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メキシコ中銀の金融政策運営事情
梅澤 利文
2022/11/09

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概要

メキシコペソは、新興国通貨の中で、年初で見て米ドルに対し上昇している数少ない通貨です。米国金融政策を意識したメキシコ中銀の高金利政策がペソを支えた主な背景とみられます。ただし、米国が利上げペースを減速するとの観測が高まる中、メキシコ中銀も、11月の会合でのサプライズは考えにくいものの、利上げ減速の機会をうかがっているように思われます。




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メキシコ中央銀行:市場は9月に続き、4会合連続となる大幅利上げを予想

米メキシコ銀行(中央銀行)は2022年11月10日に金融政策決定会合の開催を予定しています。市場では政策金利を9.25%から0.75%引き上げて10.00%にすることが予想されています(図表1参照)。

なお、メキシコ中銀は前回(9月29日)の会合では国内で加速するインフレ(図表2参照)や米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めを受け、3会合連続となる0.75%の利上げを全会一致で決定しています。

どこに注目すべきか:メキシコ中銀、隔週CPI、FOMC、利上げペース

メキシコ中銀は11月10日の金融政策決定会合で0.75%の利上げを決定する可能性は高いとみられます。市場を見ても、政策金利を0.75%引き上げて10.0%とする以外の予想は見当たらない状況です。通貨ペソはメキシコ中銀の高金利政策を受け対ドルで上昇傾向です。主要新興国の対ドルレートを年初来で見てみると、対ドルでプラスを確保できているのはブラジルのレアル、政府による規制があるため例外的ですがロシアのルーブル、メキシコペソなどに限られています。

メキシコ中銀が大幅利上げを維持するとみる理由を確認したうえで、変化の兆しの可能性にも言及します。

まず、大幅利上げを維持する理由として、メキシコのインフレの高止まりが挙げられます。メキシコの9月の総合消費者物価指数(CPI)は前年同月比で8.7%上昇と8月から横ばいで、頭打ちのようにも見られます。しかし、変動が大きいエネルギーや食料品などを除いたコアCPIは依然上昇傾向です。メキシコは隔週でCPIが公表されており、前回は10月24日に発表されています。この隔週CPIの前回分は次の10月CPIの先行指標として参照されます。隔週のCPIによると総合CPIは減速したものの、コアCPIは前年同月比で8.44%(前月は8.28%)と上昇しています。コアCPIには上昇余地があると見られます。

2番目の理由として、メキシコの金融政策に影響力のある米連邦公開市場委員会(FOMC)で11月も0.75%の利上げが決定されたことです。仮に米国より小幅な利上げ幅とした場合、通貨ペソの下落圧力となり、物価には上昇圧力となることが懸念されます。

3番目の理由として、国内需要は堅調であることも挙げられます。10月末に発表された7-9月期のGDP(国内総生産)成長率は前年同期比で4.2%増と市場予想の3.3%増、前月の2.0%増を上回りました。メキシコ中銀は昨年6月から利上げを継続していますが、景気は底堅さを見せています。

もっとも、メキシコ中銀が利上げを支持してきた要因の中に、今後利上げペースを減速する要素も見られます。例えば、堅調だった7-9月期のGDPは内容を見ると、コロナ禍からの経済活動再開に伴う底上げもあり、GDP成長率の持続性には懸念も残ります。

恐らく、利上げペースに影響を及ぼすのはFRBの利上げペースの減速と思われます。市場では12月のFOMCでFRBが利上げペースを0.5%に減速するとの見方が優勢となっています。メキシコ中銀の12月の会合は12月のFOMC直後に設定されており、結果を参考にすると見られます。インフレの落ち着きは課題ながら、メキシコの政策金利は足元のインフレ率を超えており、物価抑制的な水準と見られます。問題は利上げ期間ですが、メキシコの銀行間金利(TIIE)市場で政策金利の織り込みを見ると、12月には利上げペースが減速し始め、来年春頃が利上げの到達点と見られそうです。



梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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