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日本の財政から投資の必要性が見えてくる⑥ ~日本銀行のバランスシートを別角度から検証~
2024/08/08

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概要

日本銀行のバランスシートを米国のFRB(連邦準備銀行)と比較することで、日本銀行が行ってきた金融緩和策がいかに大規模であるかを理解することができます。




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■「銀行券ルール」の制定と一時停止

日本銀行は、2001年1月の金融政策決定会合で、国債保有残高の上限を銀行券発行残高までとする「銀行券ルール」を導入しました。これは財政ファイナンスを目的として、長期国債を無制限に購入することを抑止するために自主的に策定されたものです。しかし、現在の日銀のバランスシート(以下、BS)を見ると、負債にある発行銀行券残高は約119兆円ですが、資産にある国債残高は約589兆円と、「銀行券ルール」が破られていることがわかります(図表1)。これは、2010年10月に金融緩和をより強力に推進するため「資産買い入れ基金」を創設し、銀行券ルールの例外規定を設けたことや、2013年4月の金融政策決定会合で、前述の基金を廃止した上で、「銀行券ルール」そのものを一時停止し、国債の購入を続けてきたことに要因があります。


図表1:日本銀行のバランスシート(2024年6月末時点)


出所:日本銀行のデータを基にピクテ・ジャパン作成

■金融緩和策が与える影響

FRBとの比較のため、米ドル建てに引き直した日本銀行のBS(図表2)を確認すると、その規模は対GDP比で約112%ですが、FRB(図表3)は約26%であるため、日本銀行の金融緩和策が相対的に、いかに大規模であるかがわかります。さらに、世界各国が高いインフレ圧力に直面し、金融引締めに転換する一方、日本は緩和を続け、その金利差から大幅な円安が進行し、日本の輸入物価を押し上げてきました。直近の会合では、日本銀行は経済情勢に注意を払いつつ、出口戦略の検討を始めていますが、今後の舵取りは非常に難しいといえます。また、現状は緩和的スタンスを維持している日本銀行が今後もさらに国債買い入れを続ける場合、財政規律の観点から、国や通貨の信用棄損につながるリスクもあります。日本銀行の株価低迷は、拡張したBSの状況や金融政策の正常化の困難さを反映したものである可能性があるかもしれません(図表4)。

注:日本のGDPは4.2兆米ドル、米国のGDPは27.4兆米ドル、いずれも2023年のデータでIMFの公表値

図表2:日本銀行のバランスシート(2024年6月末時点) 1米ドル=160.5円換算

出所:日本銀行のデータを基にピクテ・ジャパン作成

図表3:FRBのバランスシート(2024年6月26日時点)

出所:FRBのデータを基にピクテ・ジャパン作成

図表4:日本銀行の株価(月次、期間:1988年3月末~2024年4月末)


出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成

     

 



 




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