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- ドイツ総選挙は何を語るか
メルケル首相の後任を決めるとも言われる独総選挙は選挙前の世論調査どおり僅差ながら社民党が第1党と見られます。しかし、いずれの政党も過半数に達せず、後任選びは連立交渉次第の展開です。前回の選挙では内閣発足まで半年程度かかりましたが、今回の連立交渉も長期化を覚悟する必要があるかもしれません。
ドイツ総選挙:メルケル首相のCDU/CSUが第2党に、今後の連立交渉が注目される
ドイツ(独)連邦議会選挙(総選挙)が2021年9月26日に投開票されました。第1党となったのは中道左派のドイツ社会民主党(SPD、社民党)でした(図表1参照)、メルケル首相の所属するキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)は僅差で第2位となりました。
社民党が第1党となるのは16年ぶりです。ただ、いずれの政党も過半数には及ばず、誰が後継首相になるかは連立協議に委ねられることとなりました。
どこに注目すべきか:独総選挙、メルケル首相、連立交渉
メルケル首相の後任を決めるとも言われる独総選挙は選挙前の世論調査どおり僅差ながら社民党が第1党と見られます。しかし、いずれの政党も過半数に達せず、後任選びは連立交渉次第の展開です。前回の選挙では内閣発足まで半年程度かかりましたが、今回の連立交渉も長期化を覚悟する必要があるかもしれません。
なお、独の選挙制度は小選挙区と比例代表の併用制であることや足きり(得票率が5%を下回る場合など)ラインで議席が配分されないこともあるため最終的な議席数は未定です。暫定最終結果の得票率をベースに話を進めます。
まず、得票率から今回の選挙の特色を述べると右派が得票を減らす一方で、左派がその受け皿となっています。中道右派のCDU/CSUと極右が前回から得票を減らしています。
CDU/CSUの苦戦は今日のヘッドラインの21年3月17日号においてドイツの地方選挙のレポートの中でも指摘しています。CDU/CSUが苦戦した背景は当時のドイツのワクチン接種の遅れなど新型コロナウイルス対策への不満があげられます。また、CDU/CSUラシェット党首の評価は当時から芳しくありませんでした。さらに、6月にドイツ西部の洪水被災地において笑顔で談笑する姿は厳しい批判を受けました。
極右のドイツのための選択肢は前回の選挙では、シリア内戦などによる難民問題が追い風となりましたが、今回の選挙では難民問題への関心は低かったと見られます。
反対に左派政党には追い風が吹いたと見られます。与党が減らした票の受け皿として社民党に票が流れた面と、環境問題への意識の高まりを受け緑の党が票を伸ばしました。しかし、ベーアボック党首が率いる緑の党は一時政党別支持率で首位に躍り出る局面もありましたが、自らの経歴詐称疑惑で勢いは低下しました。それでも気候変動対策などへの訴えが前回から得票率を伸ばした要因と見られます。
今後の焦点は連立交渉となります。環境政党の緑の党と、親ビジネス政党の自由民主党(FDP)の組み合わせが交渉の鍵となりそうです。
連立交渉で実現可能性のある組み合わせを考えます。条件は3党以内の組み合わせであること、連立した党の得票率の合計が50%を超えること、かつ大連立(SPDとCDU/CSUの連立)はお互い消極的であることを考慮すると、主な組み合わせとして以下が候補となります(なお、ドイツのための選択肢はいかなる連立組み合わせからも除外)。
①社民党+緑の党+FDP ②CDU/CSU+緑の党+FDP が考えられます。仮に風向きが変わり大連立を含めれば
③社民党+CDU/CSU もしくは ④社民党+CDU/CSU +FDP という組み合わせも考えられますが、現段階での可能性は低いと思われます。CDU/CSUは第2党として連立するなら下野することを選択する意向と思われるからです。
市場でも①の組み合わせを予想する声が大きいように思われます。接戦とはいえ社民党が第1党であったこと、選挙前から社民党は左派の緑の党との連立に関心を示していたことなどがあげられます。
しかし環境重視で財政拡大を指示する緑の党と、親ビジネスで緊縮財政を支持するFDPと政策で妥協が図れるかは不透明です。前回の選挙では連立交渉に時間がかかったのも、前回は第1党であったCDU/CSUが②の組み合わせで連立を模索したものの、緑の党とFDPが税制や環境政策で妥協できなかったことが背景です。①の組み合わせが有力ながら、FDPのリントナー党首は②の組み合わせが好ましいとの考えを持っているようです。連立交渉の行方は幅を持ってみる必要がありそうですが、交渉が長期化した場合のドイツ政治の空白リスクには注意が必要と思われます。
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