- Article Title
- 試金石となるオミクロン型
世界的に新型コロナの変異種であるオミクロン型の感染が急拡大している。ただし、デルタ型などに比べ毒性が弱まり、重症化率は低下している模様だ。日本も感染第6波は避けられないが、ワクチン接種の進捗に加え、軽症者・中等症者向け経口治療薬の効果も期待できる。オミクロン型は、新型コロナ禍を乗り切り、経済活動を正常化する上での重要な試金石になるだろう。
南アフリカ:確認された毒性の低下
昨年12月28日、南アフリカ国立感染症研究所(NICD)とプレトリア大学の研究グループは、『国際感染症ジャーナル』にオミクロン型が世界で初めて確認されたツワイネ市の大病院における調査結果を発表した。それによると、入院患者の死亡率は既存型の21.3%に対しオミクロン型は4.5%で、ICUでの治療率も入院患者の4.3%から1.0%へ低下している。
南アフリカ全体では、7日移動平均による従来の感染者のピークは昨年7月8日の1万9,956人、死者は同7月25日の417人だった(図表1)。今回の感染第4波では、新規感染者が昨年12月17日の2万3,437人を天井に減少に転じるなか、死者は現段階で今年1月9日の175人が最多だ。同国は2回のワクチン接種を終えた国民が26.9%に止まるが、第4波は感染者の急増に対して重症化が大きく抑制されている。これは、NICDの調査結果をマクロ的に裏付けるデータと言えるだろう。また、イギリス保健安全庁(UKHSA)、米疾病対策センター(CDC)なども同様の研究結果を発表した。
もちろん、WHOが警告するように、毒性が低下しても、強力な感染力で感染者が一気に急増すれば、医療供給体制に綻びが生じるリスクは残る。ただし、昨夏以降、主要国ではワクチンの接種が急速に進んだ。G7に関しては、米国を除く6ヶ国において2回目の接種を終えた人が全国民の70%を超え、日本を含め既に3回目の接種が始まっている。このブースターショットは、オミクロン型の感染抑止に有効のようだ。
さらに、メルクのモラヌピラビルに続き、昨年12月22日、米国食品医薬局(FDA)はファイザーの申請した治療薬、パクスロビドについても緊急使用許可(EUA)を発令した。ワクチン接種に加え、軽症者、中等症者向けの経口治療薬が機能すれば、在宅での療養が可能になり、新型コロナは季節性インフルエンザに近付いて行くだろう。
2022年:「ポスト・コロナ元年」へ
昨年10月に感染第5波が収束して以降、日本国内で落ち着いていた新規感染が昨年末から急拡大している。オミクロン型による感染第6波と言え、政府は沖縄、山口、広島の3県に新型インフルエンザ特措法に基づく蔓延防止等重点措置を発動した。東京都、大阪府などでも感染が広がっていることから、今後、5回目の緊急事態が宣言される可能性もある。もっとも、今のところ日本でも重症化率は落ち着いた状態だ(図表2)。
日米欧においては、約2年間に亘り新型コロナ禍が続くなか、経済が大きく落ち込んだのは、基本的に第1波の2020年春だった。それ以降、リモート化などにより社会・経済活動が維持され、景気もトレンドとしては拡大基調を維持している。ワクチン及び治療薬の普及によりオミクロン型を乗り切れば、経済は「ニューノーマル」へ向け正常化するだろう。2022年は「ポスト・コロナ元年」となる可能性が強いのではないか。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。
手数料およびリスクについてはこちら
ディープ・インサイトの記事一覧
日付 | タイトル | タグ |
---|---|---|
日付
2024/11/19
|
タイトル 米半導体株に忍び寄る「米中貿易戦争」の影 | タグ |
日付
2024/11/15
|
タイトル 「103万円」は本当に壁なのか? | タグ |
日付
2024/11/12
|
タイトル 第二次トランプ政権下の金融規制緩和の現実味 | タグ |
日付
2024/11/08
|
タイトル 「トランプ大統領」の経済政策 | タグ |
日付
2024/11/07
|
タイトル 米国株「トランプ・トレード」が爆騰 | タグ |
日付
2024/11/01
|
タイトル 2025年衆参同日選の可能性 | タグ |
日付
2024/10/31
|
タイトル なぜ米10年国債利回りは急上昇したのか? | タグ |
日付
2024/10/25
|
タイトル 半導体中心の相場は終わったのか? | タグ |
日付
2024/10/18
|
タイトル 「トランプ大統領」への心構え | タグ |
日付
2024/10/11
|
タイトル 不安定さを増す石破政権 | タグ |