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配車大手GRAB(グラブ)も活用 SPAC経由の上場が急増する背景
田中 純平
2021/04/19

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概要

ソフトバンクグループが出資する東南アジアの配車大手Grab(グラブ)は4月13日、SPAC(特別買収目的会社)であるAltimeter Growth(アルティメーター・グロース)と合併の通じて、米国上場することを発表した。SPACとの合併としては過去最大になり、グラブの企業価値は約396億ドルになると言われている。いま、米国ではこのSPACを経由した上場が急増している。



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SPAC(特別買収目的会社)とは何か?

SPAC(※スパックと呼ぶ)は株式市場から資金調達を行い、原則2年以内に未公開企業を買収することを約束したペーパー・カンパニーだ。買収先をみつけるまでは経営実態の無い「空箱」であるため、海外では「Blank Check(空白の小切手)」と揶揄(やゆ)されている。

一般的な企業のIPO(新規株式公開)とは違い、SPACのIPOは上場までの準備期間が短く、審査も簡素化されていることが大きな特徴だ。コロナ禍で通常のIPOが困難になったことに加え、ビル・アックマンといった著名投資家がSPACを組成したり、Virgin Group(バージン・グループ)創業者のリチャード・ブランソン氏がSPACを経由してグループ企業を上場させたことで信用度が広がったことから、SPACのIPOは昨年から増加傾向にある。

急増するSPAC経由の「未公開企業」上場

グローバルのM&A(企業の合併・買収)金額は、2021年1-3月期時点で8,608億ドル(前年同期比53%増)となり、コロナショックから大きく回復した(図表1)。

その背景としては、主要中央銀行による大規模な金融緩和策や流動性供給策に加え、主要各国・地域の大規模な財政支出、新型コロナウイルスのワクチン接種開始等によって、グローバル株式市場が急回復したことが大きいだろう。しかし、ここにきて弊害も起こっている。 

IPOを行ったSPACは、前述したとおり原則2年以内に未公開企業を買収する仕組みになっている。そのため、SPACのM&A(逆に言えばSPACを経由した「未公開企業」の上場)が足元で急増している。(図表2)。

SPACが浸透することで、資本市場が活性化されるのであれば、SPACのM&A増加はむしろ歓迎すべき事象だ。しかし、中には上場後に株価が急落するケースもあるので、注意が必要だ。例えば、昨年SPAC経由で上場した電動トラック新興企業のNikola(ニコラ)は、技術力の誇大広告疑惑や創業者辞任などが重なり、株価は大幅に下落した。IPOをしてから原則2年以内に未公開企業を買収するというSPAC特有の時間的制約が、適切なデューデリジェンス等の妨げになった可能性がある。SPAC経由で上場した未公開企業に投資する際は、投資家の「目利き力」がこれまで以上に必要とされることに留意すべきだろう。

 


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田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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