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6月米雇用統計で株式市場は最高値更新 利上げ予想に変化は?
田中 純平
2021/07/05

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概要

7月2日に発表された6月米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比85万人増と市場予想の同72万人増を上回った一方、平均時給が前月比+0.3%と市場予想と一致したことから、FRB(米連邦準備制度理事会)による早期テーパリング/利上げ観測が後退したと報じられ、米国株式市場は最高値を更新した。しかし、利上げ予想に今のところ大きな変化は見られない。



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6月米雇用統計が好感され、NYダウ、S&P500、ナスダックはそろって最高値更新

6月米雇用統計の結果は、株式市場が「心地良く」感じられる内容だったのかもしれない。6月非農業部門雇用者数は市場予想の前月比72万人増に対し同85万人増となった一方、平均時給は前月比+0.3%と市場予想の同+0.3%と一致した。これを受けて、米国経済(労働市場)が順調に回復する中で、想定を上回る過度な賃金インフレは見られなかったことから、マーケットが懸念する早期のテーパリング(量的緩和縮小)や利上げ観測が「後退」したと相次いで報じられた。実際、7月2日の米国株式市場はNYダウ、S&P500、ナスダックの3指数がそろって最高値を更新する展開となった(図表1)。

しかし、FFレート先物から算出された利上げ予想に大きな変化は見られない

FF(フェデラル・ファンド)レート先物から算出可能な市場参加者の利上げ(回数)予想を見ると、直近7月2日時点の予想は6月4日時点(6月のFOMC前)の予想と比較して、依然として利上げ観測が高まっていることが確認できる(図表2)。また、その状況はFFレート先物から算出された23年2月FOMCにおける利上げ回数予想の推移を見ても明らかだ。およそ1ヶ月前の23年2月FOMCにおける利上げ回数予想は約0.7回だった。それが、(6月雇用統計を受けて幾分低下したものの)直近は約1.1回と、1回0.25%の利上げが完全に織り込まれている(図表3)。さらに、利上げ観測による期待インフレ率の低下等を背景に、米10年国債利回りも低下している。少なくとも短期金融市場や債券市場からは「早期利上げ観測」が後退したとは言い切れない状況だ。

米10年国債利回りの低下を受けてグロース株優位の展開

グロース株やバリュー株といったスタイル別の騰落率を見ると、7月2日は主に米10年国債利回りの低下を受けてS&P500ピュアグロース株指数(前日比+0.81%)がS&P500ピュアバリュー株指数(同-0.29%)を上回る展開となった。株式市場では、早期テーパリング/利上げ観測が後退したと解釈されたにもかかわらず、債券市場では早期利上げ観測から米10年国債利回りが低下し、それを受けて株式市場でグロース株優位の展開となったことは、マーケットの解釈に「ゆがみ」が生じているとも考えられる。「いいとこ取り相場」が復活している可能性には注意したい。


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田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞歴を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして、主に世界株式市場の投資戦略などを担当。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演。2023年より週刊エコノミスト「THE MARKET」に連載。日本経済新聞ではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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