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- 日銀金融政策決定会合、どこに注目すべきか
総務省が発表した10月の消費者物価指数(CPI)は、コアCPIが前年同月比2.3%上昇した。日銀の物価目標である2%を31ヵ月連続で上回った。賃金やGDP成長率も日銀の利上げを概ね後押しする内容だ。日銀は一方で、利上げにより市場が大幅に変動することも回避したいところだろう。そうした中、12月の金融政策決定会合は近づいており、利上げの判断に必要となりそうな国内要因を整理する。
日本10月CPI、日銀注目のコアCPIはこれで31ヵ月連続で2%を上回った
総務省が11月22日に発表した10月の消費者物価指数(CPI)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)が前年同月比で2.3%上昇し、市場予想の2.2%上昇は上回るも、9月の2.4%上昇を下回った(図表1参照)。
生鮮食品およびエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は2.3%上昇し、9月の2.1%上昇を上回った。総合CPIは9月を下回っており、コアコアCPIのみが前月から伸びが加速した。今回のCPIで注目されたサービス価格は前年同月比1.5%上昇と、前月の1.3%上昇を上回った。内訳をみると、一般サービスが1.7%上昇した一方で、公共サービスは1.0%の上昇だった。
10月CPIは政府の補助金など変動要因に注意は必要だが着実な伸び確保
日銀が12月18-19日に開催する金融政策決定会合での利上げの有無について、市場の見方は分かれているようだ。とはいえ、仮に12月がなかった場合でも、来年1月会合では0.25%の利上げに踏み切るとの見方が大勢で、筆者も、現時点では12月もしくは来年1月のどちらかで利上げという見方をしている。
日本の経済、市場環境、並びに日銀のコメントなどを振り返ると日銀が利上げ姿勢を維持していることは明確だろう。ただし、12月会合までに発表される経済指標や米連邦公開市場委員会(FOMC)などを日銀は判断材料に加えると筆者はみており、12月利上げを固めきっていないと考えている。
12月か来年1月会合を判断するうえで重視されそうなのが、7月会合後に見られたような市場変動の回避だろう。ただし、次回以降の会合でより重要なのは利上げの終着点とみている。次の追加利上げで政策金利を0.5%としたなら、その次どこまで利上げを続けるかに市場の関心が高い。
まず、最近の経済指標を振り返る。10月のCPIの主なポイントは次の2点である。
1点目は生鮮食品やエネルギーなどが除かれるコアコアCPIが前月を上回った一方で、他のCPIが鈍化した背景は、23年10月に電気ガス負担軽減額が半減されたためエネルギー価格が上昇した反動で、前年比ではエネルギー価格が24年10月の押し下げ要因となった。これが総合やコアCPIが鈍化した背景の1つだろう。
なお、蛇足ながら、米価格の上昇でコア食料が前年同月比で約4.0%上昇したのはCPI全体の押し上げ要因だ。価格高騰が続く米類に限れば前年同月比で58.9%上昇と、令和の米騒動前の価格とはかけ離れた水準のままである。今後の米の価格がCPIに与える影響には注意が必要だ。
2点目はサービス価格で、10月のCPIで最も注目された。家賃や外食、通信・娯楽関連サービスなどで構成される一般サービスは前年同月比1.7%上昇と、9月の1.8%上昇を下回り、物足りない印象だ。ウェイトが大きい帰属家賃(持ち家に対し家賃を払っているとして算出した賃料)の鈍化がこの背景だが、医療や通信・娯楽サービスなども10月は伸びが鈍った。賃金指標は堅調なだけに、企業の価格設定行動も併せてみる必要がありそうだ。
公共サービスは10月が1.0%上昇と、9月の0.0%を上回った。10月は受信料や保険料の改定などの品目が押し上げ要因だった。
10月のCPIのポイントをまとめると、電気料金やガス代への補助金などが実態の把握を難しくしている面はあるものの、全体の数字は日銀の予想と大差ない(オントラック)とみている。ただし、サービス価格の上昇には若干物足りなさも残ることから、今後の展開が注目されそうだ。
日本の経済成長率は2四半期連続でプラスを確保、持続性が注目される
他の経済指標に目を移すと、15日に発表された7-9月期のGDP(国内総生産)成長率は前期比(年率)で0.9%増と、市場予想の0.7%増を上回った(図表2参照)。民間消費も0.9%増と2四半期連続でプラスを確保した。設備投資などの回復は鈍いが全体として日本の景気に底堅さが見え始めたようだ。弊社では25年の日本の成長率を1.2%増程度と見込んでおり、0.5%程度とみられる日本の潜在成長率を上回る展開が想定されることは、日銀の利上げを後押しする要因だろう。
次に賃金動向を振り返る。毎月勤労統計調査などの賃金統計や24年の春闘が5.33%の賃上げを実現したことが利上げ支持要因であったのは明確だ。今後の注目点は25年の賃金動向だ。連合が10月に公表した25年春闘の基本構想は、5%以上(うちベースアップは3%以上)の賃上げ要求だった。中小企業は6%以上の賃上げを求める方針だ。
一方、経営側からの発表が本格化するのかこれからだが、経団連は「経営労働政策特別委員会報告」で23、24年の大幅な賃上げの実現を25年は「定着」させることを企業の責務と説明している。賃上げの必要性を認識させる内容だが、24年のような賃金の伸びを25年も行うということを指しているのか、それとも経済環境からみて現実的な賃上げ率にとどめ、賃上げ姿勢の維持を重視するという意味なのか判然としない。24年までの賃上げは利上げ支持要因だが、25年の賃上げについては、今後本格化する交渉内容を見る必要がありそうだ。
植田日銀総裁、「時間的余裕は使わない」、「会合毎に判断」を多用
最後に、日銀メンバーの発言を確認する。日銀の7月の利上げ後に、米雇用統計の悪化を受け市場が動揺した。市場の動揺は日銀の利上げが直接の原因ではないとしても、日銀は同様の事態を繰り返したくないと考えているだろう。特に、7月の会合直前まで、市場は9月利上げを見込む声の方が大きかった中での利上げにバツの悪さが残る。日銀は市場との対話の重要性を再認識したのではないだろうか。そのような目線で日銀の最近の発言を振り返る(図表3参照)。
10月31日の会合後の会見で、植田総裁は「時間的な余裕は使わない」という表現は使わないと述べ、円高で生じた利上げの必要性の後退はすでになく、必要なら利上げをする姿勢にシフトしたことを明確にした。
今月に入っても植田総裁は、12月以降の会合では会合毎に利上げの有無を判断する姿勢であることを強調し、利上げ姿勢を維持している。しかし、利上げのタイミングについてはヒントに乏しい。21日のイベントで「12月会合前に多くのデータが出る」と述べたことは、利上げ示唆との見方も市場の一部にあった。確度が高いとまでは言えないが、12月の利上げは、可能性が低くはないだろう。
経済指標や日銀の発言などをトータルに判断すると、現段階では12月か来年1月か決めづらいが、今後発表されるデータや日銀会合直前に開催される12月FOMCが日銀の利上げのタイミングを大きく左右しそうだ。
さらに重要なのは、利上げ到達点だ。日銀は中立金利(景気を刺激も冷やしもしない名目ベースの金利)を、幅を持ってみる必要はあるが、1%~2.5%としている。そこで利上げの到達点を1%とする考えもあるようだが、日本経済がそこまでの利上げに耐えられるのか検討は必要だろう。筆者は利上げの到達点は0.75%にとどまる可能性もあると、考えている。
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