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日本の財政から投資の必要性が見えてくる③ ~政府債務削減について~
2024/06/26

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概要

過去、実際に行われた債務削減例をご紹介し、第二次世界大戦後の日本を参考に債務とインフレの関係性についてご説明いたします。




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■ 増加する政府債務残高

前回、日本の政府債務残高(対GDP比)が諸外国に比べ、突出して高い状況にあることをご説明いたしましたが、その原因の1つとして、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字が指摘されています。プライマリーバランスとは社会保障や公共事業をはじめ様々な行政サービスを提供するための経費(政策的経費)を税収等で賄えているかどうかを示す指標ですが、少子高齢化の進展等に伴う社会保障関係費の増加が、税収等の伸びを上回っている状況が続いています。このプライマリーバランスの赤字を特例公債注1等の継続的な発行によって賄ってきたため、現在の巨額な債務残高につながったといえます。令和6年度予算をみてみると、一般会計と特別会計の主要経費別純計注2258.7兆円の内、社会保障関係費が102.3兆円、国債費が89.4兆円となっており、この2つの合計で全体の70%を超えています(図表1)。また、増え続ける借金は、当然、今後の利払い費の負担増加にもつながります。

注1:いわゆる「赤字国債」を指し、建設国債を発行しても歳入が不足する場合に特例公債法を定めたうえで発行されます。
注2:一般会計歳出総額と特別会計歳出総額の合計から会計間の入り繰りを控除し、政策分野ごとに整理したもので、国全体の歳出の全体像を示します。

図表1:一般会計と特別会計の主要経費別純計(令和6年度予算ベース)

出所:財務省のデータを基にピクテ・ジャパン作成

■政府債務削減方法

今のところ日本国債のほとんどは国内で消化されており、資金調達に窮してすぐに国家が破綻する状況ではありません。しかし、現在のペースで債務が積み上がってしまうと、近い将来、維持可能な水準を超えてしまう恐れがあります。遅かれ早かれ、日本政府は債務削減を進めていく必要性があると考えますが、具体的にどのような削減方法があるのでしょうか。実は、過去の事例が大きなヒントになります。それは第二次世界大戦前後における日本の債務残高の変化です(図表2)。


図表2:日本の政府債務残高GDP比の推移 (期間:1890年~2024年)


(注1) 政府債務残高は、「国債及び借入金現在高」の年度末の値(「国債統計年報」等による)。令和4年度までは実績、令和5年度は補正後予算、令和6年度は予算に基づく計数であり、政府短期証券のうち財政融資資金証券、外国為替資金証券、食糧証券の残高が発行限度額(計210兆円)となっていることに留意。なお、昭和20年度は第2次世界大戦終結時によりGNPのデータがなく算出不能。
(注2) GDPは、昭和4年度までは「大川・高松・山本推計」における粗国民支出、昭和5年度から昭和29年度までは名目GNP、昭和30年度以降は名目GDPの値(昭和29年度までは「日本長期統計総覧」、昭和30年度以降は国民経済計算による(昭和30年度から昭和54年度までは68SNAベース、昭和55年度から平成5年度までは93SNAベース、平成6年度以降は08SNAベース)。)。ただし、令和5年度及び令和6年度は、「令和6年度の政府経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(令和6年1月26日閣議決定)による。
出所:財務省 日本の財政関係資料(令和6年)

日本の政府債務残高(対GDP比)の推移をみると、この時期の日本の財政状況は今と同じぐらい悪化していましたが、その後急激に改善していることが分かります。日本の財政が大きく改善した要因は、戦後の激しいインフレです。強烈なインフレによって日本円の価値が大きく減価し、同時に円建て債務の価値も著しく低下しました。このようにインフレによって債務価値を減らすことができますが、インフレ以外にも次の方法で国は債務を削減することが可能です。それは、①増税・支出削減等による政府収支の改善、②債務拡大を上回る経済成長の達成(名目経済成長率の増加) 、③デフォルト(債務不履行)・ヘアカット(債務減免)等です。それぞれ具体例をあげると、①は1990年代後半の米国(クリントン政権) で実現されました。②は1945年から73年までの米国において、第二次世界大戦後の急激な経済成長により政府債務も減少しました。最後に③は2001年のアルゼンチン(債務不履行)や2012年のギリシャ(債務減免)の例があげられます。

もちろん、インフレ経済への転換は、「物価上昇→企業業績の改善→国民所得の増加→消費増加→物価上昇」というサイクルを通じた経済成長を促すためであり、政府債務削減を狙ったものではありません。しかし、先に述べたように、インフレは債務価値の削減においても大きな効果が期待できます。日本経済も、本格的なインフレ経済へ突入した可能性がある中、自分自身の資産価値を守ることの重要性は今まで以上に高まっているといえます。




 



 


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