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- 引き続き全体としては慎重な見方を継続
新興国株式市場は足元で反発していますが、戻りのペースは緩やかです。足元では、ブラジルやロシアなどの国々での新型コロナウイルスの感染拡大や、米中対立の緊迫化などが懸念材料としてあり、当面はこうした状況が新興国株式市場の重石となる可能性もあり、本格的な回復には時間を要するとみられ、慎重なスタンスで臨むべきと考えます。
足元で反発をみせる新興国株式市場
中国・武漢で最初に感染が確認された新型コロナウイルスは、2020年年初から3月後半にかけて世界的なパンデミック となり、世界経済や企業業績の先行きに懸念が強まったことから、新興国株式市場をはじめ世界の株式市場は大きく下 落しました。
その後、欧米などで感染拡大ペースが鈍化していることや、徐々に経済活動が再開される動きもみられます。さらには米国をはじめ各国が金融緩和、財政出動などの経済下支え策を打ち出していることなどが、投資家の安心感につながり、5月末まででみると、新興国株式市場は反発しています。
しかし、戻りのペースは緩やか・・・
前述の通り、新興国株式市場は、足元で反発していますが、他資産と比較すると、戻りのペースは緩やかと言わざるを得ません。
新興国株式の重石となる懸念材料・・
新興国株式市場の戻りのペースが相対的に緩やかである背景には、様々な要因があると考えられますが、足元で特に懸念が高まっている問題としては、新興国における新型コロナウイルスの感染拡大や、米中対立の緊迫化などがあると考えられます。
ブラジルやロシアなどの新興国において、新型コロナウイルスの感染拡大ペースが急加速しています。一般に、こうした国々は先進国に比べると、医療体制がぜい弱であることから、今後の拡大状況によっては社会不安が生じたり、さらなる景気の悪化の可能性も懸念されます。
さらに、足元で米中関係が再び緊迫化していることも気がかりです。新型コロナウイルスの感染拡大の責任問題や、中国が香港の反政府的な動きを取り締まる「国家安全法」を制定したことなどを巡って米中が激しく対立しています。また、米国では、中国の通信大手ファーウェイへの輸出規制の強化や金融市場での中国企業のアクセスを制限しようとする動きもみせるなど、産業・経済分野での米中分断の動きも懸念されます。
2020年1月半ばに、米中通商交渉において部分合意に至りましたが、この合意の先行きにも不透明感が高まっています。中国はいち早く経済活動が再開し、回復に向かいつつあるとみられているだけに、米中関係の先行き懸念の高まりは、回復基調に水をさす懸念もあります。
PBRは魅力的な水準にあるも、当面は慎重スタンス
新興国株式のバリュエーション(投資価値評価)水準を、株価純資産倍率(PBR)でみると、足元の反発により一時の水準からは上昇しています。しかし、2020年5月末時点でも、過去平均(1995年9月末~2020年5月末)を下回る水準にあります。
過去の実績では、PBRが低水準である時から5年後の投資リターンは相対的に良好となりました。足元のPBR水準も、魅力的な水準にある可能性も示唆されますが、前述の通り、新興国における新型コロナウイルスの感染拡大や政治情勢など懸念材料も多く、当面は慎重なスタンスで臨むことが重要であると考えます。
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