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- 株式市場は堅調地合いを継続、リスク資産への投資を拡大
新型コロナウイルスの感染再拡大などへの懸念は根強く残るものの、世界経済は大規模な財政・金融政策などを背景に回復の動きを強めています。こうした中、当ファンドでは長期的な成長テーマを有する銘柄などを中心に株式への投資比率を高めています。一方、債券部分では社債などを選好する方針です。
6月の投資環境と 運用状況
世界の株式市場は、米雇用統計やユーロ圏サービス業購買担当者景気指数(PMI)などの経済指標の改善などを受けて月初から上昇基調となりました。その後、米国の一部の州で新型コロナウイルスの感染者の伸びが加速し第2波への警戒が強まったことなどから大きく下落する場面もありましたが、中旬には米連邦準備制度理事会(FRB)による社債購入開始や米小売売上高が市場予想を上回ったことなどから反発しました。
月末にかけては経済指標の改善を背景とした景気回復への期待はプラス要因となりながらも、新型コロナウイルスの感染拡大への根強い懸念を受けて下落基調となりました。月間を通してみると世界の株式市場は上昇しました。
世界の国債市場は、月初に発表された堅調な欧米の経済指標を受けて下落(利回りは上昇)しましたが、その後は6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で米国景気に対する悲観的な見通しと長期的な金融緩和姿勢が示されたこと、欧州と関係の深い南米の一部の国や米国の一部の州で新型コロナウイルスの感染が拡大したこともあり、上昇(利回りは低下)に転じました。月を通せば世界の国債市場は上昇(利回りは低下)しました。
ドル・円為替市場は、米国で新型コロナウイルスの感染再 拡大が警戒されたものの、米雇用統計で非農業部門雇 用者数が市場予想を大幅に上回る改善を示したことなど から、小幅ながら円安・ドル高が進行しました。
ユーロ・円 為替市場は、ユーロ圏景況感指数が域内の景気底打ちを示唆したことや、欧州中央銀行(ECB)が量的金融緩和 拡大によって景気を支える姿勢を示したことなどから、円 安・ユーロ高が進行しました。
当ファンドの基準価額動向をみると足元では、2020年3月23日を底に株式市場が反発したことを受けて、回復基調にあります。
主な投資行動:株式の組入れを引き上げ
債券の保有比率を大幅に引き下げた一方、株式の保有比率を引き上げました(図表4参照)。
株式では、相対的な割安感や財政政策への期待感などからDAX先物を新たに組入れました(図表5①)。また、11月の米国大統領選挙において医療制度改革を巡る不透明感が高まるリスクを鑑み、米国ヘルスケア株式(ETF)を全売却し、世界のヘルスケア株式を新たに購入しました(同➁)。加えて、高い成長が見込まれることなどを背景にオートメーション・ロボティックス株式(ETF)やサイバーセキュリティ株式(ETF)などを新たに組入れました(同③)。その他、ナスダック100先物を買い増すなどしました(同④)。
債券では、米国でイールドカーブ・コントロール(YCC)導入の観測が上がっていることから一部のエクスポージャーを残しましたが、足元における米国の景気指標の回復などを踏まえて米国超長期国債(物価連動)や米国長期国債先物を売却し、デュレーションを短期化しました(同➄)。
基準価額の変動要因: 全ての資産がプラス寄与
このような環境下、全ての資産が基準価額にプラス寄与となりました。株式部分では、ナスダック100 先物などの北米株式のほか(図表5⑥)、アジア(除く日本)株式や新興国株式(同➆)などが主にプラスに寄与しました。債券部分では、主要中央銀行による買い入れプログラムのサポートとリスクオン相場の持越しなどを背景に、スプレッドの縮小が続いた社債(同⑧)が主なプラス寄与となりました。
株式:欧州株式の投資妙味
欧州経済は、都市封鎖(ロックダウン)の一部解除と、大規模な金融・財政刺激の恩恵を享受していることから、欧州株式に注目しています。同時に、11月の米大統領選を視野に入れ、ディフェンシブ・セクターの一角を占めるヘルスケア・セクター、特に米国のヘルスケア・セクターについては若干慎重な見方に変更しています。 欧州経済の着実な回帰の過程は、アジアの進展を後追いしています。中国は正常な状況をほぼ回復しており、米国の経済指標も好調さを増しています。足元のユーロ圏株式は、上昇の勢いを大きく強めています。米国株式との比較では、コロナ危機前と同様、今後も相対的に割安で魅力的な状況が続くように思われます。
金融刺激ならびに財政刺激による景気浮揚は、今後も続く公算が高いと考えます。ECBの「TLTRO3」(目標を定めた長期性資金供給オペレーション第3弾)は、金融システムへの資金注入に成功しているように思われます。一方、長期的により重要だと思われるのは、EU共同債の発行を通じて資金を調達する「欧州復興基金」の設立により、単一通貨市場の共通金融政策を補完する共通財政政策が、漸く、実現することへの期待をもたらすことです。
米国が追加刺激策を検討していることを勘案すれば、過去2ヵ月の株式市場の急騰が理解できないわけではありませんが、数多くのリスクが残ることも確かです。米国の一部で感染が拡大し、パンデミックを抑え込んだかに見えた地域で再発している状況は、第2波の到来を懸念させます。新型コロナウイルスの感染再拡大は、周期的なロックダウンや各地に次々と広がるロックダウン、あるいは、少なくとも消費の抑制を懸念させるものと思われます。一方、大陸欧州では、WHOが今週、発表した通り、流行は収束しつつあるように思われます。
米国の最新の世論調査では、11月の大統領選での民主党の圧勝、即ち、大統領と上院過半数の奪還の可能性を示唆しています。新型コロナウイルス危機は、「ヘルスケア」を選挙戦の最重要課題にしており、民主党が医療 コストとりわけ薬価の引き下げを推進することが懸念されます。こうした状況を勘案し、ヘルスケア・セクターに対してはやや慎重な見方へと変更しています。加えて、当セクターが割高で、ドル安が逆風となる傾向が強いことも慎重な見方にならざるをえない要因です。
株式セクターの中では、成長の質の高いスイス株式と中国の景気回復の恩恵が期待される素材セクターなどが注目されます。
債券:米国に注目
世界の債券市場は、巨額の金融緩和に支えられている一方、バリュエーションが異常ともいえる水準に高止まりしているうえ、世界経済が回復への途上にあるように見えることは、今後債券利回りが上昇に転じる可能性を示唆しています。こうした相反する兆しを勘案し、債券は中立的なスタンスでみています。
ソブリン債の詳細な分析から、最も高いリターンが見込まれるのは米国国債です。FRBは世界の中銀の中で最も積極的な対策を講じていますが、今後数ヵ月のうちに、追加緩和を行う可能性があると考えます。イールドカーブ・コントロールを通じて行われる公算が最も高いと見られ、従って、長期にわたり、潤沢な流動性と米国国債の極めて高いバリュエーションが維持されると考えます。
こうした施策が、既に景気回復の恩恵に与りつつある米国企業にとって朗報であることは、「エコノミック・サプライズ指数」が6月に最高値を更新したことからも確認されます。米国は、経済面での改善が進んでいるように思われますが、特に、景気悪化に際しては(社債購入を通じた)FRBの支援があることを勘案して投資適格債をオーバーウェイトとするピクテの見方を支持すると考えます。
とはいえ、景気回復は未だ初期段階にあり、大統領選や新型コロナウイルス第2波到来の可能性等、先行きに多くのリスクが残ることには留意が必要です。従って、米国ハイイールド債は引き続き警戒すべきとみています。当資産クラスは、ピクテのモデルで測定すると、過去20年の平均に対して唯一割高感の見られないセクターですが、こうしたバリュエーションに将来の債務不履行(デフォルト)の可能性が十分に織り込まれているとは思われません。市場に織り込まれたデフォルト率が僅か7~8%に留まるのに対し、ムーディーズは市場予想のほぼ2倍の13%を予想しています。
為替市場では、ユーロが、追加景気対策がもたらす景気改善の恩恵に与ると考えます。ECBのTLTRO3と欧州連合(EU)の欧州復興計画は、特に好材料です。前者は、多額の借入申請があり、潤沢な流動性が供給されていることから銀行の利益を押し上げることが予想され、後者は、EU域内の財政統一に向けて状況を一変するきっかけとなる可能性を秘めています。従って、ユーロが対ドルで14%も過小評価される状況はもはや正当化できないと判断し、ユーロを強気にみています。季節要因等、テクニカル面のトレンドもユーロの好材料です。
割安感が際立っていることに加え、これまでのところ、リスク選好の上げ相場にも乗り遅れた感のある新興国通貨にも反発の可能性があると見ています。新興国通貨の上昇は、現地通貨建て新興国債券にも恩恵を及ぼすとも考えています。
市場のボラティリティが再度上昇する局面には、(安全通貨としての特性を国内経済の強い回復が補完する)スイスフランと金の買いが有効だと考えます。金は、年初来約17%と大幅に上昇しているものの、ピクテのテクニカル指標は買われ過ぎを示唆しておらず、(市場の動揺に対する)有効なヘッジ手段だと考えます。中期的なインフレ上昇の可能性や一貫して変わらないマイナスの実質金利、一段のドル安の可能性等、金のファンダメンタルズ要因は、割高な領域にあるとも考えられるバリュエーションを正当化していると考えます。
今後の 運用方針
ピクテがリアルタイムデータを用いて算出する経済活動指数は、中国経済が概ねコロナショック以前の水準まで回復していることを示唆している他、その他の国についても大規模な経済対策などにより回復の動きを強めていることを示しています。一方で、多くの地域において新型コロナウイルスの新規感染者数の伸びが加速していることが確認されており、再びロックダウンに陥る可能性には注意が必要であると考えている他、各国の景気見通しや企業業績予想が一段と落ち込む可能性は大きなリスクであるとみています。
しかし、各国政府が財政政策の強化に乗り出している他、FRBや欧州中央銀行(ECB)などによる量的緩和策の継続が予想され、今後景気や金融市場を下支えるものと期待しています。さらに、足元で株式のバリュエーションは妥当な水準で推移しており、安全資産とされる債券に対しては依然割安であることなども勘案すると、リスクオンの地合いが継続する可能性が高いとみています。
こうした考えの下、株式の組入れを引き上げていますが、特に割安に推移してきた欧州株式については財政政策の発動も期待されており注目しています。また、世界プレミアム・ブランド株式など景気敏感株式の中でも優良な銘柄に加え、5Gや電子決済、環境関連などの長期的な成長テーマを有する銘柄への投資を継続する方針です。
債券については、主要中央銀行による買入れプログラムの導入などを背景に投資適格社債を引き続き選好していきます。また、株価上昇時に値上がりしやすい転換社債にも注目していきます。新興国債券(現地通貨建て)については、引き続き割安であることや、インフレ率が低水準で推移していること、緩和的な金融政策が継続していることなどから投資妙味があるものとみています。
金については、高い分散効果が期待されることなどから、今後も保有を継続していきます。
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