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- 米雇用統計、市場予想を下回るも内容は堅調
米雇用統計の評価に使われる「雇用者数が市場予想を下回ったかどうか」などを単純にあてはめると、非農業部門雇用者数、平均賃金などが市場予想を下回っていることから「弱い」と判断されそうです。しかし、市場では悪い数字ではないとの見方となっています。理由は様々ながら、今回の雇用統計を見るポイントを述べます。
米雇用統計:非農業部門雇用者数は市場予想を下回るが、巡航速度は確保
米労働省が2020年1月10日に発表した19年12月の雇用統計(速報値、季調済)で、非農業部門雇用者数が前月比14.5万人増と、市場予測(約16万人増)、前月(25.6万人増)を下回りましたが、米連邦準備制度理事会(FRB)が巡航速度とみる月10万人程度を上回っています。失業率は3.5%と、市場予想、前月(共に3.5%)に一致しました。この水準は半世紀ぶりの低さとなっています。
一方、平均時給は前月比0.1%増と、市場予想(0.3%)、前月(0.3%)を下回りました。前年同月比でも2.9%と、市場予想、前月(共に3.1%)を下回りました。
どこに注目すべきか:非農業部門雇用者数、ADP、平均賃金、U6
米雇用統計の評価に使われる「雇用者数が市場予想を下回ったかどうか」などを単純にあてはめると、非農業部門雇用者数、平均賃金などが市場予想を下回っていることから「弱い」と判断されそうです。しかし、市場では悪い数字ではないとの見方となっています。理由は様々ながら、今回の雇用統計を見るポイントを述べます。
まず12月の非農業部門雇用者数は14.5万人増と前月を大幅に下回ってはいますが、11月の数字は大手自動車メーカーのストライキの影響で大幅増加となっているため、12月も判断に配慮する必要がありそうです。例えば、19年の前月比増減の平均は17.6万人増で、18年の22.3万人増は下回るものの、巡航速度(新規の労働力を吸収しても失業率を保つ水準)は上回っている水準と見られます。
なお、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は昨年10月に、より速報性と確度の高い雇用者数の推計の必要性に言及しています。可能性として、パウエル議長は給与明細書作成代行会社(ADP)と協力して雇用者数の新たな推計方法を開発していることを紹介しています。労働省の雇用データは代表値の標本で推計するのに対し、ADPは顧客ベースであることなどが推計データの違いの一つの要因と思われますが、これらを活用することで、従来の雇用者データの補完的な推計データが生み出されるかもしれません。
次に、平均賃金は前月比0.1%と伸び悩みました。しかし、前月が上方修正されている点は考慮が必要です。
さらに、平均賃金が上がりにくい要因の一つにセクターによる平均時給の違い(図表1参照)と、セクター別の雇用者数の増減(図表2参照)に注意が必要です。情報技術、公益や金融など平均時給が高いセクターの雇用者数の増加は限定的な一方で、平気賃金が低い小売や娯楽等のセクターが雇用者数を伸ばしている面が見られるからです。
最後に失業率は3.5%と歴史的低水準で、この水準だけでも雇用市場は堅調と判断されるべきですが、変化に乏しいことから何も変わっていないという印象があるかもしれません。しかし、正規雇用を望みながらもパートタイムの職に就いている労働者や、仕事に就きたいと考えているものの積極的に職探しをしていない人を失業者に含めたU6失業率は12月が6.7%と前月の6.9%から改善し、労働省の声明を見ると、U6失業者はこの1年で50万人以上減少しています。
米国経済の底堅さと、金融政策の維持を示唆する内容と見ています。
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