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- 新興国金融市場の自由化
一国の経済発展を左右する主な要因の1つとして挙げられるのが、金融セクターの自由化です。自由化を円滑に進めるためには、順序だてて踏むべき段階があり、困難も伴います。そうしたなかでも、多くの新興国では資本効率の改善の余地が大きく、中長期的に金融自由化の進展とともに経済の拡大が期待されます。
新興国金融市場の自由化
一国の経済発展を左右する主な要因の1つとして挙げられるのが、金融セクターの自由化を成功に導く能力です。自由化の中長期的な進展を実現する万能薬のような解決法はありませんが、自由化の過程に必須の要件と、順序だてて踏むべき段階があることは明らかです。
金融の自由化は、新興国の持続的な成長に必要不可欠な要素です。国は、国内に一定の金融資本を有しています。経済成長を実現し、金融システム内の富を増やすためには、金融の自由化によりこうした「資本の価値の総額」が増加する必要があります。
金融自由化が進んでいない金融システムにおいては(下図参照)、主に、政府が銀行を保有しており、民間企業および公共企業体の資金調達に充てられるシステム内の余剰資本を保有しています。こうした状況下では、政府が、システム内の資本の源泉を保有すると同時に管理していることから、資本の配分の観点で、弊害をもたらすと考えられます。政府に収益の水準よりも経済の安定性を重視しようとする誘因があることから、資本の提供が、債務不履行(デフォルト)リスクが最も低い個人や企業に偏る傾向が認められます。
その結果、制約があるなかで行う事業の資本利益率は低いものとなり、高い収益が期待できるもののリスクが高い事業に向けられる資金は不足し、高収益が期待できる事業が拡大しないということになります。このような状況は、全資産を国の保証を裏付けとする国債に投資するようなものです。国債は安全資産ですが、国債のみの投資では効率的な水準の収益をもたらさないとも言えます。
このため、リスクが高くても高い収益が期待できる事業が拡大していくためには、自由化の進展が必要であり、この過程のなかで、個人や企業の債務不履行(デフォルト)リスクは避けて通れないものと考えられます。
新興国の金融改革および金融の自由化をはじめとした金融の発展度合いは全体では先進国に出遅れており、投資の好機の可能性を提供しています(下図参照)。
金融自由化の第一段階
金融自由化の第一段階では、主に、政府が銀行システムの自由化を行います。従って、責任の分離が可能となり、政府が、政策およびシステムの監視を通じて、金融制度全般の安定性の確保に努める一方で、銀行はシステム内の資本利益率の最大化に注力することが可能となります。
銀行セクターの自由化に着手する前に満たされなければならない必須要件には、以下が含まれます。
1 安定的な経済環境
2 物価および金利動向の管理に必須の健全な財政政策及び金融政策
3 システムの監視に必要な規制の枠組みの整備
4 信用査定(借手のリスクの正確な評価)のための水準の設定
更に、公的部門から民間部門への債務の移転、ならびに、かかる移転に起因して生じる可能性のある全ての不良債権の処理計画を策定し、不良債権に関連する過去の判断の責任を民間銀行に負わせないことです。多くの新興国では、こうしたシステムが整備段階で、改善の余地が大きい状況です。
金融自由化の第二段階(最終段階)
金融の完全自由化の第二段階(最終段階)は、通常、国際市場との間の資金の流出入の開放を伴います。こうした状況は、グローバル規模の資金配分を可能とする一方で、通貨の変動等、資本が国外に流出することなどに伴って生じるリスクをもたらす可能性があります。投資循環を通じた民間資本の移動の増加に伴って金融市場の厚みが増すに連れ、証券化や未上場のクレジット商品および当該金融商品の発行など洗練さを増した金融商品や手法が開発されます。
金融自由化は環境・社会・ガバナンス(ESG)にプラスの影響
金融の自由化は、成長目標の実現の他、環境・社会・ガバナンス(ESG)にもプラスの影響を与えます。金融市場の開放は、従来よりも広い範囲での富の創出の機会をもたらします。住宅ローンや投資のために資金を調達する個人や民間企業が増えるにつれて、所得の増加や生活の質の改善がもたらされ、社会移動(社会構造における個人の社会的地位の移動)が生まれます。社会移動の増加は、国民の健康状態を改善し、寿命を延ばす等、直接的な効果をもたらします。
更に、資本の入手に係る透明性と、投資可能な資産が増すに連れて、企業ガバナンスが向上し、汚職などの腐敗が減少していきます。
政府がシステム内の信用の管理役からシステムの監視役に軸足を移すことによって、ヘルスケア、教育、ソーシャル・ファンディング等の戦略的意思決定に、従来以上に集中できる体制が整えられるという恩恵ももたらされます。
ポートフォリオの組入れ
ピクテは、新型コロナウイルスや中国の規制当局による規制強化等、足元の逆風にもかかわらず、新興国全域の構造的成長テーマに変わりがないことを確信しています。当ファンドでは、2021年10月末で金融セクターを35%注1とMSCI新興国株価指数の構成比の約20%に対して、大幅に高い組入比率で保有しています。投資銘柄には、ズベルバンク(ロシア)、KBフィナンシャル・グループ(韓国)等の銀行や招商証券(中国)等の証券会社の他、カスピ(カザフスタン)等、革新的なフィンテック銘柄などが含まれます。
金融セクターは配当利回り水準が高く、バリュエーション(投資価値評価)面でも投資魅力があります。引き続き金融セクターに注目していきます。
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