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- トランプ2.0下での新興国株式投資 ~アラブ首長国連邦(UAE)と南アフリカの注目点
●新興国株式投資において、株価パフォーマンスの上位は毎年異なる
●トランプ2.0始動後、追加関税や地政学リスクの影響が相対的に少ない国や割安度の高まった国や銘柄を選別することが重要
●当ファンドでは、現在はUAE、南アフリカなどに注目
■ 新興国株式投資において、株価パフォーマンスの上位は毎年異なる
下の図は、新興国の主要労働人口増加国10ヵ国のうち、各年毎の株価騰落率上位5ヵ国を抜粋したものです。
たとえばインド株式は、米国の外交や政策の先行き不透明感が強まり金融市場の変動が大きくなるなか、2025年年初からの同騰落率ランキングでは最下位となっていますが、それ以前の2023年、2024年は、高い経済成長の見通しに対する期待から、同騰落率ランキングの上位に入っていました。
このように、新興国の株式投資において、株価パフォーマンスの上位は毎年異なるほか、国の情勢や経済環境による株価の変動が大きいことから、リスク回避の観点からも、市場環境を勘案し、構成を柔軟に変更しつつ、複数の国や銘柄に分散投資することが重要です。このように、インドを含む労働人口増加国の株式に着目し、国や銘柄を選別することで、中長期的に新興国の単一国投資を上回るパフォーマンスを達成することが可能であると考えられます。
■ トランプ2.0始動後、追加関税や地政学リスクの影響が相対的に少ない国や割安度の高まった国や銘柄を選別することが重要
米トランプ(第2次政権)2.0が始動後、米国の外交や政策の先行き不透明感が強まるなかでは、特に追加関税や地政学リスクや影響が相対的に少ない国や銘柄を選別することが重要です。
■当ファンドでは、現在はUAE、南アフリカなどに注目
当ファンドでは、新興国の労働人口増加国の株式市場の銘柄について、詳細な分析を行い、バリュエーション(投資価値評価)等を勘案し、中長期的な業績成長が期待される銘柄を選別しています。
当ファンドでは、米トランプ(第2次政権)2.0が始動後の市場環境などを勘案し、現在は、アラブ首長国連邦(UAE)、インド、ブラジル、南アフリカ、東南アジア諸国など、米国の追加関税や地政学リスクなどによる経済の分断の影響が相対的に少なく、かつ経済成長見通しが高い国の組入比率が高位となっています。
メキシコに関しては、組入比率を引き下げていますが、追加関税に関しては、前回のトランプ1.0政権時と同様に、今後の交渉により関税回避の動きがみられた場合には、株価が反発する可能性もあり、バリュエーション面でも魅力があることから、投資機会を慎重に捉えていく方針です。
現在の米国の追加関税や地政学リスクの影響を受けにくいと考えられる投資国のなかでも、特に、国の強みが明確なUAEと南アフリカの投資のポイントを以降で紹介していきます
■ 強いリーダーシップで世界トップ3の都市経済圏なることを目指す
【強い国家統制力】 2022年に就任した、アラブ首長国連邦(UAE)元首兼アブダビ首長、ムハンマド・ビン・ザーイド・ビン・スルターン・アール・ナヒヤーンはアブダビ投資庁(ADIA)の副議長も務めています。UAEの元首は、慣例により、建国以来、アブダビのナヒヤーン家首長が大統領、ドバイのトゥーム家首長が副大統領となっており、UAEにおける原油の大部分を産出するアブダビと、貿易、観光及び金融に力を入れているドバイの2首長国が、政治・経済・軍事の面で強い導権を握っており、国家計画を強力に進めることが可能です。
【明確なビジョン】 UAEは石油のみに依存せず、 国際競争を勝ち抜くために、2023年に、向こう10年間で約9兆ドル(約1,350兆円)規模の経済計画を掲げており、経済規模を倍増し、金融のハブ、世界のイノベーション拠点都市として、世界トップ3の都市経済圏になることを目指しています。
※2025年2月末の為替で円換算
■ 10年間で約9兆ドル規模の経済計画が進行し、海外からの直接投資と労働人口の増加で高い経済成長を目指す
【経済政策】 UAEでは、外国資本100%の会社設立が可能で法人税が免除される「フリーゾーン」の整備や、オフィススペースの無償提供や運転資金支給などでテック系事業をサポートする支援機構「Hub71」の設立、10年の在留資格が得られる「ゴールデンビザ」の積極的な発給など、高度外国人材や高所得者、投資家層の獲得のための制度改革を進めています。
【外国資本や富裕層、労働人材を魅了するUAEの環境】 外国資本や人材にとっての、UAEの魅力は、1)多くの免税措置(所得税、キャピタルゲイン税、相続税、固定資産税がゼロ、法人税優遇)、2)外国企業・企業移民誘致の国策、3)治安が世界トップレベル、4)医療・教育が充実、5)高い経済成長率など、です。
【経済政策の効果】 こうした政策を背景に、外国企業がドバイに進出し、インド、ロシア、中国、英国などの富裕層に加え、労働需要増を背景にパキスタン、バングラデシュ、インド等の周辺国からも、外国人が多く流入し、投資の拡大とともに、消費も拡大しています。政府は、不動産の運営、開発を政府関連企業も所有しており、企業や人口の流入による不動産収入の増加は政府の財源の拡大に寄与しています。UAEの直近5年間の直接投資増加率は+196%、2025年の経済成長率予想は+4.3%、2023年の金融業の成長率は+17%となっています。
■ 砂漠の大地が、大規模プロジェクトで世界の富裕層を魅了する都市に変貌
UAEは、国家が後押しする大規模都市開発プロジェクトで、砂漠の大地を、世界の富裕層を魅了する都市に変貌させてきました。
■ UAEの銘柄紹介:都市開発の中心となり、UAEを支える、エマール不動産
エマール不動産は、UAE国内外の主要な都市で多くの不動産の投資、開発、管理プロジェクトを展開しています。ドバイでは世界一の高さを誇る超高層ビル「ブルジュ・ハリファ」、巨大なショッピングモール「ドバイモール」、高級住宅地「ドバイ・マリーナ」などの革新的なプロジェクトを手掛けてきました。再開発に適した土地を政府より優先的に購入しています。近年は海外企業の進出が拡大し、香港、中国、ロシアの富裕層の居住者の流入が増加しており、不動産事業の拡大が期待されています。
同社はドバイ首長国が22%株式を保有しており、傘下には、エマール・ディベロプメントなどの都市開発の中心地となる子会社も所有しています。このため政府関連のプロジェクトを優位に進めることができ、優良な土地の在庫なども多く所有していることが強みです。
ドバイの空室率は低く、不動産投資の利回りは主要先進国と比べて魅力的な水準となっており、世界的にドバイの不動産に資金が流入する要因となっています。同社の2025年2月末の予想株価収益率(PER)は8.5倍、配当利回りは7.4%、2024年の純利益率37%、株主資本利益率(ROE)17%などと魅力的な水準となっています。
※文中のデータの出所:ブルームバーグ
■ 民間事業の規制緩和と製造拠点の拡大で海外からの投資資本が流入
南アフリカはネルソン・マンデラ氏により1994年に黒人と白人の居住地域を分ける人種差別政策、アパルトヘイトが撤廃されて以降は、民主主義の国となり、劇的な変化を遂げてきました。19世紀後半にダイヤモンド、金が発見されて以来、鉱業主導で成長し、蓄積された資本で製造業及び金融業が発展し、近年では、鉱業よりも、金融業などの比率が大きくなっています。
2024年に再選されたラマポーサ大統領は、アパルトヘイト撤廃時のマンデラ氏の側近で、副大統領なども経験し、実業家としてはグローバル通信企業のMTNグループなどの会長を務めています。資源依存からの脱却と新規雇用の創出を目標に掲げ、民間発電事業者の発電量制限の撤廃、鉄道、港湾の民間の事業参入緩和、デジタル化の促進などを行ってきました。新連立政権発足後も同方針を継続しており、同国では海外からの投資資本が流入し、民間投資が増加しています。
■ 旧英国植民地の強みを活かしてアフリカのハブとなる南アフリカ
南アフリカはかつて英国植民地だったため、公用語が英語で、英国の旧植民地国や英国との繋がりもあり、アフリカ大陸のなかでも、港湾、航空、鉄道のインフラが整っており、海外企業への調査では事業提携や進出をしやすい国となっています。南アフリカの企業の中には、消費関連中心に、アフリカ大陸やかつての植民地だった時代からのつながりのある欧州に進出している企業が多くあります。
2019年に、南アフリカが議長国となり、アフリカ大陸での単一市場の実現を目指す、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)が創設され、2021年に運用が開始されました。域内関税を引き下げること等により、域内での貿易が活性化し、工業化の進展が期待されています。2022年の域内の人口は中国やインドに匹敵する約14億人です。アフリカの人口は今後も拡大が見込まれており、2050年に約25億人に達し、世界人口の約4分の1を占める経済圏になると予想されています*。労働人口の増加が、工業化の進展や消費の拡大を後押しすると期待され、現在のGDPの総計は約2.9兆ドルですが、2028年には4兆ドルを上回ると予想されています**。南アフリカは、その中心的存在になると期待されています。 *世界銀行予想集計 **国際通貨基金(IMF)予想
■ デジタル化によるインターネット経済の拡大がアフリカ域内の経済成長を加速
【アフリカでもインターネットが普及】 2013年に、官民連合であるスマート・アフリカが設立され、現在、アフリカの32カ国や国際機関のほか、米フェイスブックや米マイクロソフトなどの民間企業約40社が加盟し、通信網が拡大しています。ソフトバンクも2020年10月に加盟しました。高軌道衛星による通信サービスも拡大しつつあリ、アフリカ諸国のインターネット普及率は南アフリカを中心に急速に拡大しています。
【インターネットの普及が消費市場の拡大を後押し】インターネットの普及に伴い、ネット決済のインフラも整ってきています。南アフリカでの、Eコマースの決済方法としては、クレジットカードが最多で、約4割を占め、南アフリカの国民の金融機関口座保有率は、約7割と高く、銀行振り込みの割合も2割を占め、電子マネーも普及しています。こうした環境下、アフリカのEコマース市場は、南アフリカ、ナイジェリア、ケニアなどが主要な市場で、年率2桁のペースで成長し、消費の拡大に寄与しています。
【関連ビジネスと市場規模の予想】こうしたインターネットの普及に伴う消費市場の拡大は、通信、銀行をはじめとした金融、様々なEコマース関連企業の成長に寄与すると期待されています。アフリカのインターネット経済は、2025年にはアフリカ大陸の国内総生産(GDP)の5.2%に相当する1,800億ドル(約27兆円)に達する見込みで、この成長市場への資本の流入と消費の拡大が期待されています。 ※文中のデータの出所:国際金融公社(IFC)(世界銀行グループ)、為替は2025年2月末
■ 南アフリカの銘柄紹介:アフリカのネット関連消費市場を取り込むナスパーズ
ナスパーズは、消費者向けのインターネット関連サービスのグローバル企業で、テンセント(中国)などインターネット関連企業にも出資しています。同社の主要事業はフードデリバリー、クラシファイド広告、ペイメント&フィンテック、エドテックなどのテクノロジー分野で、メディア事業なども手掛けています。
同社は、アフリカにおけるインターネット普及率の拡大によって加速する、南アフリカをはじめとするアフリカ諸国の消費拡大の恩恵を受けると期待されます。世界的にテック関連銘柄のバリュエーションが上昇するなか、同社の2025年2月末の予想株価収益率(PER)12.1倍と魅力的な水準となっています。
※文中のデータの出所:ブルームバーグ
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