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- 日本の財政から投資の必要性が見えてくる② ~インフレについて~
インフレによってお金を貸す側(貸し手)と借りる側(借り手)が受ける影響を整理することで、インフレと債務の関係性を理解することができます。
■ インフレになると借金の価値はどうなるか
前回、インフレとはモノの価格が上がり、お金の価値が下がる現象と説明いたしました。それでは、インフレになると借金はどうなるのでしょうか。借金の額はインフレになっても変わりません。例えば、インフレで1個100円の消しゴムが1個10,000円になっても、100万円の借金は額面上100万円のままです。また、これは借金の価値はインフレによって確実に下がるということを意味します。
■ インフレ時代にお金の貸し手と借り手どちらが有利か
インフレによって借金の価値が下がることを理解するために、まず、インフレ局面においてお金の貸し手とお金の借り手のどちらが有利かについて、借入と預金を例にご説明いたします(図表1)。今、都内のマンションの価格が5,000万円、チョコレート1枚が500円であるとし、銀行から5,000万円を借りてマンションを購入したとします。その後、インフレにより、チョコレート1枚が5,000万円になった場合、借金の価値もチョコレート1枚分になったといえ、お金の借り手は返済の負担が大きく減ります。一方、銀行預金を銀行への貸付と考えると、5,000万円の銀行預金をしているお金の貸し手は、5,000万円を引き出してもチョコレート1枚しか買えないことになります。このことから、インフレによるお金の価値の目減りはお金の借り手に有利に働くことがわかります。ただし、お金を借りるということは、将来にわたって借りたお金を返済していき、返済完了までの利息を支払っていくという義務を負う行為であることを忘れてはなりません。
図表1:インフレが与えるお金の貸し手と借り手への影響
■ 世界で一番日本円を借りているのは誰か
インフレの時代に借り手が有利であることがわかりました。さて、それでは世界で一番日本円を借りているのは誰でしょうか?それは⽇本政府です。財務省の発表によれば、2023年12月末で、国の借金(国債+借入金+政府保証債)は1,286兆円になりました。近年、高齢化の進展などに伴う社会保障関係費の上昇や国債費の膨らみを主因に国の借金は増加しています。また各国の債務の規模を対GDP比で確認すると、日本の債務水準は主要先進国(G7)の中で最悪の水準となっていることがわかります(図表2)。
図表2:主要先進国の政府債務残高(対GDP比)
出所:IMFのデータに基づきピクテ・ジャパン作成
しかし、先ほどご説明した通り、日本政府は積み上がった借金の価値をインフレによって減らすことができます。更に、インフレによって税収が増加する効果も期待できます。例えば、1個100円の消しゴムの消費税は税率10%で10円です。税率を12%に引き上げても12円ですが、インフレで消しゴム1個が10,000円になれば、10%の税率のままでも税収は1,000円になります(図表3)。日本銀行によると、インフレ率目標を2%とした理由は「物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資する」ためです。一方、日本政府にとっては、インフレ率目標を達成することで債務価値の削減も期待できます。政府の強い要請により、日銀は2013年1月に2%のインフレ率目標を導入しましたが、その背景には債務価値を削減したいという日本政府の強いインセンティブが働いていたのかもしれません。
図表3:税率とインフレによる税収の変化のイメージ
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