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- 日本の財政から投資の必要性が見えてくる⑧~「やはり、投資は必要」~
これまで日本の財政から投資の必要性を考えてきました。今一度全体を整理し、投資の必要性を再確認しましょう。
■日本政府の財政収支
2024年度当初予算では、一般会計と特別会計の主要経費別歳出純計注258.7兆円のうち、国債費は89.4兆円、社会保障関係費は102.3兆円とそれぞれ全体の約4割を占めています。一方で一般会計と特別会計の主要経費別歳入純計注261.3兆円のうち、公債金及び借入金が90.9兆円と不足する財源を国債発行に依存する状態が長らく続いています。そもそも財政法で禁止されている赤字国債は1975年の特例公債法成立により特別に認められるかたちで初めて発行されました。しかし、その後も特例公債法を繰り返し制定し、赤字国債を継続的に発行し続け、1991年から1993年の一時的な赤字国債からの脱却期間を除き、今日までその依存体質が続いています。その結果2023年12月末の国の借金(国債+借入金+政府短期証券)は1,286兆円にまで膨れ上がっています。
注:一般会計と特別会計の合計から会計間の入り繰りを控除し、政策分野ごとに整理したもので、国全体の歳出(歳入)の全体像を示します。
図表1:日本政府の債務残高
出所:財務省のデータに基づき ピクテジャパン作成
■政府債務とインフレ
足元の日本の政府債務残高(対GDP比)は250%を超えていますが、これまでの世界の歴史を振り返ると国の借金を減らすための方法として①増税、政府の支出削減などによる債務削減、②インフレによる債務価値の削減、③経済の名目成長が債務拡大を上回る、④デフォルト(債務不履行)・ヘアカット(債務減免など)が過去に存在しました。日本における債務削減例としては、第二次世界大戦直後があげられます。戦後、焦土と化して極端な物資不足になったことを起因に物価が上昇し、更に復興のために紙幣を増発したことから、復金(復興金融公庫債)インフレと呼ばれる大幅な物価上昇が起こりました。日本の物価は戦後3年半で約100倍となったことで、GDP比政府債務比率は大きく低下し、国債の元利払いも軽減され、戦後復興につながるものとなりました。現在、政府・日本銀行が2%インフレを標榜する理由は、インフレ経済への転換により、「物価上昇→所得の増加→消費増加→物価上昇」というサイクルを通じた経済成長を促すためであり、政府債務削減を狙ったものではありません。しかし、先に述べたように、インフレは債務価値の削減においても大きな効果が期待できます。その反面、現金・預金がインフレというリスクに晒されていることも認識する必要があります。
■お金の価値を守るための投資
「金利が低くても、少なくとも元本が減るわけではないのだから、預金で十分ではないか」と考える方もいらっしゃいます。その「元本」とは「お金の額面」のことでしょうか、それとも「お金の価値」でしょうか。お金の価値は、モノやサービスとの交換比率で決まるため、モノやサービスの値段によって変わります。また、日本の実質経済成長率は他の先進国に比べて低く、政府債務も増加を続けており、これらが通貨価値に与える影響も看過できません。「お金の額面」を重視するだけでは、モノを買う力を維持できません。投資は「お金を増やすために行うもの」でありますが、それと同時に、「お金の価値を減らさないために必要なもの」でもあるのです。したがって、日本の財政を考える上では自身でお金の価値を守る、保全をするといった自助努力がよりいっそう求められると考えられます。
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