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- FOMC、今はとにかくタカ派姿勢
注目の米FOMCでの利上げ幅は大方の市場予想通り0.75%でした。一方、来年利下げがないと仮定した場合の政策金利の最高到達レート(ターミナルレート)は約4.6%で、これまでの想定をやや上回る水準とみられるなど、全体にタカ派的なトーンでした。ただし、将来的な利上げペース減速の兆しもみられるなど、今後のデータ次第では、タカ派度合いの調整も考えられそうです。
9月FOMC:通常の3倍となる0.75%の大幅利上げを決定、タカ派姿勢を継続
米連邦準備制度理事会(FRB)は2022年9月21日まで開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で大方の市場予想通り政策金利のフェデラルファンド(FF)金利を0.75%引き上げることを決定しました。0.75%の大幅利上げは3会合連続となります。
声明と同時に公表されたFOMC参加者のFF金利見通しを示す最新の金利予測分布図(ドットチャート)によれば、当局者らは政策金利について今年末までに約4.4%、23年末の水準を4.6%と見込んでいます(図表1参照)。
どこに注目すべきか:FOMC、ドットチャート、犠牲、失業率、引き締め
FRBのパウエル議長は、FOMC後の会見で、自身のスタンスは8月末のジャクソンホール会議と変わっていないことを示唆しています。インフレ抑制が最優先課題であることから、今回のFOMCはタカ派(金融引き締めを選好)姿勢となっています。このことは、ドットチャートや、経済予測(図表2参照)に次の点で示されていると見ています。
まず、ドットチャートによると、22年末の政策金利の水準が約4.4%と、前回の3.4%から1%程度引き上げられており、より引き締め的な水準となったことが示されました。8月の米消費者物価指数が発表される前、市場は22年末の政策金利の水準を概ね4%と見込んでおり、年内残り2回(11月と12月)の利上げ幅の想定が合計で0.5%程度切り上げられました。
来年末の政策金利水準も約4.6%に引き上げられています(図表2参照)。また、23年末のドットチャートの分布をみると前回は2.9%~4.4%まで比較的広い範囲に予想が分布していたのに対し、今回の23年末の分布はFOMC参加者の予測の中央値である4.6%前後の狭い範囲に(1人独特な予想を除けば)収まっています。来年末の政策金利の水準についても、FOMC参加者の間でインフレ抑制的な水準でのコンセンサスが形成されつつあるように伺えます。
FOMC参加者の経済予測にもタカ派度合いの強さが見られます。金融引き締め的な政策による経済への「犠牲」が示されているからです。例えば、22年のGDP(国内総生産)成長率は0.2%と前回から大幅に引き下げられています。また、失業率は23年の予測を4.4%と、前回の3.9%から引き上げました。前回の予測では3.9%と、足元の失業率(3.7%)と大差なく、利上げの痛みは限定的といった予測が示されていただけに、今回は、犠牲を伴うことが明確に示された格好です。
FOMCの発表を受けた米国債市場の反応を見ると、政策金利の動向を反映しやすい2年国債利回りは上昇した一方で、景気などの影響も受けやすい長期(10年)国債利回りは小幅ながら低下する局面もありました。タカ派姿勢の一方で、利上げペースが今後減速する兆しも見られたためと思われます。例えば、22末まで、1.25%引き上げ余地が示唆されていますが、1%以下を支持する参加者も9名以上おり、パウエル議長も議論があったことを認めています。そのうえ、1.25%の引き上げなら11月0.75%、12月0.5%の利上げ、1%なら両月ともに0.5%の利上げが見込まれます。いずれの場合であっても、9月の利上げ幅0.75%を下回る月が年内にあり、利上げペースの減速が見込まれます。また、23年の失業率の上昇幅などは景気後退を意識させる水準です。
インフレ抑制を最優先にFRBはタカ派姿勢を前面に金融引き締めを継続するとみられます。ただ、景気への配慮が徐々に見え隠れする展開も想定されそうです。
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