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COP26 温暖化抑止への現実的課題
市川 眞一
2021/11/05

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概要

英国において開催されている国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)は、11月1、2日に首脳級会合を終えた。計112人の首脳が演説を行い、カーボンニュートラルへの取り組みが確認されたものの、具体策の面では課題山積だ。特に世界最大の温室効果ガス排出国である中国の習近平国家主席が出席を見送り、主要先進国との根深い対立が再確認された。



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温暖化の必須要件:新興国・途上国の排出量削減

10月31日から11月12日までグラスゴーにおいてCOP26が行われている。11月1、2日の首脳級会合では、ベトナムのグエン・ホン・ジエン商工相が2050年、インドのナレンドラ・モディ首相が2070年までにカーボンニュートラルを目指すと初めて明言するなど、新興国・途上国による目標の明示が相次いだ。また、総選挙を終えて出席した日本の岸田文雄首相、ジョー・バイデン米国大統領など先進国首脳の多くは、途上国への支援を強化する意向を示している。

もっとも、2009年12月のCOP15で採択された『コペンハーゲン合意』では、先進国は途上国の温暖化対策として2012年までに300億ドル、2020年に向けて年間1,000億ドルの支援を目標とすることに決めた。しかしながら、この約束は結果的に守られていない。途上国の間では、産業革命以降、先進国が温室効果ガスの排出量を急増させ、地球温暖化を招いたとの認識が共有されている。従って、先進国が新興国・途上国の対策コストを負担すべきとの意見が大勢だ。

もっとも、2019年までの20年間に限れば、世界の温室効果ガス排出量増加分の57.6%を中国が占め、日本、中国、韓国、インドを除くアジアが25.1%、インドの比率も13.9%に達していた(図表1)。一方、日本、米国、EUの排出量は減少している。つまり、新興国・途上国による排出量の伸びを抑え、減少傾向にしない限り、温暖化を止めることは難しいだろう。

 

主要先進国が強める対中圧力:自らの排出削減と新興国・途上国への支援

今回の首脳級会合、世界の温室効果ガスの27.9%を排出する中国の習近平国家主席が出席を見送った。リモートでの演説を議長国である英国から拒否され、同主席は書面でのメッセージにおいて、先進国による途上国支援を強く訴えている。これに対し、バイデン大統領、英国のボリス・ジョンソン首相などは中国の消極的姿勢をな批判、このところの米欧主要国と中国の対立が改めて確認される形となった。

ちなみに、9月23日、国連総会の一般討論でビデオ演説を行った習主席は、2030年までに温室効果ガスの排出量を減少に転じさせ、2060年にはカーボンニュートラルの達成を目指すと表明した。しかしながら、足下、中国は深刻な電力不足に陥るなど、目標達成への具体的道筋は見えていない。

欧州の調査チームが南極ドームCで行った氷床の分析では、過去80万年に亘って安定していた大気中の二酸化炭素濃度が、1800年代に入って急上昇している状況が明らかになった(図表2)。温室効果ガスが温暖化の要因であることは既に科学的なコンセンサスと言え、この問題への取り組みには中国が極めて重要であることは間違いない。

中国へ圧力を掛ける意味もあり、主要先進国は自らの排出削減へ一段と注力せざるを得ないだろう。さらに、中国の影響を受ける可能性の強い新興国・途上国に対し、カーボンニュートラルへ向けた経済的支援を強化すると見られる。


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市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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