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- 減速感が浮き彫りとなった11月米雇用統計
今回の米国雇用統計の主な特色は次の3点です。雇用の回復は続くも減速が明確となったこと、次に部門別の雇用動向では新型コロナウイルスの影響の明暗が鮮明となったこと、さらに失業率は前月に比べ低下するものの質の改善には程遠く、雇用問題は米国経済の中長期的課題であることが示されたことです。
米国雇用統計:11月の雇用者数はプラスを確保するも大幅に減速、伸び悩みを示唆
米労働省が2020年12月4日に発表した11月の雇用統計において、非農業部門雇用者数は前月比24.5万人増と、市場予想(46万人増)、前月(61万人増と速報値63.8万人増から下方修正)を大幅に下回りました。部門別でも多くのセクターで減少しています(図表1参照)。なお、政府部門は、国勢調査のための臨時雇用の減少(9.3万人)も反映しています。
家計調査に基づく失業率は11月が6.7%となり、市場予想(6.7%)に一致しましたが、前月(6.9%)は下回りました(図表2参照)。なお、労働参加率は61.5%に低下しており、雇用市場からの退出が示唆されています。
どこに注目すべきか:米国雇用統計、ベージュブック、コロナ、失業
今回の米国雇用統計の主な特色は次の3点です。雇用の回復は続くも減速が明確となったこと、次に部門別の雇用動向では新型コロナウイルスの影響の明暗が鮮明となったこと、さらに失業率は前月に比べ低下するものの質の改善には程遠く、雇用問題は米国経済の中長期的課題であることが示されたことです。
まず、非農業部門雇用者数は前月比で24.5万人の増加でした。ちなみに、コロナ前の19年の前月比の増減の平均は約18万人でした。単純な数比べなら「普通」の水準に戻っただけですが、内容が異なります。10月は約61万人増え、9月は約71万人増であったのに比べ減速感は否めないからです。背景として新型コロナの感染再拡大が雇用に影を落としていると見ています。12月月初に公表された米地区連銀経済報告(ベージュブック)でも、(コロナで)売上が伸び悩む中、採用を控える声が数多く報告されているからです。
次に、部門別に雇用動向を見ると、コロナの影響による明暗が浮き彫りとなっています。全体的に前月比の雇用者数は減速となっています。特に小売は前月比でマイナスとなっており、(コロナの影響で)実店舗からオンラインに売上形態がシフトする中で採用は抑制されています。娯楽部門では大半を占める飲食サービスがマイナスとなっています。また娯楽に含まれる宿泊サービスも苦戦しています。
一方で、運輸・倉庫は、宅配業(8.2万人増)や倉庫保管業(3.7万人増)など、コロナ感染で伸びが期待されるオンラインショッピングのセクターにけん引され堅調でした。
筆者が最も気にしているのは長期失業者の増加や、労働参加率の低下です(図表2参照)。今回失業率は6.7%に低下しましたが、その背景が雇用市場からの退出、平たく言えば働くことをあきらめた人が増えた結果だとしたならば改善とはいえないからです。労働参加率は、従来女性の労働参加が大きな要因でしたが、働き盛りの男性にも低下が見られるなど、新たな側面を見せはじめています。
米国の新型コロナの感染再拡大に改善が見られず、来月の雇用統計の悪化も懸念されます。しかし市場は追加財政政策がまとまりやすくなったことに重点を置き、米国債市場では利回りが上昇(価格は下落)などが見られました。ワクチン開発の進展など様々な要因がある中、景気動向とのバランスに絶えず目配せする必要がありそうです。
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