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- iTrustロボ|ロボティクスに注目する5つの理由
ロボットが世界を席巻しています。本稿では、ロボット関連に注目する5つの理由を紹介しています。
産業用ロボットが、米国ニュージャージー州の自動車組み立てラインに初めて導入されたのはおよそ60年前のことです。当時は、巨大な腕の形をした重量物移動用ロボットが、ダイキャスト・プレス機から金属製の自動車部品を降ろすのに使われていましたが、今では、ロボットが、工場の製造現場に留まらず、私達の日常生活の一部になっています。
現在、ロボットは、自動車の組み立ての他、家の掃除や買い物の配達をこなし、おばあさんのビンゴ・ゲームの相手をすることさえ可能です。ロボット業界が、その発展の過程において、進化の加速度が増す新しい局面に入ったことを示唆しています。
人工知能(AI)にしろ、これまでになく小型で強力な半導体にしろ、技術の進化は、新しい種類の高性能ロボットの開発および導入につながる道を開いています。また、高齢化、生産性の低下、労働力不足などが、自動化需要に拍車を掛けています。
ロボットそのものに留まらず、(関連分野を含んだ)ロボット業界の強力かつ持続的な成長のトレンドに支えられた極めて魅力的な投資の機会が提供されているのです。以下では、今後数年間、ロボット業界を牽引していくことが期待される5つのテーマを検証します。
1. 生産施設の国内回帰(リショアリング)および友好国や近隣国への移転(ニアショアリング)
新型コロナウイルスの大流行(パンデミック)がもたらしたサプライチェーンの混乱は、地理的に離れた国に製造を依存することの危険性を浮き彫りにしました。また、米中間の緊張やロシアによるウクライナ侵攻が、世界のサプライチェーンに一段の圧力をかけました。
その結果、各国政府や企業は、製造拠点を自国に戻す「リショアリング」や、少なくとも近隣諸国に移転する「ニアショアリング」を進めています。こうした動きが、新しい工場に設置される産業用ロボットやその他の自動化関連機器ならびにソフトウェア・ソリューション等への需要を拡大させることは明らかなように思われます。ABBロボティクスが行った最近の調査によると、米国の製造業企業の約41%が自動化の推進を検討しているとのことです。
半導体業界が、リショアリングの対象業界の一つとなっているのは、半導体や関連技術の重要性が増していることに加えて、国家安全保障上の懸念が強まっているためです。米国では、半導体工場の建設が、「米インフラ投資法」の焦点の一つとなっていますが、世界のその他の国や地域でも、同様の補助金の投入が承認されています。
2. 人間とロボットの協働:協働ロボット(コボット)
組立ライン用ロボットは工場に不可欠の存在でしたが、人間の介在なしに作業を行う自律型ロボットでありながら、作業員と緊密に連携して作業を行うことの出来る協働ロボット(コボット)は普及し始めたばかりで、今後大きく拡大することが予想されています。
深刻な労働力不足、賃金インフレ、技術の進化や価格の下落などが、コボット需要を押し上げていくものと思われます。コボットは、特に、中小企業で人気を博していますが、電気自動車(EV)メーカーにも広く採用されています。これは、ネットゼロ目標の実現に向けて、エンジン車の販売を事実上禁止する国が増えるにつれて、EVメーカーそのものの成長が著しいことが背景にあります。
3. ソフトウェアの効率性
自動化(オートメーション)の進展は、家庭においても、産業界においても、ソフトウェアに依存しています。機械や機器の操作に使われる産業用ソフトウェアは、これまで、「購入し、設置し、長期的に使用」するものでしたが、今では、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)への移行が進んでいます。企業(や個人)は、サブスクリプション・フィーを支払って、(インターネットを介して提供される)ソフトウェアを使用し、ソフトウェアはクラウド上あるいはハイブリッド環境に保存されます。産業用ソフトウェア市場の拡大により、製品の設計やシミュレーションから工場または製造委託先への設計図の送付、サプライチェーンの最適化に至る全工程で、効率性が改善されるはずです。クラウド型ソリューションは、ソフトウェアそのものの管理コストの削減や複雑さの軽減に資すると同時に、データの一元化を可能とします。また、生成されるデータ量の増加に伴って、データ分析量も急増しています。ビジネス・プロセス・オートメーションの人気も高まっていますが、これは、企業が、ホワイトカラーの生産性向上のためにソフトウェア・ソリューションを使っているためです。企業は、AIの進化によって、大量のデータを活用し、業務効率を改善しています。
4. AIと演算
機械の高度化に従って、演算やデータなどの処理能力の向上が求められています。AIはリソース集約型産業であり、新しいコンテンツを作るために大量のデータと処理能力を必要とします。半導体の高度化が必要とされているわけです。演算用プロセッサー・メーカーが、AIの進化から恩恵を受けるのは当然だと思われますが、大規模言語モデル(LLM)は、記憶容量が大きく、広帯域幅のチップ等、異なる種類の半導体チップを必要とします。記憶、演算、データ保持用ストレージ・チップは、半導体チップ売上の大半を占めています。メモリーチップ(DRAM)およびストレージ・チップ(NAND型フラッシュ)は、主に、データ保持および操作指示に使われ、(コンピューターのコア「CPU」等の)プロセス・チップや(画像処理装置(GPU)等の)補完かつ高速処理用チップ(アクセラレーター)は、リアルタイムの演算やデータ処理に使われます。半導体のサプライチェーン上では電子設計自動化(EDA) に特化する企業も重要な役割を果たしており、例えば、シノプシス(米国)は、半導体チップの設計企業にソフトウェア・ソリューションを提供しています。技術革新とソフトウェアへのAIの導入によって、チップ設計企業が設計に要する時間が短縮され、処理能力が向上しています。AIの進化は、半導体製造装置メーカーの将来性にも寄与しています。従来型のチップよりも、小型で、高速で、安価で、強力で、エネルギー効率の高いマイクロチップを製造するチップ製造ツールが提供できるからです。「ファブ」と呼ばれる半導体製造工場は、世界で最も自動化が進んだ工場の一つであり、歩留まりの改善や増産のために、AIの利用をますます増やしています。
5. 自動運転
最初は、車を作るために使われたロボットが、今では、車を運転しています。人間が介在しない自動走行車、大型トラック、バスなどが大衆市場で使われるのは、何年か先のことになりそうですが、実証実験はサンフランシスコ、北京、上海、(米国アリゾナ州の)フェニックス等、世界各地で行われています。アルファベット傘下のウェイモは、数百万マイルの公道実験を行っており、サンフランシスコ市民に、1年間、無人運転の乗車を提供しています。自動運転車は、最新車種に搭載された先進運転支援システム(Advanced Driver-Assistance Systems:ADAS)の様々な要素を通じて、既に、一部、現実となっています。こうした技術が更に普及し、進化すれば、半導体需要の大幅な拡大が見込まれます。
AIは、イノベーションの新しい波を起こし、ロボット工学や自動化技術に大きな変革をもたらしています。生産性の向上やコスト削減を可能とする他、世界的な労働力不足に起因する課題の解決に資する能力を提供するロボット工学や自動化技術関連業界は、世界経済の伸びを上回るペースで成長を遂げることが予想されます。ロボット・メーカーや、半導体からソフトウェアに至る様々な部品や技術を提供する企業は、魅力的な投資の好機を提供していると考えます。
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