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欧州株は9月ECB理事会を無難に通過 正念場は12月に持ち越し
田中 純平
2021/09/13

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概要

9月9日に開催されたECB理事会では、大方の予想通りPEPPの購入ペース引き下げが決定された。しかし、2022年3月までとされるPEPPの期限やその後のAPP購入枠等に関する政策については今回の理事会では発表が無かったことから、正念場はPEPPの包括的な議論が行われるとされる12月理事会に持ち越されることとなった。



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9月ECB理事会ではPEPP購入ペースの引き下げが決定

9月9日に開催されたECB(欧州中央銀行)理事会では、2021年10-12月期のPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)の購入ペースの引き下げが決定された。具体的な金額は明示されなかったものの、これまでの「年初よりもかなり速いペース」から「過去2四半期よりも適度に低いペース」へ購入ペースが縮小されることになる。

ECBはコロナ危機後に総額1兆8500億ユーロのPEPP購入枠を導入し、少なくとも2022年3月まで継続するとしている。購入枠は上限であり目標ではないが、必要に応じて購入枠を再調整(拡大)させる柔軟性も持たせている。また、PEPPとは別に、コロナ危機前から行われているAPP(資産購入プログラム)については、純購入額が現行の月額200億ユーロのペースで変更はない(図表1)。

今回の9月ECB理事会の記者会見でラガルドECB総裁は、PEPP購入ペースの減速を「テーパリング(量的緩和の縮小)」ではなく「微調整」と表現した。PEPP購入ペースの引き下げが「テーパリング」に該当するかの是非は別として、ECB理事会後にドイツ10年国債利回りは低下、STOXX600指数(欧州株)は下落幅が縮小したことを考慮すれば、今回の9月ECB理事会の決定は一部の市場関係者が想定していたよりもやや「ハト派的」な金融政策だったと推察される(図表2、3)。

12月ECB理事会での政策決定に注目

ECBはPEPPの購入ペースについて3月、6月、9月、12月の3ヶ月ごとに見直しを行っている。今回はPEPPの購入ペースの引き下げが決定されたが、12月16日のECB理事会では包括的な議論が行われる予定だ。

12月16日のECB理事会では、①PEPPを予定通り2022年3月で打ち切るのか、②純購入額を月額200億ユーロとする現行のAPPを2022年4月以降に増額するのかが焦点となる。市場関係者のコンセンサスは、ECBがPEPP購入ペースを2022年3月にかけて徐々に減速させ、総額1兆8500億ユーロの購入枠を超えない水準で予定通り2022年3月で打ち切り、その後はAPPを現行の月額200億ユーロから幾分増額させるかたちで、量的緩和全体の縮小ペースをマイルドにさせると予想している。

欧州株式市場では、今回のPEPP購入ペースの引き下げが大方の予想通りとなり、尚且つ重要な金融政策決定が12月のECB理事会に持ち越されたことから、ひとまず9月のECB理事会を無難に通過する結果となった。しかし、これはあくまで重要な意思決定が9月から12月に先送りされただけであり、欧州株式市場の先行き不透明感が払拭されたわけではないことには留意すべきだろう。 


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田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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