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エネルギー危機で再認識されるエネルギー転換の重要性
2021/11/15

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概要

2021年10月31日から11月13日にかけて英国グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では2050年までに世界の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするための方針が議論されました。他方、備蓄の少なさなどから天然ガスなど化石燃料の価格は急騰しており、各国の政策担当者の頭を悩ませています。このような状況はエネルギー転換の重要性をさらに高めるものと考えます。



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クリーンエネルギーによるエネルギー源の多様化の重要性

現在の化石燃料の価格高騰は、クリーンエネルギーなどを含む多様なエネルギー源による電力の供給体制の構築が重要であることを私たちに再認識させました。

ここ数年、太陽光や風力などのクリーンエネルギーによる発電が大きく成長していますが、欧州連合(EU)のエネルギー源は現在も70%以上が化石燃料(石炭、石油、天然ガス)で構成されています。EUの天然ガス輸入量の4分の3以上を4つの国(ロシア、ノルウェー、アルジェリア、カタール)に依存しており、そのうちロシアが約40%を占めています(出所:ユーロスタット)。

このような状況は、特定のエネルギー源や国への依存度を軽減し、エネルギーの独立性を確保するためには、太陽光、風力などによるエネルギーの現地供給とエネルギー貯蔵を強化することが重要であることを明確に示しています。

環境対策の面からも不可欠なクリーンエネルギーへの転換

一方、気候変動への最悪の影響を避けるためには、早急に化石燃料からクリーンエネルギーに移行する必要があることは、科学的にも明らかとなっています。

国際エネルギー機関(IEA)が最近発表した「World Energy Outlook」によると、2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量のネットゼロを達成するためには、年間のクリーンエネルギー容量の増加量を現在の4倍に増やす必要があるとしています。また、カドリ・シムソンEU委員(エネルギー担当)は最近のスピーチで、「私たちが(電力やガスの料金など)エネルギー価格の高騰に直面しているのは、気候変動対策のせいでも、クリーンエネルギーが高価だからでもなく、化石燃料の価格が高騰しているからなのです。私たちは、グリーンエネルギー(再生可能エネルギー)への移行を遅らせるのではなく、加速させる必要があります」と語っています(出所:欧州委員会)。

相対的に割安なクリーンエネルギー

エネルギー転換によってクリーンエネルギーの普及が進むと、化石燃料の供給が制限されることで化石燃料の価格が上昇し、インフレ要因となるのではないかという懸念があります。しかしクリーンエネルギーは過去10年間で大幅にコストが低下し、化石燃料による発電と遜色ない水準となっています(図表1参照)。

また風力や太陽光などはエネルギー源が基本的に「無料」であることも重要な点です。

エネルギー転換の初期段階では、エネルギー価格が大きく変動することがあるかも知れませんが、クリーンエネルギー発電とエネルギー貯蔵を増やすことは、長期的にはエネルギー・コストを引き下げる最善の方法であるといえるでしょう。

エネルギー貯蔵の重要性

風力発電や太陽光発電においては風が吹かない、太陽が出ないなど天候の変化がエネルギー供給量の変動を引き起こす要因となります。

そのためエネルギー転換を進める中で、短期および長期のエネルギー貯蔵体制の構築・開発が最重要課題となります。短期の蓄電ニーズは、すでに電力会社規模のバッテリーで満たすことができます。また、現在建設中の太陽光発電プロジェクトでは、クリーンエネルギーの日々の発電サイクルをスムーズにするために、独自のバッテリー蓄電設備を備えるケースが増えています。長期のエネルギー貯蔵は現在も課題となっていますが、この分野では解決策が生まれつつあります。

近い将来においては、天然ガスが一時的な解決策としての役割を果たすかもしれませんが、長期的には揚水発電、バイオメタン、e-gas(メタンガス)、グリーン水素などの低コストでCO2などの排出のない代替的なエネルギー貯蔵源が、CO2排出ネットゼロの目標の達成に貢献すると考えます。

エネルギー効率の改善が果たす重要な役割

現在のエネルギー危機やエネルギー転換の議論は、供給側(エネルギー源)に焦点が当てられ、需要側については見落とされがちです。エネルギー効率とスマート・デマンドレスポンス・システムは、エネルギーシステムにおける供給と価格の変動を管理し、全体的なエネルギー需要を安定させる重要な方法であると同時に、供給と電力価格の変動にユーザーが対応できるようにすることで、製造業者や居住者のエネルギーコストを引き下げることにつながります。燃料費の高騰に加えて、電力・ガス料金も上昇している状況では、システム全体やコストの観点からも、エネルギー効率を高めることの重要性はますます高まっています。

まとめ

クリーンエネルギーへのエネルギー転換の道のりには、さまざまな問題がありますが、経済面、環境面でその必要性が明らかになってきています。そして現在のエネルギー危機は、よりクリーンで、より安価で、そしてより安定したエネルギーシステムを望むならば、エネルギー転換が必要であることを示しています。

クリーンエネルギーへの転換を支援する政府や産業界の動きは、今後ますます活発になると予想されます。また、再生可能エネルギー、送電網や電気自動車用のバッテリー、エネルギー効率の高い技術など、多くの環境技術のコストが低下し、経済性が向上していることもあり、クリーンエネルギー関連への投資機会はますます拡大していくものと考えます。

※当レポートは、ピクテ・グループの海外拠点が作成したレポートをピクテ投信投資顧問が翻訳・編集したものです。



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