Article Title
米雇用統計、市場予想を下回るも、最悪はまだ先
梅澤 利文
2020/04/06

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

3月の米雇用統計で、悪化が予想されていた非農業部門雇用者数は市場予想をさらに大幅に下回りました。外食や宿泊等を含むレジャー(娯楽)セクターは市場の想定より早く、雇用を減らしていたのだろうと思われます。今後他のセクターにも雇用調整の広がりが想定されることから、さらなる雇用者の減少、失業率の上昇が見込まれます。



Article Body Text

米雇用統計:雇用市場にも新型コロナウイルスの影響、市場予想よりも悪化

米労働省が2020年4月3日に公表した3月の雇用統計で、非農業部門雇用者数(事業所調査)は前月比マイナス70.1万人と、市場予想(マイナス10.0万人)、前月(プラス27.5万人)を大幅に下回りました(図表1参照)。

家計調査に基づく失業率は4.4%と、市場予想(3.8%)、前月(3.5%)を上回り、雇用の悪化が示されました。

 

 

どこに注目すべきか:非農業部門雇用者数、セクター、失業率

3月の米雇用統計で、悪化が予想されていた非農業部門雇用者数は市場予想をさらに大幅に下回りました。外食や宿泊等を含むレジャー(娯楽)セクターは市場の想定より早く、雇用を減らしていたのだろうと思われます。今後他のセクターにも雇用調整の広がりが想定されることから、さらなる雇用者の減少、失業率の上昇が見込まれます。

まず、非農業部門雇用者数のポイントを3点述べます。

1点目は今回の雇用者の減少は歴史的な出来事だということです。第2次大戦後、同指数が前月比マイナス50万人を超えたのは、戦後の混乱期と、オイルショック後、リーマンショック後と数えるほどしかありません。また、リーマンショックのときと比べて雇用者の減少スピードは急激です(図表1参照)。前例がない局面と言えそうです。

2点目は、想定より早い雇用の減少です。事業所調査である雇用者数の調査対象期間は毎月12日を含む賃金支払期間です。米国が新型コロナウイルス対策として移動などの制限を強めたのは3月後半であったため、非農業部門雇用者数の大幅減は4月のデータに強く反映されると見ていましたが、企業の対応が想定より早かった模様です。

最後に、どのセクターが雇用者を減らしたかを確認すると娯楽セクターが45.9万人減と、全体の約3分の2となっています。娯楽セクターの内訳は、宿泊と外食の合計が44.6万人と大半で、娯楽セクターはその他に芸術関連、アミューズメントなどを含みます。なお、娯楽セクター以外でも、製造業や建設を含む財生産、小売、運輸、ヘルスケア、さらに雇用者数に先行する傾向がある派遣サービスも減少しています。

ただ、減少の程度は娯楽セクターほどではなかった面も見られます。しかしながら、3月後半だけで新規失業保険申請件数が1000万人程度増えたことを考えれば、来月は娯楽以外のセクターでも雇用減少の動きが広がるものと見ています。

次に、失業率です。4.4%と、市場予想を上回る悪化となりました。家計調査に基づく雇用者数が想定よりも減少したためです。米国の3月の労働力人口は約1億6300万人、失業者が約714万人となっています。新規失業保険申請件数の動向から、失業者は今週発表の予想を含めると1500万人程度上乗せが想定されます。また、労働参加率が低下したことから雇用市場から除外された人の増加も懸念されます。結果、失業率は10%を超える可能性が高まったと見て


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


FOMC:市場予想通りの利下げながら全体にタカ派

ECB:声明文はハト派ながら会見はタカ派も匂わす

11月の米CPI、市場予想通りの裏側にある注意点

11月の米雇用統計、労働市場の正常化を示唆

米求人件数とADP雇用報告にみる労働市場の現状

韓国「非常戒厳」宣言と市場の反応