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- 2020年年初来の新興国株式市場と当ファンドのパフォーマンス
2020年年初来の新興国株式市場は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて下落し、こうした流れの中で当ファンドのパフォーマンスも低迷しました。市場環境によっては、当ファンドの配当利回りに注目したバリュー株投資の手法が市場平均に対して劣後する場合もありますが、「配当」は新興国株式への投資リターンの重要な存在であり、一貫した投資手法の継続が中長期的には良好なリターンにつながると考えています。
2020年年初来は下落となった新興国株式市場
2020年年初来、新興国株式市場を始め世界の金融市場は大きな変動を経験しました。新興国株式市場については、2018年以降の懸念材料であった米中貿易戦争において、2020年1月半ばに両国間における通商交渉で部分合意に至ったことなどを受けて、楽観的なムードもみられ、1月後半には年初来高値をつけました。
その後、中国・武漢で初めての感染が確認された新型コロナウイルスが世界的な感染拡大(パンデミック)となり、中国のみならず世界各国で移動制限や都市封鎖などが実施されるなど、世界の経済や企業業績に対する先行き不安感が急速に高まり、世界の金融市場が大幅に下落する中で、新興国株式も下落しました。
特に、世界経済の低迷により、需要減少が懸念される原油価格については、3月上旬にサウジアラビアなどの石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟主要産油国の間で減産交渉が決裂したことで急落しました。その後、4月半ばに減産合意には至ったものの、世界的な感染拡大による需要ショックは深刻で、原油価格は先物取引において史上初めてマイナスとなる局面もあり、混乱が続いたことから、新興国の中でも特に産油国の経済の先行きに対して懸念が広がりました。
3月後半を底として、足元(5月25日)時点までの市場動向をみると、市場は反発しています。この背景には、米国をはじめ世界各国政府・中央銀行が、経済の下支えに向けた財政出動や金融緩和などを打ち出していることや、欧米などの主要国における感染拡大のペースが鈍化したと見られること、さらに、こうした地域を中心に段階的に経済活動が再開されつつあることなどから、安心材料となっていることなどが考えられます。
グロース株優勢となる環境で苦戦した当ファンド
こうした市場全体の流れを受けて、2020年年初来の新興国インカム株式ファンド(毎月決算型/1年決算型)のパフォーマンス(注)も低迷しました。3月後半を底に、足元で反発の兆しもみられるものの、新興国株式の平均に比べると、緩やかな戻りにとどまっています(注:ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)の分配金再投資後基準価額)。
この背景の1つとして、引き続き先行き不透明感が高い中での反発局面では、希少な成長を求めていわゆる「グロース株」に投資資金が集まりやすい市場環境であったことがあると考えられます。グロース株といわれる企業は一般に、稼ぎ出した利益を配当として株主に還元するより、新たな成長を求めて事業への投資に資金を回すため、無配であったり配当が少額である場合があります。
一方、当ファンドは新興国株式の中でも、配当利回り水準に注目したバリュー株投資の手法をとっています。「グロース株」は配当利回り水準の魅力が乏しいことで、当ファンドの投資対象候補から外れる場合が多くなります。
国別にみると・・・年初来とこれから
足元の当ファンドの国別組入比率をみると、主な特徴として、代表的な新興国株式の株価指数と比べて中国株式の組入比率が相対的に低く、ロシア株式の組入比率が相対的に高くなっています。
2020年年初来で中国株式は、新型コロナウイルスの感染の影響を最初に受けたものの、その後の経済活動の再開も主要先進国に比べて早く、また、困難な環境下でも成長が期待されるeコマース関連やハイテク関連銘柄の株価は比較的底堅い推移をみせていました。当ファンドにおいて、こうした中国のグロース銘柄の保有比率が低かったことは、2020年年初来のパフォーマンスにマイナス寄与となりました。
ロシア株式について、当ファンドでは相対的に組入比率が高くなっています。昨年2019年は、西側諸国の経済制裁の影響を乗り越え、経済の安定化期待などを背景に、ロシア株式は堅調に推移し、当ファンドのパフォーマンスに大きくプラスの寄与をもたらしました。しかし、2020年年初以降は一転、原油価格の急落を受けてロシア経済に対する懸念の高まりなどから、ロシア株式の下落率は相対的に大きくなり、当ファンドのパフォーマンスにマイナス寄与となりました。
中国については、現時点では配当持続性の観点から魅力があるとみており注目しているのが銀行セクターです。一方、ファンドで保有している家電関連などの一部の銘柄には、バリュエーション(投資価値評価)水準の魅力が薄れているものもあり、こうした銘柄については組入比率を引き下げ、よりバリュエーション面で魅力ある銘柄の組入比率を引き上げていく方針です。
ロシア株式については、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が改善していること、個別銘柄のボトムアップでみると、配当利回り水準が魅力的な銘柄が多く存在することなどから注目しており、こうした見方については大きな変更はないと考えています。ただし、足元では見通しが不透明なエネルギー関連や金融などを中心に組入比率を引き下げ、引き続き魅力的な銘柄を選別した上で投資を行っていく方針です。
今後の運用方針~一貫してバリュー株投資、ボトム・アップ手法を継続
世界経済や企業業績の見通しには、依然として不透明感が残ります。新型コロナウイルスの感染拡大についても、主要先進国などでは感染拡大ペースの鈍化などがみられ、「第一波」の終息の兆しもみられます。一方、ブラジルをはじめとした南米やロシア、アフリカなどは今後も引き続き感染拡大の懸念があり、また、新興国では先進国に比べて医療体制が十分でない場合も多く、不安要素は多く残ります。
こうした難しい環境下においても、配当利回りに注目したバリュー株投資の手法を一貫して続けていくことが中長期的なリターンにつながると考えます。また、配当利回り水準の魅力に加えて、収益・財務基盤の健全な企業をボトム・アップでしっかりと選別して投資を行うことが重要であると考えます。
短期的にみると景気サイクルや市場の局面によって、当ファンドがとる投資手法は、相対的に優勢(=良好なパフォーマンスを生み出せる)となる場合、反対に相対的に劣勢となる場合があります。
しかし、2000年以降の新興国株式への投資で得られたトータル・リターンのうち、配当収入は約4割を占める重要な存在でした。配当利回り(もしくは配当)に注目した投資を行うことは、中長期的にみれば、良好なトータル・リターンの獲得につながるものと考えています (※2020年5月25日発行 「新興国企業の配当持続性に期待」も合わせてご参照ください)。
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