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- 日本の財政から投資の必要性が見えてくる① ~投資とお金について~
投資はお金を「増やす」ことを目的に行うものだけではなく、「価値を守る」ために行うものでもあります。
■ 投資は必要か
投資は必要か、その答えは「お金を増やす必要があるか」と「お金の額面と価値どちらが大事か」によって変わってきます。今の日本は、高度経済成長時代と異なり、人口減少と少子高齢化とともに低成長時代に入りました。更に、日本は国(政府)の財政悪化と高齢化によって税負担・社会保険料負担が増えており、日本の構造的な問題が解決に向かわない限り、この傾向は続くことが予想されます(図表1)。所得の伸びが非消費支出注の伸びを下回る状況が続くと、個人の手取り収入(可処分所得)の伸びも期待できません。よって、手取り収入の不足を補うため、これまで何とかして貯めてきたお金を増やし、不足分を補う方法を検討する必要性が高まっています。かつては銀行に預けておくだけで8%の金利がついた時代がありました(1974年の郵便貯金の金利は8%)。2024年現在、同じ郵便貯金の金利は0.02%まで低下しています。このような環境の中、なかなかお金が増えない円預金では不十分であり、別の方法でお金を増やす必要があります。その方法の一つが投資です。
注:住民税、勤労所得税、社会保険料を指します。
図表1:世帯所得と非消費支出(住民税・勤労所得税・社会保険料等)の推移
(年次、期間:家計所得の平均値・中央値1987年~2021年、非消費支出平均値1987年~2023年)
出所:家計所得は厚生労働省「国民生活基礎調査」、非消費支出は総務省「家計調査」のデータを基にピクテ・ジャパン作成
■ お金の額面と価値
「金利が低くても、少なくとも元本が減るわけではないのだから、預金で十分ではないか」と考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、その「元本」とは「お金の額面」のことでしょうか、それとも「お金の価値」でしょうか。大卒初任給が月給100円だった時代の給料1ヶ月分の100円が、100円を下回らなければ良いと考えるなら、それは「お金の額面を重視する」ということです。大卒初任給の平均が22万円になったのだから当時の100円は22万円になっていなければならないと考えるなら、それは「お金の価値」を重視するということです。お金の価値は、モノやサービスとの交換比率、つまりモノやサービスの価格によって変わります。そして、モノやサービスの価格というのは「買いたい人(需要)」と「売りたい人(供給)」のバランスで決まります。モノやサービスの価格が変わるということは、裏を返せば、モノやサービスを手に入れる対価としての「お金の価値」も変わるということです。
■ お金の価値を守るための投資
インフレとは、モノやサービスの価格が上がることを意味し、それによって、お金の価値は下がります。日本の政府や中央銀行は2%のインフレ目標の達成を目指していますが、構造的な問題が解決されなければ低成長が続く可能性があります。例えば、今100万円の車は前年比2%インフレが5年続くと、110万円になりますが、100万円を5年間預金においたままでは110万円に届かず、5年後同じ車を購入することができなくなります(図表2)。インフレ環境下において、「100万円が100万円であればいい」とお金の額面を重視するだけでは、モノやサービスを買う力を維持できません。投資は「お金を増やすために行うもの」でありますが、それと同時に、「お金の価値を減らさないために必要なもの」でもあるといえます。
図表2:インフレとお金の価値について
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