日本の財政における課題や改善点を考えると、日本経済の復活に必要なポイントが見えてきます。

■日本の財政の課題点：「教育への投資」

これまで日本の財政について、主に政府債務残高の増大について様々な問題点や課題をご説明してきました。本シリーズの最終号となる今回は、前述の政府債務以外で今後改善が期待される課題の1つとして、「教育への投資」についてご説明いたします。図表1は、国の一般会計歳出総額における文教及び科学振興費^注の予算とその割合を表したものです。1975年から約50年間、一般会計歳出総額の増加に対し、未来への投資である文教及び科学振興費はほぼ横ばいの状態が続いており、当然ながら総額に占める割合は低下の一途をたどっています。では、他国と比較するとどうでしょうか。図表2は、OECD（経済協力開発機構）加盟国の国内総生産(GDP)に対する教育支出の割合を表したものです。OECDの平均5.1％に対して日本は4.1％と下回っております。これらのデータから、日本の財政が抱える課題の1つとして「教育への投資」に十分な予算を割くことができていない点があげられるのではないでしょうか。

■経済成長のカギとなる一人当たりGDPの伸び

では、なぜ今よりも多く「教育への投資」に予算を割く必要があると考えるのか、その理由は日本が経済を拡大成長させていくために一人当たりGDPを伸ばすことが重要になるという点です。一国の経済規模を示すGDPは人口と一人当たりGDPを乗じて計算されます。つまり、日本が経済を拡大成長させるためには、人口を増やすか、一人当たりGDPを増やすかのどちらかが必要になるといえます。残念ながら、現在、日本は人口減少が見込まれる国です。国際連合が発表した2024年版の「世界の人口統計」によると、日本の人口は現在の1億2,400万人から2100年には7,700万人まで減少する見込みであり、このことからGDPの維持、成長には一人当たりGDPの増加が必須だといえます。またそのためには、技術革新も大きなカギとなります。学生や研究者等への投資は、生産技術や知識、ノウハウの高まりにつながり、日本国内の生産性や効率性を上げ、一人当たりGDPの増大に寄与します。現在、日本のGDPを確認すると、名目GDPで見た場合は経済成長していますが、実質GDPではほぼ横ばいの状況が続いています（図表3）。これは足元のインフレを反映したものであり、日本経済はここ数年に渡って実質的な成長はしていないといえます。このように、今後、日本経済が実質的に成長していくためには生産性の向上や技術革新が大きな要素と考えられます。そして、そのためには教育等への投資が必要であり、財政上の重要な課題の1つとして考えられるのではないでしょうか。