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- 堅調なファンダメンタルズに基づき、リスクオン姿勢を継続
足元では、個人投資家の投機的な取引に起因して株式市場が調整するなどの局面も見られました。しかし、引き続き新型コロナウイルス・ワクチンの接種拡大や追加の財政政策に支えられる格好で世界経済は回復基調を維持するとの見方に変わりはありません。そのため、強気なリスク水準での運用を継続する方針です。
1月の投資環境と運用状況
世界の株式市場は、米ジョージア州の上院選挙決選投票で民主党が勝利し財政政策の拡大期待が高まったことなどを背景に上昇しました。その後、新型コロナの変異ウイルス感染拡大への懸念などから一時下落しましたが、バイデン政権下での景気刺激策への期待や、IT企業などの良好な決算などを受けて上昇に転じました。月末にかけては、新型コロナのワクチン接種の遅れへの懸念などから下落しましたが、月間では上昇しました。
世界の国債市場は月初、12月のISM景況感指数が市場予想を上回ったことや米国における財政政策の拡大期待が高まったこと、米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の一部から資産購入政策の早期の出口戦略を支持する考えが示されたことなどを背景に大幅に下落(利回りは上昇)しました。月半ばには、新型コロナの変異ウイルスによる感染ペース拡大への懸念、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の早期の出口戦略否定コメントなどから落ち着きを取り戻しましたが、月を通せば世界の国債市場は下落(利回りは上昇)しました。
ドル・円為替市場は、米国における財政政策の拡大期待が高まったことや、米連邦準備制度理事会(FRB)が早期に量的緩和策を縮小するとの見方が広がったことなどから、円安・ドル高となりました。ユーロ・円為替市場は、イタリアで政局不安が高まったことや、ユーロ圏の経済指標が市場予想を下回ったことなどから、円高・ユーロ安となりました。
当ファンドの基準価額動向をみると,2020年3月23日を底に株式市場が反発し、その後も回復基調が続いたことから2020年年間では2019年末比でプラスのパフォーマンスとなりました。2021年年初以降も、堅調な株式市場の動向を受けて、2月9日の基準価額は10,826円へと回復しています。2021年年初来2月9日時点の当ファンドのリターンは先進国株式と同程度となりました(図表3参照)。
主な投資行動: 依然として「リスクオン」な株式の組入比率を維持
資産配分については、株式の組入れが低下していますが、大半がコールオプションの減価に伴うもので、依然としてリスクオンな組入れ水準を維持しています。一方で債券の組入れは小幅に引き上げました(図表4参照)。
株式部分では、ボラティリティの上昇に伴ってNYダウ30先物やナスダック100先物、S&P500コールオプションなどの米国株式を一部または全売却し、リスクの調整を行いました(図表5の①)。一方で、米国における追加経済対策や景気回復の恩恵を受けるとみられるラッセル2000種先物や米国金融株式ETFなどを追加で買い増しました(同➁)。また、良好な見通しのもとで、アジア(除く日本)株式や新興国株式についても組入れを拡大しました(同③)。債券部分では、足元の金利上昇を受けて米国超長期国債を新たに組入れたほか(同④)、ドイツ長期国債から英国長期国債に資金を振り向けるなどしました(同➄)。オルタナティブ部分では、景気回復の過程で資源価格の上昇も期待されることなどからコモディティ指数ETF(同⑥)を買い増すなどしました。
基準価額の変動要因:株式を中心に上昇
このような環境下、当ファンドの基準価額は前月末比で上昇しました。株式部分では、中国を中心に新興国全般で経済回復の動きが強まっていることなどを好感して、中華圏株式などが上昇し、新興国株式が基準価額に対してプラスに寄与しました(図表5の➆)。その他の株式も幅広く収益を計上し全体で見てもプラスの寄与となりました。債券部分では、株高を背景にグローバル転換社債型新株予約権付社債がプラスに寄与しましたが(同⑧)、金利の上昇などを背景に先進国国債が振るわず全体としては小幅なプラス寄与となりました。オルタナティブ部分では、株価の調整局面で上昇したVIX先物や景気回復期待などから値上がりしたコモディティ指数ETFが基準価額に対してプラスに寄与しました(同➈)。
株式:景気敏感セクターに注目
世界の各国でロックダウンの再導入が相次いでいることから、短期的には景気回復の勢いが衰える可能性があると考えますが、巨額の景気刺激策と中央銀行による金融緩和の継続が(米国やユーロ圏を中心に)株式市場を支えるとの状況は変わらないと考えます。
ただし、株式市場全般の長期見通しについては、不透明感が残っていると考えています。多くの投資家は、正常な経済成長ペースへの回帰に加え、低金利環境が長期的に継続することを前提としていると考えています。一方、中央銀行は、将来のいずれかの時点でインフレ圧力の上昇に対応し、金融引き締めを始めなければならないと考えています。また、ピクテのモデルでは、グローバル株式のバリュエーション(投資価値評価)は割高な水準にあり、楽観的な見解が散見される現在のような状況は、市場にとって極めて大きな問題となる可能性があると考え、展開を見極めていく必要があると考えます。
地域別では、新興国市場、とりわけ中国が注目されます。2020年内に始まった製造業および輸出企業の回復に加え、内需の拡大が、主要経済活動指標をコロナ禍前の水準を大きく上回る水準へと押し上げていると考えています。また、新興国全体に関して、輸出量が大幅に回復するなど、回復基調がより鮮明になっています。日本に関しても、製造業を中心に世界経済が緩やかな回復局面にあるなか、景気感応度の高い製造業の比率が多い日本株式が景気回復の恩恵を享受するとも考えています。
セクター別では、経済活動に関する指標は既に改善に転じており、経済の先行きに関して明るい見通しが広がっています。そのような中、景気回復からの恩恵をより大きく受けるとみられるセクターには引き続き注目しています。
債券・為替:新興国債券への投資妙味に更なる高まり
中国債券は好利回りの源泉として、引き続き魅力的な投資対象だと考えます。国内経済は、コロナ禍の景気減速局面からV字型の回復を遂げつつあり、米国国債との実質利回り格差は400ベーシスポイント(4%)に拡大しています。また、金融当局は、景気回復の継続に必要な金融支援策を維持し、政策の「急激な変更」は行わない旨を公表していることも中国国債にとってのサポート要因になると考えています。加えて、人民元は2020年5月以降、対ドルで約10%上昇し、2018年6月以来初めて1ドル=6.5人民元を上回っています。人民元に対する強気な見通しから、現地通貨建て新興国債券に注目しています。
近い将来、インフレの上昇がFRBに景気対策の縮小を促す公算は小さいと考えます。米国のコア・インフレ率が2022年までに2%に達する可能性は低く、利回りは今後数年をかけて緩やかに上昇するに過ぎないと考えるからです。従って、米国国債にも注目しています。
デフォルト・リスクの対価が十分ではないと考える先進国社債に対する慎重な姿勢を維持しています。米国投資適格社債は、実質利回りが0%を下回っていることから、魅力が薄れているとみています。格付け別に実質利回りを見ると、BBB格債が0.1%とかろうじてプラス圏にありますが、A、AA、AAAは全てマイナス圏に沈んでいます。ユーロ圏では、景気後退(リセッション)となったことや今後の景気回復に対する懸念があるなか、債券の利回りが魅力に欠けるとみています。
米ドルは、(貿易加重ベースの)実効為替レートのピークである2020年3月から10%以上下落しており、短期的には反発する可能性があると考えています。また、FRBの「政府債務の貨幣化(デット・マネタイゼーション)」、による財政赤字の補填に起因するドル安圧力は後退しつつあるように思われます。ピクテの分析は、FRBが2020年の財政赤字の約70%を貨幣化し、通貨を減価させたことを示唆していますが、2021年については、30~35%に低下するものと予想しています。
今後の運用方針
世界経済は新型コロナウイルスのワクチン接種拡大と追加の財政政策に支えられる格好で回復基調を辿るとの見方に変わりはありません。国や地域別に見ると、米国ではバイデン新政権の下で大規模な追加経済対策の実現が期待されており、2021年の景気回復が加速することを見込んでいます。中国経済も引き続き強いモメンタムを伴って推移しており、日本を含むアジア諸国などの景気回復を支えると見ているほか、世界的な貿易活動の回復に伴って新興国経済に対する強気な見方も継続しています。一方欧州においては、ロックダウン(都市封鎖)などの感染抑制策が敷かれており景気回復の動きが鈍化していますが、こうした規制措置の緩和や追加経済対策次第では景気が上振れる可能性もあると考えています。英国についても概ね同様ですが、特にワクチン接種拡大やEU(欧州連合)離脱後の経済の調整に注意を払う必要があると考えます。流動性については、全体観としては依然緩和的な水準にあると考えられるものの、民間部門における流動性についてはモメンタムが鈍化しています。今後は中央銀行に先行してやや引締め的になることも予想されることから、動向を注視する方針です。
バリュエーションに目を向けると、主要な資産はいずれも割高な水準となっていますが、年内の株式市場は超低金利環境や力強い利益成長などに支えられる形で堅調に推移するとの予想に変わりはありません。こうした環境のもとで、概ね現状のリスク水準を維持または株価調整時には小幅に引き上げることも検討していきます。株式部分では日本を含むアジア諸国に加えて、新興国全般に注目していきます。また、一般消費財や資本財、素材など一般的に景気感応度が高いとされるセクターを選好するほか、電子決済やESGをはじめとした長期的な成長テーマを有する銘柄の保有も継続します。債券部分では、相対的に高い利回りや分散効果が期待される中国債券に引き続き注目していきます。先進国国債の投資妙味は薄れていますが、足元の金利上昇を受けて米国の超長期ゾーンについては相対的に投資機会があるものと見ています。オルタナティブ部分では、世界経済の回復が継続するとの認識のもとでコモディティなどの実物資産を選好することに加えて、リスク資産のヘッジとしてVIXや金などの保有も継続する方針です。
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