Article Title
11月FOMCで話題となりそうなこと
梅澤 利文
2021/10/25

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー

概要

11月2-3日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催予定です。FOMC参加者が発言を控える(ブラックアウト)期間を前に、主なコメントを振り返るとテーパリングについては年内開始がコンセンサスとなっています。一方、利上げ時期についてはインフレ見通しの違いなどを反映してバラツキが見られます。さらに、FOMCと市場のインフレ見通しにもズレがあるようです。



Article Body Text

FOMC:11月FOMCを前に当局からのコメントに注目が集まる

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は2021年10月22日、南アフリカ準備銀行(中央銀行)主催のパネル討論会で、資産購入のテーパリング(段階的縮小)開始へと順調に向かっていると述べました。また経済が概ね想定通りに展開すれば、22年半ばまでにテーパリングは完了する見通しだと従来の見解を繰り返しました(図表1参照)。

インフレ見通しについては従来の想定より長期に及ぶ可能性が高く、来年もしばらく続きそうだと指摘しました。その上で、供給面の制約の改善、雇用の伸びの加速(労働不足の解消)に伴い、インフレ率は低下するとも述べています。

どこに注目すべきか:FOMC、インフレ見通し、期待インフレ、利回り

11月2-3日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催予定です。FOMC参加者が発言を控える(ブラックアウト)期間を前に、主なコメントを振り返るとテーパリングについては年内開始がコンセンサスとなっています。一方、利上げ時期についてはインフレ見通しの違いなどを反映してバラツキが見られます。さらに、FOMCと市場のインフレ見通しにもズレがあるようです。

まず、債券購入政策の縮小となるテーパリングについては11月のFOMCで開始決定が見込まれます。開始なのか、それとも告知なのかの違いは誤差の範囲と思われます。ただテーパリングの終了時期については、タカ派(金融引締めを選考)のセントルイス連銀ブラード総裁など一部が早期終了を求めています。もっとも大半のFOMC参加者はテーパリングの来年半ばでの終了を支持していると見られます。

反対に、FOMC参加者の間で見方が分かれるのは利上げ時期です。11月FOMC以降の最大の注目点と見られます。利上げについてFOMC参加者の認識の違いが際立つのは、利上げ開始時期などです。一つの目安は22年末までの利上げ開始を想定するか、それとも23年以降かにより大別されます(24年を想定する参加者は外れ値)。もっとも、足元では22年に複数回の利上げを示唆するなど利上げに傾く参加者の声が強まっているようです。また「22年末か、23年開始を想定」する参加者も見られますが、恐らく当初の23年開始支持に迷いが生じたものと見られます。

この背景としてインフレ懸念の高まりがあげられます。市場のインフレ予想を反映する期待インフレ率は足元上昇傾向です(図表2参照)。FOMC参加者の最近の発言でも、期待インフレ率上昇の放置はリスクとの考えが伺えます。

なお、パウエル議長などFOMCの執行部は足元のインフレ率上昇は一過性との姿勢を維持していますが、本当にインフレ懸念がないのか、この数ヵ月の物価動向などが判断の分かれ目と考えるFOMC参加者が大半となっています。

一方、市場の認識とはズレがあり政策金利の見通しを反映して2年国債利回りは急上昇しています。市場が織り込む来年の利上げ回数を先物価格やスワップレートなどから判断すると既に来年末まで2回分の利上げを織り込んでいます。利上げはまだ先の話しながら、FOMC内、もしくはFOMCと市場にズレが見られます。この認識の相違はほぼインフレに対する見方だけに今後数ヵ月のインフレ動向が重要となりそうです。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


米CPI、インフレ再加速懸念は杞憂だったようだが

注目の全人代常務委員会の財政政策の論点整理

11月FOMC、パウエル議長の会見で今後を占う

米大統領選・議会選挙とグローバル市場の反応

米雇用統計、悪天候とストライキの影響がみられた

植田総裁、「時間的に余裕がある」は使いません