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インフレ率の上昇で企業の「真価」が問われる理由
田中 純平
2021/05/12

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概要

米国のインフレ圧力は高まり続けている。大規模な財政支出や緩和的な金融政策、新型コロナウイルスのワクチン接種に伴う経済正常化の進展によって、「需要拡大によるインフレ」が起こっているほか、物流網のボトルネックや資源価格の上昇など、「供給不足によるインフレ」も同時進行中だ。企業は今、インフレに対する「適応力」がより一層求められている。



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「ディマンド・プル・インフレ」と「コスト・プッシュ・インフレ」のダブルパンチ

一般的に、需要側に起因したインフレは「ディマンド・プル・インフレ」、供給側に起因したインフレは「コスト・プッシュ・インフレ」と呼ばれる。通常、これらが同時に発生することはまれだが、今回のようなアフターコロナにおける特殊な環境下では、「ディマンド・プル・インフレ」と「コスト・プッシュ・インフレ」が同時並行で進行した。その結果、インフレ率が足元で急激に上昇したと考えられる(図表1)。

ISM仕入価格指数の上昇はインフレ圧力を示唆

米ISM(供給管理協会)製造業とサービス業の仕入価格指数をみると、いずれもリーマンショック前のピークに迫る勢いだ(図表2)。これは、幅広い業種でインフレ圧力が(近年まれに見るペースで)高まっていることを示唆している。また、米名目長期金利から米実質長期金利を差し引いた期待インフレ率(10年ブレークイーブン)も、リーマンショック前後の水準まで上昇していることが分かる(図表3)。市場関係者も今後インフレ率が上昇すると予想している。

企業はインフレから株主の利益を守ることができるのか?

企業にとって仕入価格の上昇は、コスト高を意味する。そのコスト高を販売価格に転嫁(値上げ)できなければ、利益は減少してしまうことになる。そのため、株主の利益を守るためにも、販売価格の値上げは欠かせない。

しかし、すべての企業が値上げを実行できるわけではない。自社の製品やサービスに訴求力が無ければ、容易に顧客離れを引き起こしてしまうからだ。ブランド力や商品開発力、マーケットシェアなど、総合的な競争優位性が求められる。

急激にインフレ率が高まる局面では、インフレに対する企業の「適応力」がより重要になる。顧客から真に必要とされる企業なのか、そして株主利益をインフレから守ることができる企業なのか、その「真価」が問われることになるだろう。


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田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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