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- バイオ|パフォーマンスの改善が続くバイオ医薬品株式の注目ポイント
● 2022年5月以降、バイオ医薬品株式のパフォーマンス改善が続く
● 景気先行きに対する懸念が高まる中、ディフェンシブ性が注目される可能性
● 過去平均に比べ低水準にあるバリュエーションと回復してきたM&Aの動き
2022年5月以降、バイオ医薬品株式のパフォーマンスは改善
バイオ医薬品株式の代表的な指数であるナスダック・バイオテクノロジー指数は、2020年5月以降、米国株式(S&P500株価指数)に対してアンダーパフォームが続いていましたが、2022年5月以降、バイオ医薬品株式の米国株式に対する相対パフォーマンスは改善しています(図表1参照)。
この背景には、米国株式に対してアンダーパフォームが続いたことでバイオ医薬品株式の相対的な割安感が高まっていたことなどがあると考えられますが、今後さらにパフォーマンスをけん引する要因となる可能性のあるポイントについて紹介していきます。
危機的局面でも堅調だったバイオ医薬品企業の売上高
2022年に世界の主要中央銀行は高進するインフレを抑制するため、金融政策を大きく転換し、積極的な利上げを実施してきたことから、足元、景気や企業業績の先行きに対する懸念が高まっています。
バイオ医薬品企業は生活に欠かせない医薬品を提供しているため、業績が景気変動の影響を受けにくい特性(ディフェンシブ性)があります。ITバブル崩壊やリーマンショック、新型コロナショックといった経済危機時においても、バイオ医薬品企業は売り上げを伸ばしてきました(図表2参照)。
景気の先行き不透明感が高まっている現在のような市場環境において、ディフェンシブ性の高いバイオ医薬品企業の株式は、注目を集める可能性があるとみています。
新薬開発が成長ドライバー
バイオ医薬品企業は、これまで画期的な新薬を開発することで成長を続けてきましたが、今後も画期的な新薬の開発が重要な成長ドライバーであることに変わりありません。
足元、様々な領域で様々な新薬の開発が進められていますが、直近で最も注目を集めていたアルツハイマー病の治療薬については、バイオジェン(米国)がエーザイ(日本)と開発していたレカネマブが2023年1月6日に米食品医薬品局(FDA)から承認を受けたことで大きな進展がありました。さらにイーライリリー(米国)やロシュ・ホールディング(スイス)も開発を進めており、高齢化の進展で罹患者数の増加が見込まれるアルツハイマー病の治療薬については引き続き注目を集めるものと考えます。
また2022年12月には、マドリガル・ファーマシューティカルズ(米国)が有効な治療法が確立されていない非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療薬候補について良好な治験結果を発表し、2023年第1四半期にもFDAに承認申請を行う見通しとなりました。NASHは日本国内だけで200万人の患者がいるといわれており、同社の新薬に対する期待が高まっています。
他にも肥満やがんなど様々な疾患に対する治療薬の開発が進んでおり、今後の動向が注目されます。
PBR(株価純資産倍率)は過去20年平均を下回る水準
バイオ医薬品企業は、有望なパイプライン(新薬候補)を保有しているものの、製品化されておらず、利益を上げていない企業が多く存在しており、バイオ医薬品株式のバリュエーション(投資価値評価)はPER(株価収益率)では測りにくい面があります。そのためPBR(株価純資産倍率)を使ってバリュエーションをみると、バイオ医薬品株式の足元のPBRの水準は、過去20年平均を下回り、過去10年でも最も低い水準の近辺にあることがわかります(図表3参照)。
一方、米国株式のPBRは、最も高かった2021年末頃よりは低下しているものの、依然として過去20年平均を大きく上回る水準にあります。
現在のPBRの水準でみると、米国株式に比べバイオ医薬品株式は相対的に割安な水準にあるといえます。
バイオ医薬品企業をターゲットとするM&Aは回復
2022年のバイオ医薬品企業をターゲットとしたM&A(合併・買収)を振り返ると、総額では好調だった2018年、2019年には及びませんでしたが、2010年以降で4番目に高い水準となりました(図表4参照)。
アムジェン(米国)によるホライゾン・セラピューティクス(米国)の買収(2022年12月、278億米ドル規模)やファイザー(米国)によるバイオヘブン・ファーマシューティカル(米国)の買収(2022年5月、116億米ドル規模)などの大型案件が見られたほか、件数についても2010年以降で2番目に多くなりました。また、買収時に上乗せされる買収プレミアムの平均も2022年は90.4%と過去の実績でみても高水準でした。
主力の治療薬の特許切れなどに直面する大手医薬品企業や大手バイオ医薬品企業にとって、バイオ医薬品企業をターゲットとしたM&Aは、有力な治療薬やパイプライン(治療薬候補)、技術が獲得でき、成長の継続や主力医薬品の特許切れの問題を解決する有効な手段の一つとなっています。
一方で、買収の際には市場価値に上乗せされた価格が提示されることが多く、その場合、買収されたバイオ医薬品企業の株価は大きく上昇します。またM&Aが活況となれば、今後、M&Aのターゲットとなる可能性が高いとみなされたバイオ医薬品企業にも投資家の注目が集まり、バイオ医薬品株式市場全体のパフォーマンスを押し上げる要因になると考えます。
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