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日本の財政から投資の必要性が見えてくる④ ~日本政府の財政状況について~
2024/07/10

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概要

日本の財政状況は、一般会計と特別会計の合算で確認する必要があります。足元の財政状況は金利上昇に対して脆弱であるといえ、財政リスク問題は避けて通れないと考えます。




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■一般会計と特別会計

日本の国家予算には一般会計と特別会計があり、財政状況はこの2つを合算して確認する必要があります。会計が分かれている理由は、予算管理が複雑化することを防ぐためであり、この2つの純計額を確認することで、国家予算の全体像を把握することができます。また、2つの違いとしては、一般会計が社会保障、地方交付税交付金、教育、公共事業、防衛など国の基本的な政策の経費を賄う会計であるのに対し、特別会計は上記以外の特定の事業を行う場合や特定の資金を運用する場合、一般会計とは区別して管理する必要がある場合に設置されるものとなっています(図表1参照)。

注:一般会計及び特別会計の歳入歳出額の単純合計額から、会計相互間、勘定間等の重複額(財源繰入れなど)を控除(消去)したもの。

図表1:一般会計と特別会計

出所:財務省等のデータを基にピクテ・ジャパン作成

■日本政府の財政収支の推移

図表2は一般会計と特別会計を合算した日本政府の財政収支の推移(2014年度〜2023年度の10年度分)を一覧にしたものです。歳出を確認すると、社会保障関係費が占める割合が非常に高く、かつ過去からの増加分が他の費目に比べて非常に大きいことがわかります。租税・印紙収入額を上回る金額で推移していますが、金利が上がることでこの国債費がさらに膨れ、租税・印紙収入との乖離がこれまで以上に大きくなるリスクがあるといえます。一方、防衛費こそ予算が増額されているものの、国力の維持、強化に重要な歳出項目である公共事業や文教科振費(文教及び科学振興費)への予算が伸びていません。


図表2:日本の財政収支推移(期間:2014年度~2023年度)



出所:財務省のデータを基にピクテ・ジャパン作成

■将来の課題

急速な高齢化社会の進行により、社会保障関係費の著しい増加が続く中、国債残高は増え続け、日本の財政状態は悪化の一途を辿っていますが、それでも低金利の状況が長らく続いていました。その主な要因として、日銀による異次元の金融緩和政策があげられます。通常であれば、財政が悪化すると金利は上昇する傾向にあります。しかし、日銀が、マイナス金利やイールドカーブコントロールといった異次元の金融緩和施策を行ったことで、国債の利回りは全体的に押し下げられていました。これにより、政府は低クーポンの国債を発行することが可能となり、国債費も低く抑えることができていました。しかし現在、日銀はマイナス金利を解除し、さらに金融正常化への議論を継続的に進めています。今後、仮に極端に国債の利回りが上昇すれば、政府の国債費は増加し、財政悪化に拍車をかけることが懸念されます。これは、国債の利回り上昇に対する日本の財政の脆弱性を浮き彫りにし、将来、更に大きな課題になる可能性があるといえます。




  



 

 


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