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- パウエル議長が議会証言で語ったこと
今回の議会証言では、主に次の点に注目しました。まず、新型コロナウイルスが世界並びに米国経済と金融政策にどのような影響を及ぼすかです。パウエル議長は判断を下すのは時期尚早と先送りした格好となりました。他には、昨年の短期金利の急変動の抑制を意図した流動性供給の出口戦略を示唆した点なども注目です。
米議会証言:パウエル議長、新型コロナウイルスの影響判断を先送り
米連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は2020年2月11日の下院金融サービス委員会で、半年ごとの議会証言を行いました。パウエル議長は米連邦公開市場委員会(FOMC)は現行の金融政策は経済成長、労働市場が、(対称的な)インフレ目標(2%)を下支えするとの見通しを述べました。そして、この見通しと経済データが継続するなら、現行の金融政策を維持する可能性を示唆しました。
なお、パウエル議長は昨年の米短期金融市場の混乱を受けて開始した流動性供給について、銀行の準備金は潤沢な状態を維持する水準へ継続的に積み上がってきたことから、(流動性供給の手段である)レポオペの積極的な活用を徐々にやめる意向を示しました。また、米財務省短期証券(Tビル)購入についても、目先は続けるものの、徐々に購入を減らす考えを示しました(図表1参照)。
どこに注目すべきか:議会証言、新型コロナウイルス、Tビル購入
今回の議会証言では、主に次の点に注目しました。まず、新型コロナウイルスが世界並びに米国経済と金融政策にどのような影響を及ぼすかです。パウエル議長は判断を下すのは時期尚早と先送りした格好となりました。他には、昨年の短期金利の急変動の抑制を意図した流動性供給の出口戦略を示唆した点なども注目です。
パウエル議長は証言で、中国発の新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済への影響について、金融当局として注視していると述べ、米国および世界の経済を脅かすリスクの中でも関心が高いことをうかがわせました。
ただ、発言内容は新型コロナウイルスの問題を注視しているに留まり、従来の見解を繰り返した印象です。ウイルス感染拡大問題の米経済への影響が深刻化したとの認識までは示しませんでした。公表されている消費などのデータに悪化が見られないということで、データに変化が見られないならば金融政策のスタンス(据え置き)を変えないことが示唆されました。なお、パウエル議長の証言を受け、トランプ米大統領は、米国の政策金利が高過ぎると批判しています。利下げを読み取れない証言であったことが示唆されます。
次に、パウエル議長は短期金融市場を安定化させるために開始した短期国債の購入とレポ取引を徐々に縮小することを示唆しました。積極的なレポ取引を縮小し、準備預金が潤沢と判断したらTビル購入も縮小していく考えを示しました。
これは、FRBが短期金融市場の資金不足を解消するため、昨年10月に開始した短期国債購入(月600億ドル、約6兆5千億円)の縮小、停止を示唆したとも解釈されそうです。パウエル議長は、流動性供給は技術的な対応で、縮小停止に向かうことは金融政策変更を意味しないと強調しています。
ただ、パウエル議長の説明を市場がすんなり受け入れるかは不透明です。パウエル議長は今回の流動性供給は量的金融緩和(QE)でないと繰り返し述べても、株式市場はFRBが流動性供給を拡大して以来、上昇傾向で事実上のQEと見なしている面が見られるからです(図表1参照)。今後も市場との間で難しい会話が求められそうです。
以上の2点以外で、議会証言の中で気になった発言として、中央銀行デジタル通貨(CBDC)については、決定を下していないと述べています。もっとも、日欧中央銀行による共同研究や、中国がCBDCに積極的な中、FRBも独自の研究は進めている模様で、この点についても、今後の展開に注目しています。
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