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- iTrustバイオ|2023年のバイオ医薬品企業をターゲットとしたM&Aの総額は1,200億米ドルに迫る
●2023年のバイオ医薬品企業をターゲットとしたM&Aは堅調に推移 ~ 買収金額の総額は1,200億米ドルに迫る
●大手医薬品企業にとって、バイオ医薬品企業をターゲットとしたM&Aは、有力な治療薬やパイプライン(治療薬候補)獲得のための手段のひとつ
■2023年のバイオ医薬品企業をターゲットとしたM&Aは堅調に推移 ~ 買収金額の総額は1,200億米ドルに迫る
2023年のバイオ医薬品企業をターゲットとしたM&A(合併・買収)は堅調に推移し、2023年12月20日時点のM&Aの買収金額の総額は、大型の案件が成立したこともあり、2018年、2019年に次ぐ1,200億米ドルに迫る水準となっています。また取引件数についても、2021年、2022年に次ぐ266件となっており、買収金額、取引件数ともに2011年以降で3番目に高い水準となっています(図表1参照)。
図表2は、2023年に発表されたバイオ医薬品企業をターゲットとした主なM&Aの案件を示したものです。買収総額が約430億米ドルにのぼるファイザー(米国)によるシージェン(米国)の買収をはじめ、メルク(米国)によるプロメテウス・バイオサイエンシズ(米国)、アッヴィ(米国)によるイミュノジェン(米国)など3件が買収総額100億米ドルを超えるなど、複数の大型買収案件が成立しましたが、これらの案件の買収企業はいずれも欧米や日本の大手医薬品企業でした。
■ 大手医薬品企業にとって、バイオ医薬品企業をターゲットとしたM&Aは、有力な治療薬やパイプライン(治療薬候補)獲得のための手段のひとつ
主力の治療薬の特許切れなどに直面する大手医薬品企業や大手バイオ医薬品企業にとって、バイオ医薬品企業をターゲットとしたM&Aは、有力な治療薬やパイプライン(治療薬候補)、技術・知見が獲得でき、成長の継続や主力医薬品の特許切れの問題を解決する有効な手段の一つとなっています。
一方で、買収の際には、市場価値に買収プレミアムが上乗せされた価格が提示されることが多く、その場合、買収されるバイオ医薬品企業の株価は大きく上昇します。またM&Aが活況となれば、今後、M&Aのターゲットとなる可能性が高いとみなされたバイオ医薬品企業にも投資家の注目が集まり、バイオ医薬品株式市場全体のパフォーマンスを押し上げる要因にもなります。
■ 大手医薬品企業によるバイオ医薬品企業の買収例:「ヒュミラ」の特許切れに直面するアッヴィ
米国の大手医薬品企業であるアッヴィは、主力の関節リウマチや乾癬、潰瘍性大腸炎などの治療薬である「ヒュミラ」の特許切れ問題に直面しています。「ヒュミラ」の2022年度の売上高は212.37億米ドルで、アッヴィの全売上の36.6%を占めていましたが、今年(2023年)に特許が切れ、既に他社よりバイオシミラー(バイオ後続品)が発売されていることから、今期(2023年度)の売上高は143億米ドル程度まで減少すると市場では予想されています注。 注:ブルームバーグ集計アナリスト予想の平均
このような厳しい状況を打開するため、アッヴィは、2023年11月30日に「抗体薬物複合体(ADC)」によるがん治療薬を開発するイミュノジェン(米国)を101億米ドルで買収することを発表し、がん領域を強化したことに続き、2023年12月6日にはパーキンソン病や統合失調症の有望なパイプラインを有しているセレベル・セラピューティクス(米国)の買収(約87億米ドル)も発表するなど、積極的なM&Aの実施により事業基盤の多角化、強化を図っています。
欧米や日本の大手医薬品企業および一部の大手バイオ医薬品企業の中には、アッヴィ同様、近く主力治療薬の特許切れを迎える企業が多く存在しており、その対応策としてバイオ医薬品企業をターゲットとしたM&Aは今後も継続するものと考えます。
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