)。ECBの物価目標の2%を下回ったことになります。ECBは9月の理事会で経済予想を公表しましたが、24年予想は2.5%で、2%を下回るのは26年と見込んでいましたが、早くも目標水準を達成しました。ECBがインフレ対応を重視していたときは、高金利が貯蓄選好を高め消費を抑制する面がありましたが、インフレ率の低下により、利下げは進めやすくなったとみられます。
ただし、図表3でCPIを部門別にみると、鈍化はエネルギーや財価格などの下落に依存しています。サービスは9月が前年同月比4.0%と、前月を小幅下回ったに過ぎず依然高水準です。
サービス部門はコストに占める人件費(賃金)の割合が高いことが知られています。ユーロ圏の賃金が高水準な背景の一つに雇用市場の堅調さが挙げられます。ユーロ圏の8月の失業率は6.4%で歴史的低水準です(図表4参照)。
ユーロ圏の失業率の低さは労働市場がタイトなことを示唆しており、賃金交渉も労働者側に有利となったことが想定されます。しかし、ECBでもタカ派(金融引き締めを選好)のシュナーベル理事が労働需要に軟化の兆しがあると2日に発言したように、労働市場に軟化の兆しが見られます。例えば、仕事の見つけやすさの目安である求人倍率は22年をピークに鈍化傾向です。今後も注意は必要ながら、ユーロ圏の労働市場が利下げの妨げとなる可能性も低下し始めているように思われます。
一部のECBメンバーは10月の追加利下げに難色を示していますが、ラガルド総裁など主流派に加え、タカ派メンバーの中にも利下げへの同調が見られます。ユーロ圏の経済指標を考え合わせれば、10月の利下げの可能性は高いとみられます。
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