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- 雇用統計が円安を加速させる可能性
米国では3月の雇用統計が発表される。先行指標の失業保険継続受給件数は新型コロナ禍以前の水準を下回り、労働市場が逼迫状態にあることを示す結果になる可能性が強い。その場合、FRBによる継続的な利上げの観測が一段と補強され、日米の金融政策のギャップに市場の注目が集まるだろう。ウクライナで停戦が実現しても、円安の流れに変化はないと考えられる。
米国の労働市場:労働力の供給が需要に追い付かず
米国の雇用統計は毎月12日を含む週に調査を行うため、3月は6〜12日が対象だ。この週の失業保険継続受給者件数は141万7千件、新型コロナ禍前の2019年末における178万件を既に下回った。また、今年に入っての新規失業保険申請件数は週平均で23万4千件であり、2019年の21万8千件と概ね同水準だ。労働需給の逼迫感が強まった。
それを端的に示しているのが産業別求人数だろう。1月は1,126万人になり、7ヶ月連続で1千万人の大台を超えた(図表1)。2月の失業者は627万人なので、求人が求職者を500万人程度上回っていることになる。
新型コロナ禍を背景として、米国では2020年4月に前年12月と比べ労働力人口が828万人減少した。一方、この間、非労働力人口は799万人増加している。主要都市がロックダウンされるなか、新型コロナ感染のリスクから、年齢の高い層を中心に就業を断念する人が増加したことが背景だろう。
経済活動の再開に伴い、2019年12月対比で見た労働力人口のマイナス幅は縮小、今年2月の段階では64万人だ。これに対して、非労働力人口は依然として378万人多い。
米国経済は新型コロナ禍を乗り切り、巡航速度とも言える年率2%程度の成長過程に回帰した。従って、生産性の向上に加え、労働力人口の増加が必要だ。しかし、高齢層の引退に加え、労働力の供給源であった移民の流入が新型コロナ対策もあり減速、労働力不足に陥ったと見られる。
結果として求人需要が強まり、それは価格に反映されざるを得ない。言い換えれば、賃金上昇率は高止まりが続きそうだ。
日米の金融政策ギャップ:円安・物価高スパイラルのシナリオ
雇用統計の平均時給はコア消費者物価との連動性が強い(図表2)。ウクライナ危機の影響もありエネルギー価格が高騰するなか、平均時給の上昇率が5%を超える状況が続けば、消費者物価上昇率も高水準での推移が予想される。
3月15、16日のFOMCにおいて、FRBは25bpの利上げを行うと共に、参加メンバーが中央値として25bpずつなら2022年中にあと6回の利上げを行うとの見通しを示した。FRBが責任を負うデュアルマンデートのバランスに関し、金融政策の軸足は雇用から物価にシフトしたと言えるだろう。
一方、日銀は日本経済にもインフレの波が押し寄せているにも関わらず、10年国債に関し連続指値オペを実施、異次元の金融緩和を維持することに強い拘りを見せている。しかし、その副反応で為替市場では円安が進み、むしろ輸入物価を押し上げてインフレを加速させかねない状況だ。
ウクライナ危機はトルコを仲介とする和平交渉により新たな局面を迎え、市場ではエネルギー価格安定化への期待感が台頭した。もっとも、3月の雇用統計が米国の労働市場における需要の強さを示す結果になった場合、中長期的な円安・ドル高のトレンドに拍車が掛かる可能性は否定できない。
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